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心臓に悪い

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 ミクちゃんは、竜二が座っているソファの背もたれの陰にヒョッコと姿を隠した。

 その直後に、紀里が振り向く。

『竜ちゃん、何ニヤニヤしているのよ?』
『別に』

 いかん! 紀里の注意を、こっちにひきつけないと……

「あの!」

 少し、大きめに声を出すと、紀里は再びこっちを向く。

 直後、ソファの陰からミクちゃんがヒョコっと顔を出した。

 心臓に悪い……

「さ……サービスって……どんな事ですか?」
『もう。分かっているくせに』
「い……いや、分からないな」

 分かっているけど、分かりたくない。

『ひひひ』

 竜二が下品な笑い声を立てると、ミクちゃんは顔をヒョッコとソファの影に隠した。

 直後に紀里は竜二の方を振り向く

『もう……何がおかしいのよ?』
『別に』

 紀里がまたこっちを向くと同時に、ミクちゃんがソファの陰からヒョッコと顔を出した。

 バカ! 早く隠れろ!

『小渕沢さん、本当は分かっているのでしょ?』
「なんの事ですか?」

 ミクちゃんが顔を引っ込めた直後に、紀里が振り返る。

『竜ちゃん、またまたニヤニヤしている。なんなのよ?』
『別に』
『もう』

 紀里がまた、こっちを向いた直後にミクちゃんがヒョッコと顔を出した。

 ワザとやっているのか!

 ミクちゃんは、そのままトイレに駆け込む。

 そういう事だったのか。

『ん?』

 トイレの扉が閉まった時の音に気が付いたのか、竜二が振り向いた。

 ヤバイ!

 その時、ソファの上に白い毛の塊が飛び込んできた。

 あれは、羽瀬理ちゃんの猫……

『なんだ、猫か。脅かしやがって』

 つくづく、心臓に悪い……
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