330 / 484
第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 2 ⑦
しおりを挟む
「それはそうとして、ハルちゃんが気持ち悪いくらい大人しいって言ってたの、取り消すわ。いいのか、あれ。ほっといて」
「あいつには言うなよ」
「言うなもなにも、いまさらどうとも思わねぇだろ、その点に関しては」
それもまた、完全に呆れ切った調子だった。
「でも、まぁ、三年経っても燻ってるのを目の当たりにすると……、なんだ。あいつが気にする気にしないっていうのはちょっと置いておいたとしても、おまえの『変に首突っ込むな』が正しかったんだろうな、とは思うわ、本当」
「聞く気ゼロだったけどな」
「成瀬だしな。……でもって言うと、おまえはいい気しないと思うけど、榛名にとっては成瀬がいてよかったんだと思うけどな。そうじゃなかったら、今、あんなふうに元気にしてないだろ」
それも、最初から関わるなって言ってたんだけどな、ということは口にしないまま、視線を向ける。非難が含まれていると思ったのか、「だって、そうだろ」と篠原がわずかに苦笑をこぼした。
「そこくらい認めてやれよ。多少の面倒はあってもおさまった話だし、直接会いに行ったハルちゃんの行動力には恐れ入ったけど、それでなにができるってわけでもなし」
「べつに」
ただ、呆れていただけだ。
オメガと関わって、ろくなことになるのか、と、ずっと忠告はしていた。その忠告に従わなかったから、ろくでもない結果になっている。
向原には、悪気のかけらもない分、榛名のほうが水城よりも性質が悪く見えていた。
「どっちかって言うと、俺は、成瀬が現在進行形で敵つくりまくって遊んでることのほうが気になんだけど」
そう言えば、夏季休暇に入る前にも、生徒会室で何度かやり合っていた。言っても聞かないとわかっているのに、律義に苦言を呈していたあたり、本当に無駄に人が良い。
「休みの前に笑って言ってたの、絶対、本気だぞ、あいつ。向こうが先に手ぇ出してくれるまでの待ちの態勢に完全に入ってるし。本当、そういうとこ性格悪い」
「それこそ、いまさらだろ」
「そうだけど。殴られてやる程度で済めばラッキーだと思ってんのか、その程度で済まなくてもべつにいいって踏んでんのかも知らねぇけど、いくらあいつが良くても、見てるこっちがさすがに気になる」
「おまえ、そういうとこ人間できてるよな」
「人間できて……って、あたりまえだわ。というか、あいつが規格外すぎんの、いろいろと」
おまえも規格外だけど、と言いつつ、それに、ともうひとつの懸念をこぼす。
「風紀は風紀で妙に大人しいし」
水城を追い払って以降、目立った動きのひとつも取っていないことが、気にかかっていたらしい。
「あいつ、昔から、なにもしてない顔して、最後に一番おいしいとこしらっと取ってくからなぁ」
「まぁ、そうかもな」
「なぁ」
おざなりな相槌をものともせず、会話を続けてこようとする。しかたなく、向原は問い返した。
「なんだよ、次は」
「おまえ、なんで、水城のこと、ここまで放っておいたわけ? 前聞いたときは、なんか似非くさいこと言ってたけど」
真面目に尋ねてきているらしい顔を一瞥して、かすかな笑みを浮かべてみせる。いまさらだったからだ。もう事態は転がるところまで転がりきっている。
「物事を動かすには、ある程度の悪ってやつが必要だからな。ちょうどよかったんだ」
この歪なバランスの学園を、内側から歪だと糾弾する存在。それが、いるはずのない――それでいて絶対的に庇護されていたオメガで、成瀬が甘い顔をする「年下」の「弱い」存在であれば、なおのこと。
直接、本尾が潰そうとしても、こうはいかなかっただろう。だから、あの男も、体よく利用しているのだ。
「あいつには言うなよ」
「言うなもなにも、いまさらどうとも思わねぇだろ、その点に関しては」
それもまた、完全に呆れ切った調子だった。
「でも、まぁ、三年経っても燻ってるのを目の当たりにすると……、なんだ。あいつが気にする気にしないっていうのはちょっと置いておいたとしても、おまえの『変に首突っ込むな』が正しかったんだろうな、とは思うわ、本当」
「聞く気ゼロだったけどな」
「成瀬だしな。……でもって言うと、おまえはいい気しないと思うけど、榛名にとっては成瀬がいてよかったんだと思うけどな。そうじゃなかったら、今、あんなふうに元気にしてないだろ」
それも、最初から関わるなって言ってたんだけどな、ということは口にしないまま、視線を向ける。非難が含まれていると思ったのか、「だって、そうだろ」と篠原がわずかに苦笑をこぼした。
「そこくらい認めてやれよ。多少の面倒はあってもおさまった話だし、直接会いに行ったハルちゃんの行動力には恐れ入ったけど、それでなにができるってわけでもなし」
「べつに」
ただ、呆れていただけだ。
オメガと関わって、ろくなことになるのか、と、ずっと忠告はしていた。その忠告に従わなかったから、ろくでもない結果になっている。
向原には、悪気のかけらもない分、榛名のほうが水城よりも性質が悪く見えていた。
「どっちかって言うと、俺は、成瀬が現在進行形で敵つくりまくって遊んでることのほうが気になんだけど」
そう言えば、夏季休暇に入る前にも、生徒会室で何度かやり合っていた。言っても聞かないとわかっているのに、律義に苦言を呈していたあたり、本当に無駄に人が良い。
「休みの前に笑って言ってたの、絶対、本気だぞ、あいつ。向こうが先に手ぇ出してくれるまでの待ちの態勢に完全に入ってるし。本当、そういうとこ性格悪い」
「それこそ、いまさらだろ」
「そうだけど。殴られてやる程度で済めばラッキーだと思ってんのか、その程度で済まなくてもべつにいいって踏んでんのかも知らねぇけど、いくらあいつが良くても、見てるこっちがさすがに気になる」
「おまえ、そういうとこ人間できてるよな」
「人間できて……って、あたりまえだわ。というか、あいつが規格外すぎんの、いろいろと」
おまえも規格外だけど、と言いつつ、それに、ともうひとつの懸念をこぼす。
「風紀は風紀で妙に大人しいし」
水城を追い払って以降、目立った動きのひとつも取っていないことが、気にかかっていたらしい。
「あいつ、昔から、なにもしてない顔して、最後に一番おいしいとこしらっと取ってくからなぁ」
「まぁ、そうかもな」
「なぁ」
おざなりな相槌をものともせず、会話を続けてこようとする。しかたなく、向原は問い返した。
「なんだよ、次は」
「おまえ、なんで、水城のこと、ここまで放っておいたわけ? 前聞いたときは、なんか似非くさいこと言ってたけど」
真面目に尋ねてきているらしい顔を一瞥して、かすかな笑みを浮かべてみせる。いまさらだったからだ。もう事態は転がるところまで転がりきっている。
「物事を動かすには、ある程度の悪ってやつが必要だからな。ちょうどよかったんだ」
この歪なバランスの学園を、内側から歪だと糾弾する存在。それが、いるはずのない――それでいて絶対的に庇護されていたオメガで、成瀬が甘い顔をする「年下」の「弱い」存在であれば、なおのこと。
直接、本尾が潰そうとしても、こうはいかなかっただろう。だから、あの男も、体よく利用しているのだ。
12
あなたにおすすめの小説
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
【完結】それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ずっと憧れていた蓮見馨に勢いで告白してしまう。
するとまさかのOK。夢みたいな日々が始まった……はずだった。
だけど、ある出来事をきっかけに二人の関係はあっけなく終わる。
過去を忘れるために転校した凪は、もう二度と馨と会うことはないと思っていた。
ところが、ひょんなことから再会してしまう。
しかも、久しぶりに会った馨はどこか様子が違っていた。
「今度は、もう離さないから」
「お願いだから、僕にもう近づかないで…」
いい加減観念して結婚してください
彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話
元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。
2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。
作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
普通のβだった俺は
りん
BL
普通の大学生として過ごす白瀬凪が、αの先輩に絡まれる話
凪は普通の大学生だ。βで、容姿も中身も平均値ぐらいだと認識している。ある日、大学でもよく噂されている先輩に声をかけられる。先輩の独特の雰囲気と空気に、次第に巻き込まれていく凪。
書き殴り状態なので少しずつ修正するつもりですです…。
【完結】初恋のアルファには番がいた—番までの距離—
水樹りと
BL
蛍は三度、運命を感じたことがある。
幼い日、高校、そして大学。
高校で再会した初恋の人は匂いのないアルファ――そのとき彼に番がいると知る。
運命に選ばれなかったオメガの俺は、それでも“自分で選ぶ恋”を始める。
【完結】この契約に愛なんてないはずだった
なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。
そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。
数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。
身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。
生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。
これはただの契約のはずだった。
愛なんて、最初からあるわけがなかった。
けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。
ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。
これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。
もう殺されるのはゴメンなので婚約破棄します!
めがねあざらし
BL
婚約者に見向きもされないまま誘拐され、殺されたΩ・イライアス。
目覚めた彼は、侯爵家と婚約する“あの”直前に戻っていた。
二度と同じ運命はたどりたくない。
家族のために婚約は受け入れるが、なんとか相手に嫌われて破談を狙うことに決める。
だが目の前に現れた侯爵・アルバートは、前世とはまるで別人のように優しく、異様に距離が近くて――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる