剣の世界のβテスター~異世界に転生し、力をつけて気ままに生きる~

島津穂高

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第176話 オークション最終日

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それからも特に1、2日目と大差なくオークションは順調に進んだ。



3日目

洋裁王シャンディ・ヴィヴィエの遺産が出品された。

俺は特殊効果も付いていない洋服など利益は少ないだろうと判断していたが、全くの逆だった。

参加者のほぼ全員が入札するという、過去2日よりも白熱した競り買いが繰り広げられたのだ。

結果は金貨5,640枚、税引して金貨4,512枚の収益となった。



4日目

宝石王ティティエ=ウィンクリーフの遺産が出品された。

誰しもの予想通り、大量に参加している悪徳貴族がこぞって入札した。

結果は金貨4,570枚、税引して金貨3,656枚の収益となった。

相手が相手なのでもっと搾り取りたいところだったが、思ったよりも入札価格が上がらなかった。



5日目

絵画王ベラッジオ=ゴーケスの遺産が出品された。

ソフィアと話し合い、絵画に似合う額縁がないと買い渋るだろうとのことで額縁を付けたまま出品したのだが、正解だったようだ。

結果は金貨7,110枚、金貨5,688枚の収益となった。



そして迎えた最終日



「今日で終わりかぁ…」



「はい。長いようで短く感じました。」



「俺もだ。…っと、そろそろ会場に着く…なっ!?」



会場の入り口を見ると、今までの3倍ほど…約600人ほどが集まっていたのだ。

招待状に彼の有名な鍛冶王アルベイン・スミスの遺産を最終日に出品するという情報を記載しておいたのである程度は予想していたが、まさかここまで多くなるとは思わなかった。



「…っ!!」



人混みの中にある人物を見つけ、反射的にソフィアを連れて物陰に隠れてしまった。

そう、視線の先には仮面をつけて如何にも不審者らしい怪しげな行動をとる父上がいたのだ。

ペンシルゴン家には招待状を送っていないはずなのだが…

武器愛好家である父上は流石に見逃さなかったようだ。



「どうかなさいましたか?」



「あー…先に行ってちょっと待っててくれ。」



「…?かしこまりました。」



会場に入るソフィアを見送り、俺は”迷彩偽装”を行使して父上へ接近した。

そしてスキルを解除し、父上の肩をポンポンと叩いた。



「誰だ…っ!!アルフレッドではないか!!久しいな。」



「父上、お久しぶりです。少々内密な話があるのでこちらへ。」



「分かった。」



会場に流入していく人混みを抜け、狭い裏路地に入った。

そして”無音偽装”を付与した”結界展開の石”を置き、音を遮断する空間を作った。



「父上、招待状を持っていませんよね?」



「うっ…!!それより、やはりオークション主催者のアルフレッドとはお前のことだったのだな。どうして俺に送ってくれなかったのだ?」



「それは…」



俺は傑作を残したそれなりの品だけをオークションに出品したことを伝えた。

そして1度ペンシルゴン家に帰り、プレゼントとして武器をあげようとしていたことを。

最初は頷きながら聞いていた父上だったが、俺のサプライズプレゼントを台無しにしてしまったことに気付くとあからさまにしょんぼりとした。



「…すまなかったな。」



「気にしないでください。…せっかく来たことですし、父上もオークションを見学しますか?」



「いいのか!?」



「入札は出来ませんが…俺の関係者として入場することは可能です。」



「ではそうしよう。オークションを見ながら色々と話そうではないか。」



「はい!」



会場に入ると、既に観客は全員揃っていた。

俺は父上と共にソフィアと合流した後、防音室の役割を持つ関係者専用席に移動した。

そして会場の様子を見つつ、話を再開した。



「…いつも息子が世話になっているな。」



「いえ。私の方こそパーティー管理者として雇用していただき、大変お世話になっております。」



「そうかそうか。アイリス君達もそうだが、君のような優秀な人がいて安心したよ。」



「お褒めにあずかり光栄です。私は用を思い出したのでこれで失礼します。」



きっとソフィアは空気を読んで俺と父上の2人きりにしてくれたのだろう。

気を使わせてしまったことに少し申し訳なく感じるので、後で何か贈り物でもすることにした。



父上がソフィアと話しているうちに次々とアルベイン・スミスの出品物が買われていった。

防音室なので会場の音は聞こえないが、競り買いが白熱していることは一目瞭然だ。



「…しかしアルフレッドも立派になったな。”アルフレッドパーティー”が新遺跡を踏破したという情報は聞いたぞ。」



「えっ?”アルフレッドパーティー”ですか?」



「違うのか?情報屋にそう聞いたぞ?」



「…あっ、なるほど。」



おそらくパーティー名を決めてないため、リーダーの名前が取られたのだろう。

冒険者の間にはパーティーあるあるとして知られている。



「…それに生ける伝説エレノア=ブラッドボーンの後継者になったとか?」



「あっ、そういえば修行で忙しくて父上に伝えそびれていました。すみません。」



「気にするな。随分強くなったな!肩を叩かれたときは全く気付かなかったぞ!!」



「師範…エレノア様に2年半ほど鍛えられましたからね!」



「そうかそうか!」



今まで嬉しそうな表情で話をしていた父上の顔に、少しばかりくらい様子が感じられた。

そして会場の声が少し聞こえるほどの静寂が訪れた。



「…後継者になったということは、やはり吸血鬼に?」



「はい。といっても、容姿と寿命くらいしか変化はないですけどね。」



「ん?容姿は変わっていないぞ?」



「月光を浴びると眼が赤くなって、歯も鋭くなるんです。…まあその時間帯にはもう寝てるのでほとんど関係ありませんが。」



「なるほど…なら良い!!」



『あれ…?怒られるかと思ったけど…』



たじろぎながら父上の表情を窺うと、とても満足そうな顔をしていた。

本当に怒る気はないらしい。



「アルフレッドの話も聞けたことだし、俺はそろそろ帰るとするよ。」



「あっ、出口まで送りますよ。」



「気にするな。では屋敷に帰ってくる日を楽しみにしているぞ。」



「はい!!」



俺は手を振りながら帰っていく父上の後ろ姿を、見えなくなるまで見守った。

それから数時間が経ち、オークション最終日が幕を下ろした。
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