誰もいなくなった町

クラーゲン

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宇宙動物園園長室 2

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「園長。ちょっとまずい事になりました。地球人のつがいですが、水に性中枢刺激薬が入っている事に気が付いたようです。車を使って、他の店舗に置いてある水を使い始めました」
「知性体だからな。仕方ない。すべての水に薬を入れろ」
「しかし、予算が……」
「大丈夫だ。君の給料から引いておく」
「そんなあ! そもそもメス個体が、まだ妊娠できないのなら、無理に交配させる必要はないでしょう」
「いやいや、あのメス個体は、いつ最初の排卵があってもおかしくない状態だ。早ければ明日、遅くとも一年以内に最初の排卵があるだろう」
「だから、最初の排卵を確認してからでもいいでしょ。薬を使うのは」
「まあ、そうだな」
「それと、さっき奴らはこんな物を使っていました」
「何かね? これは」
「コンドームという避妊具です」
「ううむ。排卵が始まっても、こんな物を使われてはな。なんでこんな物まで町に置いておいた?」
「町を丸ごとコピーしたのですよ。これだけコピーしないわけに行かないんですよ」
「とにかく、こんな物があっては邪魔だ。回収しろ」
「奴らが隠し持っている物までは無理ですよ」
「そうか。じゃあやはり薬を使え」
「どうしてそうなるのです?」
「交配をさせていれば、いずれ避妊具を使い果たすだろう。分かったら、さっさとやりたまえ」
「まったく人使いの荒い」
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