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9.異星間交流(4)
「あ、美味しい!」
「……タネ作ったのはおまえだろ」
おまけに、見た目が変でも味は変わらないと言ったのもおまえだろう。
そう呆れたことも事実だが、目をきらきらさせながら頬張る顔を見るうちに、なんだかどうでもよくなって。悠生は綺麗にできあがったたこ焼きばかりが並んでいる自分の皿を見下ろした。
どう見ても、笹原が作ったもののほうが美味しそうに見えるのだが、本人が悠生が作ったものを食べたいと強請ったのである。満足しているらしいので、それでいいということにする。
「ねぇ、悠生」
「なんだよ」
「悠生がそう思っただけで、悠生に話しかけてきた子たちもさ、純粋に悠生と仲良くなりたかったのかもしれないよ。とっかかりにお兄ちゃんの名前を出しただけで」
予想もしていなかったそれに、悠生は無言で瞬いた。その顔に、はは、と笹原が笑う。
「考えたこともなかったって顔してる」
笹原の考え方は、いつも馬鹿みたいに優しい。そんな人間を悠生はほかに知らない。だから、悠生が関わってきた今までの誰かが、そんなふうに考えて自分に接してきたわけじゃないということも知っている。
でも、笹原がそう言うのなら、いいのかもしれない、と思ってしまいそうになる。
少なくとも、そういうふうに考える人間がひとりはいるのだから、と。
「かわいいよね、悠生。捻くれっ子みたいな雰囲気のわりに、けっこう、単純で素直だし」
「うるせぇよ」
「一人っ子って言ったじゃん、俺。でも、なんか、最近、弟がいたらこんな感じなのかなーって思うんだよね。邪険にされても、ついつい構いたくなっちゃう」
「学年だったら一つしか違わねぇだろ」
「まぁ、そうなんだけど。なんだかんだ言っても悠生は末っ子なんだなって。そんなオーラが出てる」
「どんなオーラだよ」
「んー、そうだな。みんなから愛されてた、みたいな?」
他愛ないはずの言葉が、ちくりとどこかに刺さる。愛されていた。それは、俺が兄貴たちに、両親に、ということなのだろうか。
愛されていなかったとは言わない。ただ、笹原が想像するような末っ子に対するかわいがり方ではなかったと思う。ただ、それだけのこと。言い聞かせて、悠生は平然とした顔で否定してみせた。
「べつに」
「そうかな。俺、悠生みたいな弟がいたら猫かわいがりすると思うんだけどなー。まぁ、うざがられそうだけど」
笹原みたいな、兄がいれば。ずっと幼いころから隣にいたとすれば。どうなっていたのだろう。せんないことを想像して、悠生は笑った。
「おまえ、距離感近いもんな」
「そうかな? 誰に対しても近いつもりはないんだけどな」
「俺に対してこれだったら、ほかのやつにはもっと近いだろ」
あたりまえのことを言ったつもりだったのに、なぜか笹原は曖昧に言葉を濁した。不思議に思うより先に、「そういえば」と話題が切り替わっていく。
「やぎ座流星群ってネットニュースで見たんだけど。このあたりでも見えるの?」
「見えると思うけど。ペルセウス座流星群ほどじゃないとは思う」
「あ、七月末が見ごろだって。ねぇ、悠生。その日、開けておいて」
スマートフォンで調べたらしい笹原が、ぱっと笑う。今年は観測条件が良いという記事を読んだ記憶が悠生にもあった。
「べつに、いいけど」
「やった。約束だからね」
久しぶりに「約束」なんて言葉を聞いたな、と思いながら、悠生は首を傾げた。
「おまえさ。彼女とかいないの」
「いると思う?」
びっくりした顔で聞き直され、ぐっと言葉に詰まる。たしかにこの地に彼女がいたら、こんな頻度で自分と過ごしてはいないだろうけれど。
「東京に、とか」
「え? いない、いない。あれはちょっと見に行ってるだけで」
「なにを?」
「えーと、趣味のものを」
へらりと笑って濁した笹原が、取り成す。
「それに今は悠生とこうしてるのが楽で楽しいかな」
「おまえって、本当に変」
そう言い返すしかなくて、悠生はできるだけ呆れた表情をつくってみせた。
そうかなぁ、といつもの顔で笹原は笑った。
「……タネ作ったのはおまえだろ」
おまけに、見た目が変でも味は変わらないと言ったのもおまえだろう。
そう呆れたことも事実だが、目をきらきらさせながら頬張る顔を見るうちに、なんだかどうでもよくなって。悠生は綺麗にできあがったたこ焼きばかりが並んでいる自分の皿を見下ろした。
どう見ても、笹原が作ったもののほうが美味しそうに見えるのだが、本人が悠生が作ったものを食べたいと強請ったのである。満足しているらしいので、それでいいということにする。
「ねぇ、悠生」
「なんだよ」
「悠生がそう思っただけで、悠生に話しかけてきた子たちもさ、純粋に悠生と仲良くなりたかったのかもしれないよ。とっかかりにお兄ちゃんの名前を出しただけで」
予想もしていなかったそれに、悠生は無言で瞬いた。その顔に、はは、と笹原が笑う。
「考えたこともなかったって顔してる」
笹原の考え方は、いつも馬鹿みたいに優しい。そんな人間を悠生はほかに知らない。だから、悠生が関わってきた今までの誰かが、そんなふうに考えて自分に接してきたわけじゃないということも知っている。
でも、笹原がそう言うのなら、いいのかもしれない、と思ってしまいそうになる。
少なくとも、そういうふうに考える人間がひとりはいるのだから、と。
「かわいいよね、悠生。捻くれっ子みたいな雰囲気のわりに、けっこう、単純で素直だし」
「うるせぇよ」
「一人っ子って言ったじゃん、俺。でも、なんか、最近、弟がいたらこんな感じなのかなーって思うんだよね。邪険にされても、ついつい構いたくなっちゃう」
「学年だったら一つしか違わねぇだろ」
「まぁ、そうなんだけど。なんだかんだ言っても悠生は末っ子なんだなって。そんなオーラが出てる」
「どんなオーラだよ」
「んー、そうだな。みんなから愛されてた、みたいな?」
他愛ないはずの言葉が、ちくりとどこかに刺さる。愛されていた。それは、俺が兄貴たちに、両親に、ということなのだろうか。
愛されていなかったとは言わない。ただ、笹原が想像するような末っ子に対するかわいがり方ではなかったと思う。ただ、それだけのこと。言い聞かせて、悠生は平然とした顔で否定してみせた。
「べつに」
「そうかな。俺、悠生みたいな弟がいたら猫かわいがりすると思うんだけどなー。まぁ、うざがられそうだけど」
笹原みたいな、兄がいれば。ずっと幼いころから隣にいたとすれば。どうなっていたのだろう。せんないことを想像して、悠生は笑った。
「おまえ、距離感近いもんな」
「そうかな? 誰に対しても近いつもりはないんだけどな」
「俺に対してこれだったら、ほかのやつにはもっと近いだろ」
あたりまえのことを言ったつもりだったのに、なぜか笹原は曖昧に言葉を濁した。不思議に思うより先に、「そういえば」と話題が切り替わっていく。
「やぎ座流星群ってネットニュースで見たんだけど。このあたりでも見えるの?」
「見えると思うけど。ペルセウス座流星群ほどじゃないとは思う」
「あ、七月末が見ごろだって。ねぇ、悠生。その日、開けておいて」
スマートフォンで調べたらしい笹原が、ぱっと笑う。今年は観測条件が良いという記事を読んだ記憶が悠生にもあった。
「べつに、いいけど」
「やった。約束だからね」
久しぶりに「約束」なんて言葉を聞いたな、と思いながら、悠生は首を傾げた。
「おまえさ。彼女とかいないの」
「いると思う?」
びっくりした顔で聞き直され、ぐっと言葉に詰まる。たしかにこの地に彼女がいたら、こんな頻度で自分と過ごしてはいないだろうけれど。
「東京に、とか」
「え? いない、いない。あれはちょっと見に行ってるだけで」
「なにを?」
「えーと、趣味のものを」
へらりと笑って濁した笹原が、取り成す。
「それに今は悠生とこうしてるのが楽で楽しいかな」
「おまえって、本当に変」
そう言い返すしかなくて、悠生はできるだけ呆れた表情をつくってみせた。
そうかなぁ、といつもの顔で笹原は笑った。
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