155 / 484
第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅩ ③
しおりを挟む
茅野さんにしか、というか、本当に、あの人たちの「友達」にしか言えない台詞だよな。
そう思うと悔しいような気もしなくはないけれど、それ以上にほっとした。希望的観測であったとしても、そういうふうに考えてくれている人がそばにいるのだと思えば、心持ちが違う。
生徒会の側に立つ、ということと、あの人の支えになる、ということは、まったくのべつのことだと思っていたし、後者は自分には荷が重すぎると感じていたからこそ、余計に。
――榛名には言えないけどな、どっちにしろ。
つい先日も、言わなくてもよかったはずのことを言って、部屋を抜け出させてしまったばかりなのだ。
あんまり夜にふらふらするなよ、と言ってもよかったのだが、そうさせた原因が自分にあったのだろうことはわかっていたし、なにより行った先が生徒会長のところで――向こうが許して迎えたのだろう時点で、なにも言えなかった。
あの夜から、また榛名はなにか思い詰めたような顔をしている。
「ただいま……って、なんだ、まだ戻ってきてないのか」
茅野に捕まっていたこともあって、すっかり遅くなっていたから、在室しているものだと思い込んでいた。電気をつけて、ドアを閉める。
時間を確認すると、もう六時を過ぎていた。
一度戻ってから四谷のところにでも遊びに行っているのかと思ったが、いつもの場所に鞄が見当たらない。ということは、まだ学内に残っているのか。
――あいつが、そんなに遅くまで残ってるかな。
鞄を片づけながら、内心で首をひねる。昔に比べたら、榛名の交友関係は広がったと思うけれど、それでも基本的には自室にこもっていることのほうがいい。四谷が気にかけてくれているからか、最近はよく一緒に下校しているみたいではあるけれど。
まぁ、べつに、気にしすぎることでもないな。そう皓太は自分に言い聞かせた。
名目上、「つがい」になったと言っても、プライベートの行動にとやかくと口を出す理由にはならない。
そう思っておかないと、つい今のように言ってしまいたくなるのだ。以前であれば「ただの同室者なのだから」で抑え込んでいた干渉や心配を、抑え込まなくていい理由を得てしまったから。
そんな心配をされたくないだろうとわかっているから、気をつけないといけないと思っているのだが。悶々としたものを抱えたまま、制服から着替えようとした瞬間、がちゃりとドアが開いた。
振り返ると、皓太がいると思っていなかったのか、榛名は意外そうな顔をしていた。
「あれ、もう帰ってきてたんだ、おまえ」
「……まぁ。というか、榛名こそ遅かったね」
それとも、自分が知らないだけでいつもこのくらいの時間だったのだろうか。
「あぁ、ちょっと四谷と話してて」
「四谷とって、教室で? 寮に戻ってから話せばいいのに」
「あー……、なんか最近、ちょっと」
言いにくそうに言葉を濁したまま、榛名が自分の机に鞄を置く。通り過ぎたタイミングで、ふわりと甘い匂いがした。香水なのか、それとも本来のフェロモンなのか、判断のつかない香り。
そう思うと悔しいような気もしなくはないけれど、それ以上にほっとした。希望的観測であったとしても、そういうふうに考えてくれている人がそばにいるのだと思えば、心持ちが違う。
生徒会の側に立つ、ということと、あの人の支えになる、ということは、まったくのべつのことだと思っていたし、後者は自分には荷が重すぎると感じていたからこそ、余計に。
――榛名には言えないけどな、どっちにしろ。
つい先日も、言わなくてもよかったはずのことを言って、部屋を抜け出させてしまったばかりなのだ。
あんまり夜にふらふらするなよ、と言ってもよかったのだが、そうさせた原因が自分にあったのだろうことはわかっていたし、なにより行った先が生徒会長のところで――向こうが許して迎えたのだろう時点で、なにも言えなかった。
あの夜から、また榛名はなにか思い詰めたような顔をしている。
「ただいま……って、なんだ、まだ戻ってきてないのか」
茅野に捕まっていたこともあって、すっかり遅くなっていたから、在室しているものだと思い込んでいた。電気をつけて、ドアを閉める。
時間を確認すると、もう六時を過ぎていた。
一度戻ってから四谷のところにでも遊びに行っているのかと思ったが、いつもの場所に鞄が見当たらない。ということは、まだ学内に残っているのか。
――あいつが、そんなに遅くまで残ってるかな。
鞄を片づけながら、内心で首をひねる。昔に比べたら、榛名の交友関係は広がったと思うけれど、それでも基本的には自室にこもっていることのほうがいい。四谷が気にかけてくれているからか、最近はよく一緒に下校しているみたいではあるけれど。
まぁ、べつに、気にしすぎることでもないな。そう皓太は自分に言い聞かせた。
名目上、「つがい」になったと言っても、プライベートの行動にとやかくと口を出す理由にはならない。
そう思っておかないと、つい今のように言ってしまいたくなるのだ。以前であれば「ただの同室者なのだから」で抑え込んでいた干渉や心配を、抑え込まなくていい理由を得てしまったから。
そんな心配をされたくないだろうとわかっているから、気をつけないといけないと思っているのだが。悶々としたものを抱えたまま、制服から着替えようとした瞬間、がちゃりとドアが開いた。
振り返ると、皓太がいると思っていなかったのか、榛名は意外そうな顔をしていた。
「あれ、もう帰ってきてたんだ、おまえ」
「……まぁ。というか、榛名こそ遅かったね」
それとも、自分が知らないだけでいつもこのくらいの時間だったのだろうか。
「あぁ、ちょっと四谷と話してて」
「四谷とって、教室で? 寮に戻ってから話せばいいのに」
「あー……、なんか最近、ちょっと」
言いにくそうに言葉を濁したまま、榛名が自分の机に鞄を置く。通り過ぎたタイミングで、ふわりと甘い匂いがした。香水なのか、それとも本来のフェロモンなのか、判断のつかない香り。
12
あなたにおすすめの小説
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
【完結】それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ずっと憧れていた蓮見馨に勢いで告白してしまう。
するとまさかのOK。夢みたいな日々が始まった……はずだった。
だけど、ある出来事をきっかけに二人の関係はあっけなく終わる。
過去を忘れるために転校した凪は、もう二度と馨と会うことはないと思っていた。
ところが、ひょんなことから再会してしまう。
しかも、久しぶりに会った馨はどこか様子が違っていた。
「今度は、もう離さないから」
「お願いだから、僕にもう近づかないで…」
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
普通のβだった俺は
りん
BL
普通の大学生として過ごす白瀬凪が、αの先輩に絡まれる話
凪は普通の大学生だ。βで、容姿も中身も平均値ぐらいだと認識している。ある日、大学でもよく噂されている先輩に声をかけられる。先輩の独特の雰囲気と空気に、次第に巻き込まれていく凪。
書き殴り状態なので少しずつ修正するつもりですです…。
いい加減観念して結婚してください
彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話
元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。
2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。
作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。
【完結】この契約に愛なんてないはずだった
なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。
そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。
数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。
身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。
生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。
これはただの契約のはずだった。
愛なんて、最初からあるわけがなかった。
けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。
ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。
これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。
もう殺されるのはゴメンなので婚約破棄します!
めがねあざらし
BL
婚約者に見向きもされないまま誘拐され、殺されたΩ・イライアス。
目覚めた彼は、侯爵家と婚約する“あの”直前に戻っていた。
二度と同じ運命はたどりたくない。
家族のために婚約は受け入れるが、なんとか相手に嫌われて破談を狙うことに決める。
だが目の前に現れた侯爵・アルバートは、前世とはまるで別人のように優しく、異様に距離が近くて――。
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる