真昼の月面着陸

五十嵐 柚木

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如月 一希   6月6日

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 学校が終わり、自宅の玄関を開ける。目に入ってきたのは女の物の靴。それと、少し遅れて甘ったるい香り。
 自室に入るまでの道中、父の部屋の前で、女性の喘ぎ声が耳に入る。不意に胃の中の内容物が迫り上がってくる。少し早歩きで自室向かう。
 父は、作家業界では女癖が悪いことでも少し有名らしい。ほとんど毎日別の女を連れ、部屋に通し、発情期の猿みたいに盛っている。
 そのせいで嫁に出ていかれたというのに、本当に学ばない男だ。
 自室に着くや否や、作品と睨めっこする。もっと良い表現はないか、誤字脱字はないか、それらを確認し、筆を取る。
 俺は俺の物語を紡ぐ。アイツの息子だからじゃない。俺は俺だけの、如月 一希という男だけの物語を。腹の底に抱えてるドス黒いものを吐き出しながら、世界に抗うように物語を紡ぎ続ける。
 しかし、俺は本当にいい友人に巡り会えたらしい。足立は、俺の物語の表現のアドバイスやらをくれ、水谷は、俺が安心して描ける環境をくれた。時には家に泊めてまでくれたから、もうこれからは足を向けて寝ることはできないだろう。
 そんな2人に感謝しながらラストスパートをかけ、物語を書き上げる。
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