パーフェクトワールド

木原あざみ

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第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅩ ③

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 茅野さんにしか、というか、本当に、あの人たちの「友達」にしか言えない台詞だよな。
 そう思うと悔しいような気もしなくはないけれど、それ以上にほっとした。希望的観測であったとしても、そういうふうに考えてくれている人がそばにいるのだと思えば、心持ちが違う。
 生徒会の側に立つ、ということと、あの人の支えになる、ということは、まったくのべつのことだと思っていたし、後者は自分には荷が重すぎると感じていたからこそ、余計に。

 ――榛名には言えないけどな、どっちにしろ。

 つい先日も、言わなくてもよかったはずのことを言って、部屋を抜け出させてしまったばかりなのだ。
 あんまり夜にふらふらするなよ、と言ってもよかったのだが、そうさせた原因が自分にあったのだろうことはわかっていたし、なにより行った先が生徒会長のところで――向こうが許して迎えたのだろう時点で、なにも言えなかった。
 あの夜から、また榛名はなにか思い詰めたような顔をしている。


「ただいま……って、なんだ、まだ戻ってきてないのか」

 茅野に捕まっていたこともあって、すっかり遅くなっていたから、在室しているものだと思い込んでいた。電気をつけて、ドアを閉める。
 時間を確認すると、もう六時を過ぎていた。

 一度戻ってから四谷のところにでも遊びに行っているのかと思ったが、いつもの場所に鞄が見当たらない。ということは、まだ学内に残っているのか。

 ――あいつが、そんなに遅くまで残ってるかな。

 鞄を片づけながら、内心で首をひねる。昔に比べたら、榛名の交友関係は広がったと思うけれど、それでも基本的には自室にこもっていることのほうがいい。四谷が気にかけてくれているからか、最近はよく一緒に下校しているみたいではあるけれど。
 まぁ、べつに、気にしすぎることでもないな。そう皓太は自分に言い聞かせた。
 名目上、「つがい」になったと言っても、プライベートの行動にとやかくと口を出す理由にはならない。
 そう思っておかないと、つい今のように言ってしまいたくなるのだ。以前であれば「ただの同室者なのだから」で抑え込んでいた干渉や心配を、抑え込まなくていい理由を得てしまったから。
 そんな心配をされたくないだろうとわかっているから、気をつけないといけないと思っているのだが。悶々としたものを抱えたまま、制服から着替えようとした瞬間、がちゃりとドアが開いた。
 振り返ると、皓太がいると思っていなかったのか、榛名は意外そうな顔をしていた。

「あれ、もう帰ってきてたんだ、おまえ」
「……まぁ。というか、榛名こそ遅かったね」

 それとも、自分が知らないだけでいつもこのくらいの時間だったのだろうか。

「あぁ、ちょっと四谷と話してて」
「四谷とって、教室で? 寮に戻ってから話せばいいのに」
「あー……、なんか最近、ちょっと」

 言いにくそうに言葉を濁したまま、榛名が自分の机に鞄を置く。通り過ぎたタイミングで、ふわりと甘い匂いがした。香水なのか、それとも本来のフェロモンなのか、判断のつかない香り。
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