クラーゲン短編集

クラーゲン

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傘がない

傘がない

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 外は雨が降っていた。しかし、僕が今朝さしてきた傘は傘立てにはない。

「上溝君。帰らないの?」

 背後から女の子の声。

 振り向くとそこにいたのは、クラスメートの下溝洋子ちゃん。

「傘がないんだよ」
「ああ! きっと、五年二組の番田の奴よ。あいつ、『傘は公共物』だとか言って、他人の傘を勝手に持って行っちゃうんだって」

 酷い奴だな……

 下溝さんはランドセルから、小さな折りたたみ傘を取り出した。

「入れてあげるわ」
「いいの?」
「ああ、でも私の傘小さいから入りきれないかもしれないけど……」

 いや……その気持ちだけでも嬉しいよ。

「どうしたの? 二人とも」

 僕たちに声をかけたのは教育実習生の入谷先生だった。



「先生ありがとうございます」

 先生の車の後部座席に乗り込みながら僕は言った。下溝さんは先に乗り込んでいる。

「いいのよ。でも、本当はね。教育実習生は、こういう事をしてはいけないの。だから二人とも内緒よ」
「「はーい」」

 僕と下溝さんの声がハモる。

 いい人だな。入谷先生って……

 それに美人だし、ナイスバディだし……えへへ……

「上溝くん。何をニヤニヤしているの」

 は! 下溝さんに声を掛けられて、顔がにやけている事に気が付いた。

「え? いや、思いだし笑いだよ」
「ふーん。何か面白いことでもあったの?」
「番田の奴に、復讐する方法を考えていた」
「どんな方法?」
「ええっとね。傘立ての傘に、水を入れておくんだ」
「ふんふん」
「で、番田の奴が、他人の傘を使うとびしょ濡れに……」
「わあ! 良い考え。あいつ嫌な奴だから、一度懲らしめてやらないとね」

 番田って、僕だけでなくみんなに嫌われているのだな。

 なんて事を言っていると、運転席から先生が振り向きもしないで口を挟んできた。
 
「二人とも、本当にやっちゃだめよ。それだと番田君以外の人が引っかかるから」

 う! そうだった。

「ねえ上溝君」
「なに? 下溝さん」
「入谷先生っていい人だね。美人だし、優しいし」
「そうだね」
「大学卒業したら、うちの小学校に来て、あたし達の担任になってくれたら嬉しいな」
「下溝さん。おだてても何も出ないわよ」
「おだてていませんよ。あ! 先生、あたしの家この近くです」

 下溝さんが、車から降りて後部座席に僕だけ残った。

「ひょっとして、邪魔しちゃったかな?」
「え?」

 先生何を言っているのだろう? 

「上溝君と下溝さん。あいあい傘のチャンスだったのにね」

 あ! 気が付かなかった。

「ねえ、上溝君。私のマンション、この近くなのだけど寄っていかない」
「え?」
「美味しいケーキがあるわよ」
「行きます」

 車は地下駐車場に入って行った。


 エレベーターに乗ると、先生は十一階のスイッチを押した。

 ずいぶん高いところに住んでいるのだな。

 どうしよう? 僕高いところ怖いのに……そんな事先生に知られたら軽蔑されちゃうかな。

「ねえ、上溝君」
「はい」
「君、冬でもそんな短いズボン穿いているの?」

 え? 半ズボンの事かな?

「穿いていますけど……」
「寒くないの?」
「寒いけど……寒いって言うとママが『男の子が情けない事を言うな』って」
「まあ」

 先生の部屋は狭かった。
 
 大きなベッドと勉強机があるだけ。

 それに結構散らかっている。こんなところでどうやってケーキを……え!?

 突然、先生に抱き上げられた。

「先生……あの……」

 さっきまで優しかったはずの先生の目は血走っていて、息が荒かった。まるで別人……

「上溝君、可愛いわね」
「え? ウグ!」

 先生の顔が近づいてきたかと思うと、僕の口は先生の口に塞がれた。

 キスってテレビで見たことあるけど、こんな事するの?

 唇の間から、先生の舌が入ってきて僕の中で暴れまわっていた。

 でも、気持ちいい。

 気持ちいいけど、怖い。

 先生の身長は僕より頭二つ分は高い。

 僕の足は床から四十センチ上をバタバタとしていた。

 ようやく、口を離してもらえたと思ったら、ベッドに上に投げ出された。

 その上に先生がのしかかってくる。

「上溝君。騒いだり抵抗したら叩くわよ」

 なに? この人? あの優しい先生と同じ人なの?

 まるで別人……

 ベッドの上で僕はたちまち服を脱がされた。

 パンツを取られそうになった時は抵抗したけど、警告通り彼女は僕のほっぺたを叩いた。

 それからは怖くて逆らえない。

「子供の体ってきれいだよね」 

 そう言って、先生は僕のチンチンを弄り始めた。

「どう。気持ちいいでしょ」

 皮を剥かれた!

「痛い!」
「あら、ごめんなさい。まだ無理だったわね」

 皮を剥くのはやめてくれたが、先生は僕のチンチンを口でくわえた。

 クラスの誰かが持っていたエロ本を見たので、フェラチオという行為自体は知っていた。

 でも実際にしてもらうと、そんなに気持ち良いよくない。

 けど先生の口の中は濡れていて熱くて、いつの間にか僕のチンチンは大きくなっていた。

「もういいかな」

 ようやく先生は顔を上げてそう言った。

 もう、終わったのかな?

 そうでは無かった。

 先生は自分も全裸になって僕の腰に跨ってきた。

「上溝君。今から何をするか分かる?」

 僕は無言で首を横に振った。

 だって、分かるわけないよ……

「先生とセックスをするのよ」
「え? セックスって……?」
「赤ちゃんを作るの」
「赤ちゃん?」
「上溝君と私の赤ちゃんよ」
「僕……お父さんになっちゃうの?」
「そうよ」
「やだ! やめて」
「だーめ」

 先生は僕のチンチンを掴むと、腰を降ろしてきた。

 チンチンが熱いものに包まれる。

「上溝君みたいな可愛い子の赤ちゃんほしいな」
「やめて!」

 僕は赤ちゃんなんか欲しくない!

 でも、先生が腰を振ると凄く気持ちいいし……

 ビク! ビク! ビク!

 今の……なんだろう? すごく気持ちよかった。

「ふふ。上溝君、精通はまだだったみたいね」
「せいつう?」
「男は大人になると、ここから赤ちゃんの元が出てくるのよ。でも、上溝君はまだみたいね」

 どうやら僕はお父さんにならなくて済んだらしい。

 それから先生は約束通りケーキを食べさせてくれた後、車で家まで送ってくれた。
 
 別れ際に、先生は僕に部屋の鍵をくれた。

「上溝君。先生の教育実習は明後日までだけど、その後でも遊びに来てね」
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