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第一部
パーフェクト・ワールド・ハルⅤ ③
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「まぁ、べつに何をしたってわけでもないんですけど。自分が一番でないと気が済まない性格が滲み出ているというか。……語弊があるかもしれないですけど、あの笑顔でクラス内のアルファを操ろうとしてるんじゃないかって、思うときがありますね、正直」
「安心しろ」
数分前と同じ台詞を、篠原が苦笑気味に吐いた。
「俺も、そう思ってる」
自分の思い違いでも、考え過ぎでもない、と。突き付けられたようで気分が沈む。何も起こらなければ、それで良いと皓太は思っている。本当だ。一番に目立ちたいと思うことも、悪いことではない。周囲をきちんと気遣えるのならば。――ただ。
「成瀬さんは」
「あいつも向原も静観だな。今のところは」
まぁ、でも、と。篠原が嫌そうに天を仰いだ。
「それもミスコンの結果次第かもしれねぇけどな」
「どういう意味ですか?」
ミスコンの結果次第。なんとはなしに香る不穏さに皓太は眉をひそめた。この人の、こういう勘というかなんというか。当たるから嫌なんだよ。
野生の勘と揶揄していたのは向原だったが、言い得て妙だと思う。
「そうだな。いや、――それはまぁ、さておいて。さっきはわがままとは言ったけど、あいつ、榛名を庇ってやったんだろ?」
「まぁ、そうでしょうね」
「あいつが一年の時、その話があいつに向いてた時もあったんだけど、強硬に反対で押し通したんだよ。だから、正直、あいつが自分からやると言うとは思ってなかったんだけど」
言い淀んた篠原が、ちらりと窺うように皓太に視線を送った。
「つまるところ、分かりやすく可愛がってるわけだ、成瀬は榛名のこと」
「それも今更だとは思いますけどね」
「いや、まぁ、そうだけど。ただ、最近は妙な噂がよく立つだろ?」
噂と言われて一体どれのことだと悩んでしまうくらいには、この一カ月弱の間に、陵学園は大小さまざまな噂で満ち溢れるようになった。けれど、今ここで篠原が挙げるとすれば、これなのだろう。
皓太は眉間に皺を寄せたまま吐き出した。
「榛名がオメガだっていう、それですか」
「榛名だけじゃねぇけどな。線の細い、可愛いって言われてたヤツが軒並み噂になってる。それが噂レベルで済まなくなる日が来るかもしれない」
それは、水城がどうのこうのというよりも、よほど嫌な話だ。榛名が苛々している原因の一端であることも間違いない。
――知らないわけないだろ、俺も。
榛名は触れてほしくないだろうから、気付いていない振りをしていただけで、けれど、それだって、いつまでも続けていけないかも分からない。
「オメガかどうか確かめるって言いだす馬鹿が、この先いつ出てもおかしくねぇだろ」
「……」
「それなら、いっそのこと、会長様のお手付きのオメガだって思われたほうが幸せかもしれねぇなぁと。思わなくもなかったんだが」
「やめてくださいよ、篠原さん」
尖った皓太の声に、篠原が肩を竦めた。本当にそうであればありかもしれないが、榛名にとって残酷なことに、そうではない。
「冗談だって、冗談。まぁ、半分くらいは、冗談じゃねぇけど。あまり依怙贔屓が過ぎると、そうなるってことだよ。特に今の状況は」
今の状況。明け透けに噂が蔓延る、今までとは違う学園の空気。
「それでおまけが、このミスコンだ。中間発表もまだだけど、あの新入生と成瀬の一騎打ちみたいだろ? それがまるで、現状と新勢力の一騎打ちみたいで嫌だって話だ」
そこで話が戻るのか、と。皓太はうんざりと首を振った。
もし、いや、もし、ではないのかもしれないが。水城が頂点に立ったらこの学園は何か変わるのだろうか。こんなにも早く。あるいは、二年後、水城が生徒会長としてこの学園のトップに立ったらば。
「安心しろ」
数分前と同じ台詞を、篠原が苦笑気味に吐いた。
「俺も、そう思ってる」
自分の思い違いでも、考え過ぎでもない、と。突き付けられたようで気分が沈む。何も起こらなければ、それで良いと皓太は思っている。本当だ。一番に目立ちたいと思うことも、悪いことではない。周囲をきちんと気遣えるのならば。――ただ。
「成瀬さんは」
「あいつも向原も静観だな。今のところは」
まぁ、でも、と。篠原が嫌そうに天を仰いだ。
「それもミスコンの結果次第かもしれねぇけどな」
「どういう意味ですか?」
ミスコンの結果次第。なんとはなしに香る不穏さに皓太は眉をひそめた。この人の、こういう勘というかなんというか。当たるから嫌なんだよ。
野生の勘と揶揄していたのは向原だったが、言い得て妙だと思う。
「そうだな。いや、――それはまぁ、さておいて。さっきはわがままとは言ったけど、あいつ、榛名を庇ってやったんだろ?」
「まぁ、そうでしょうね」
「あいつが一年の時、その話があいつに向いてた時もあったんだけど、強硬に反対で押し通したんだよ。だから、正直、あいつが自分からやると言うとは思ってなかったんだけど」
言い淀んた篠原が、ちらりと窺うように皓太に視線を送った。
「つまるところ、分かりやすく可愛がってるわけだ、成瀬は榛名のこと」
「それも今更だとは思いますけどね」
「いや、まぁ、そうだけど。ただ、最近は妙な噂がよく立つだろ?」
噂と言われて一体どれのことだと悩んでしまうくらいには、この一カ月弱の間に、陵学園は大小さまざまな噂で満ち溢れるようになった。けれど、今ここで篠原が挙げるとすれば、これなのだろう。
皓太は眉間に皺を寄せたまま吐き出した。
「榛名がオメガだっていう、それですか」
「榛名だけじゃねぇけどな。線の細い、可愛いって言われてたヤツが軒並み噂になってる。それが噂レベルで済まなくなる日が来るかもしれない」
それは、水城がどうのこうのというよりも、よほど嫌な話だ。榛名が苛々している原因の一端であることも間違いない。
――知らないわけないだろ、俺も。
榛名は触れてほしくないだろうから、気付いていない振りをしていただけで、けれど、それだって、いつまでも続けていけないかも分からない。
「オメガかどうか確かめるって言いだす馬鹿が、この先いつ出てもおかしくねぇだろ」
「……」
「それなら、いっそのこと、会長様のお手付きのオメガだって思われたほうが幸せかもしれねぇなぁと。思わなくもなかったんだが」
「やめてくださいよ、篠原さん」
尖った皓太の声に、篠原が肩を竦めた。本当にそうであればありかもしれないが、榛名にとって残酷なことに、そうではない。
「冗談だって、冗談。まぁ、半分くらいは、冗談じゃねぇけど。あまり依怙贔屓が過ぎると、そうなるってことだよ。特に今の状況は」
今の状況。明け透けに噂が蔓延る、今までとは違う学園の空気。
「それでおまけが、このミスコンだ。中間発表もまだだけど、あの新入生と成瀬の一騎打ちみたいだろ? それがまるで、現状と新勢力の一騎打ちみたいで嫌だって話だ」
そこで話が戻るのか、と。皓太はうんざりと首を振った。
もし、いや、もし、ではないのかもしれないが。水城が頂点に立ったらこの学園は何か変わるのだろうか。こんなにも早く。あるいは、二年後、水城が生徒会長としてこの学園のトップに立ったらば。
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