パーフェクトワールド

木原あざみ

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第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 3 ④

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 ――でも、まぁ、さすがに、そこが繋がってたら、茅野さんあたりが釘刺してるよな。

 そう皓太は思い直した。どちらにせよ、荻原も「気にしてみる」と言ってくれていたのだから、そのあたりのことも今日の放課後に合わせて聞いてみてもいいかもしれない。ついでに、榛名にも改めてそれとなく確認をしてみても、と思考をまとめに入ったところで、「あ」と小さな声がもれそうになった。
 視線を動かして、前方に座る水城をそっと窺う。いかにも集中して真面目に授業を受けている横顔。この同級生が編入してきてからというもの、さまざまなことが変わった。
 皓太にとっては望んでいない事態が多かったが、すべてがすべてにとっての悪いものではないことも理解している。自分が成したいことのためには、水城は無邪気なまでにためらわないことも知っている。だから「悪いこと」も平然とできるのだ。けれど、四谷はそこまでの人間ではない。でも、だから。

 ――負い目を感じることも有り得るわけで、それで、それが当初は「そこまでのこと」ではなかったとしたらっていうのが、一番しっくりくるかもしれないな。

 たぶん、榛名は、想像もしないだろうし、下手をすると、もう完全になかったことにしている気がするのだけれど。高等部に上がってすぐのころ。まだ中等部のころと同様に榛名と四谷がギスギスとしていたころ、榛名が部屋の鍵をなくしたことがあった。
 いつものうっかりだろうと思っていたが、その後の顛末を考えるに、盗まれたとしたほうが、おそらくは自然だ。そのどちらかを四谷がしたとは思わない。でも、鍵の紛失もその後の侵入も、どちらも寮内であったことだ。目撃をしていたとしても、なにもおかしくはない。
 そうして、それを見て見ぬふりをしたとしても。……そうして、思いのほか大ごとになる結果を招いて、言い出せなくなったとしても。そのことを、盗ませた誰かが知っていたとしても。

 ――まぁ、でも、ぜんぶ、可能性でしかないんだよな。

 なにも書いていないノートに視線を落とし、皓太は息を吐いた。生徒会の選挙に出たいと言ったとき、成瀬は情報を正しく取捨選択をして、現状を把握しないといけないと言っていた。
 そうなのだろうということはわかる。知らなければ、なにもできないままに事態が進んでしまうからだ。自分が手を出すことのできない状態になってから気づいてもどうすることもできない。

 ……でも、嫌じゃなかったのかな。こんな、常に誰かを疑ってるような。

 誰も信じないようなこと。なんでもないことのように、さも当然と成瀬は笑っていたけれど。こんなことを言えば、甘えていると評されてしまうのだろうか。こぼれそうになった二度目の溜息を、皓太はどうにか呑み込んだ。
 今は仕方がない。そうしないと整えることができないのだから。でも、いつか。甘いと言われようとも、そういったことを必要以上にせずとも問題のない場所になったらいいのに、と。そう思った。
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