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お金で人は変わってしまうのですね

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マロンは作戦①は失敗したので作戦②を実行することにした。

マロンはヘンリーに学校の居心地が悪くなってしまったので一度家に帰りたいと説明すると、
ヘンリーは不服そうだったが実家に帰る手配をしてくれた。

ーー

馬車に揺られること1時間。
以前のロシェルとは全く違う外観の店の前に停まった。

「うわ…なんだこれ…」

ウッド調だった素朴な外観はキラキラした高そうな装飾がいくつもついた趣味の悪いものになっていた。

マロンが絶句していると派手なドレスを見にまとった義母のミシェルが出てきた。

「おかえりなさいマロン!あなたがヘンリー様と婚約してくれたおかげで私は毎日ハッピーよ☆」

「!?」

外見だけでなく真面目だったミシェルのキャラも変わっていた。

「ほら、入って入って!」

家の内装もお金をかけたものに変わっていた。
王家から思った以上に資金援助を受けているようだ。

「もしかしてあそこにいるのはトム義父さん?」

ミシェルだけでなくトムも別人になっていた。
寡黙で料理のこと以外は興味のなさそうなトムが高級そうなスーツを身につけて客と談笑している。
高級品に囲まれて自信をつけたようだった。

マロンに気づき、トムは近づいてきた。

「マロン!おかえり!」

「た、ただいま」

「どうして戻ってきたんだ?」

すると、ミシェルが口を挟んだ。

「いきなり帰ってきたってことは何か報告があるんでしょう?」

「そうだな!」

2人はヘンリーとの結婚の話が決まったと思っているようだった。

「あのさ、もしヘンリーと別れたらまたロシェルの店員として働いてもいいよね?実はヘンリーには婚約者がいて、私のために別れるとか言い出したの!」

嫌な沈黙が流れた。

その沈黙を破ったのはトムだった。

「ヘンリー様と別れるのは許さないぞ!」

とても大きな声で怒鳴ったのでマロンは震えた。

ミシェルはそれをいさめるように話し出した。

「あなた落ち着いて。マロン、悪い冗談でしょ!
まあ私もトムと付き合っている時は不安になることがあったわ。だけど大丈夫よ!結婚したらそんな悩みなんて言っていられなくなるわ!」

「……」

2人とも王家との繋がりを切れて資金援助が途絶えることを恐れているようだった。

それが分かってマロンは何も言えなくなってしまった。
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