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「第二話 魔人集結 ~魔性の両輪~」
23章
しおりを挟む二本の腕が、少女の秘所を擦り上げる。指を二本、洞窟の中にいれ、襞を掻き乱していく。刺激が高まるにつれ、ナナの秘園は複雑化していき、陰唇が明らかになっていく。
そして、埋まっていた萌芽をシヴァは見逃さない。集中的に摩擦する。ナナの腰がピクピクと反応する。芽はどんどんと大きくなり、陰核となってその姿を晒す。
指でその蕾を弾く。
「ひィィィッッッ!!!」
「まだ、開発されてないって感じね。その分、ここは効くわよォ」
蕾の皮を剥き、性感帯の絶頂を露にする。剥き出しの陰核を容赦なく擦るシヴァ。
「ひゃあうううううううッッッ――――ッッッ!!!!!」
美少女は我も知らず叫んでいた。かつてない、刺激の津波。押し寄せる快感の怒涛に、理性が飲み込まれて行く。
それだけではない。陰唇が擦られ,襞が掻き乱される。胸の突起は千切れそうに固くなり、そこを折られたり、回されたり。唇は再び吸われ、今度は的確に刺激を与えるように、柔らかに触れられて痺れていく。
トドメとばかりに、アナルに挿入される指一本。尖った指が、ナナが悦楽に溺れるのも構わず、遠慮無く奥に侵入していく。仄かな痛みと、究極の疼き。ピンク色の電流が、無垢な少女を弾け焦がしていく。
「うひやああああああッッッ~~~~ッッッ!!!! ひやあうううッッッ!!! はああうああああアアア~~~ッッッ!!!!! ぎひいいいィィィッッ―――――ッッッ!!!!!」
性を趣味とするほどに楽しむ女教師と、純粋な女子高生とではあまりにも差がありすぎた。しかも、相手は3人いるようなもの。シヴァの前に、ナナは成す術なく喚くしかない。
「気分はどう、ナナ? 素直に屈服する気になった?」
「ハア・・・ハア・・・・ハア・・・・わ、私は・・・・・・・・・ま、負けない・・・・・・ゼッタイに・・・・・・・お前・・・・・・・なんかに・・・・・・・負け・・・・ない・・・・・・・」
「そういう強がりも、もう哀れにしか見えないわね。ま、予想通りだけど」
突然、全身の愛撫が止む。炎のような高まりが去らないナナは、自然に腰を上下させる。守るべき人類の見守る中で、恥ずべき醜態だったが、このまま容易くイカされるよりは、まだましだ。
そんなナナの思惑は、実に甘いことが、この後思い知らされる。
二本の腕を、青い少女の目の前に見せる蜘蛛女。その鋭利な爪先からは、緑色の液体がポタポタと垂れている。
「これ、なんだかわかる? 自然界の毒を研究したり、調合したりしてると、時々素晴らしい奇跡に巡り合えるの。これはね、体内に注入すると、神経が剥き出しになったように、刺激に敏感になるの。10倍・・・それどころじゃ済まないかも、よ。拷問用として使うわけ。この“媚毒”をあなたにプレゼントするわ」
ナナの全身から、音をたてて血が引いていく。その意味することが、少女には寒いほどによくわかった。必死でかぶりを振る少女戦士の、あろうことか胸の豊丘に、毒針が突き刺さる。
ドギュッドギュッドギュウッッ・・・・・
たっぷりと、毒が注入される。絶望の淵に叩き落されるナナ。
「オホホホ! 早く毒が回るようにしてあげないとね!」
柔らかな球体を中心に、ナナの全身が六本の腕に揉みしだかれる。撫でまわされる。毒が回っていくのと同時、点在する性感帯を発掘され、少女の内圧がグングン高まっていく。
「うひいいいいィィィッッ―――ッッッ!!! ひあああああぁぁッッ~~~~ッッッ!!!」
「なんて切ない表情なのかしら! ナナ、堪らないでしょう! オモチャとして、髄液までしゃぶり尽くしてあげる!」
「うひゃああああああッッッ~~~~~ッッッ!!!!」
媚毒がその効能を発揮し始める。惰性で感じなくなっていた糸の食いこむ痛みが、ノコギリで切られているように感じてくる。白く熱した鉄の杭が左足に埋まり、左腕は硫酸で溶かされる。神経を直に磨り潰される極痛。しかし、それ以上の熱い迸りが、ナナを発狂寸前に追い込んでいく。
熱い。熱い。熱い。
ピンク色に染まるナナ。細胞が愉悦に悶える。皮膚の表面全てが性感帯となり、空気に触れるだけで愛撫を受けているよう。昂ぶりの残滓が、ナナのオンナを目覚めさせる。
シヴァの指が、胸の突起を弾く。
凄まじい電流が、ナナの秘芯を灼き尽くす。
一声、吼えたナナの裂け目から、透明な雫が噴射される。
「あひいいィィッッ!! あひいいいいィィィィ~~~~ィィッッッ!!!!」
「ナナ、獣になりなさい」
先程の全性感帯を、一斉に責める悦楽地獄が、囚われの少女戦士に襲いかかる。
胸を、秘所を、唇を、アナルを・・・・・極地が、ありとあらゆる方法で嬲られる。陵辱の嵐に飲みこまれ、快感の魔獣に食らい尽くされるナナ!!
「ふべええええェェェッッッ~~~ッッッ!!! ひぎいえええええェェェッッ~~~ッッッ!!! ふわああああああぁぁぁッッ~~~ッッッ!!! くるううぅぅぅッッッ~~~ッッ!! くるうううぅぅッッ~~~ッッッ!!」
凄まじい速度で陰核が、乳首が擦られる。狭穴を指が抜き差しする。もう、人間としての扱いではない。一瞬でイカされたナナは、それでは許されず、イッては昂ぶらされ、昂ぶってはイク、を繰り返される。何度も何度も爆発し、途切れることのない絶頂の中で、身体中の水分を垂れ流していく、ナナ。小便のように愛液は噴射し、ヨダレが滝のようにふきこぼれる。激しく上下する腰が、少女が官能の魔界に堕ちたことを示す。
「オーッホッホッホッ!! 正義の使者がなんて醜態なの、ナナ!! それがあなたの淫乱な正体なのよ!」
ビクビクビクビクビクビク・・・・・・
痙攣だけが、蜘蛛女のことばに応える。
「お・・・・お願い・・・・・・もう・・・・・やめて・・・・・やるなら、ナナちゃんの代わりに、私を・・・・・・・・・」
声の主は、大地に這いつくばったファントムガール。あまりに酷い陵辱劇に、見ていた彼女の心が壊れそうになる。
「聞いてなかったかしら? 今日はこのコ、ナナを堕とす日なのよ。あなたの番はまた、今度。大人しく見てなさい」
無造作に、銀色の美少女の整った顔を蹴り上げる。
血を吹く、ファントムガール。首に絡まる糸が、顔を逸らすことすら許さない。
「さて、天国の旅は満喫してもらえたようね。次は地獄を巡ってもらうわ」
いまだ痙攣し続けるナナの隣に立った魔女が、金色の針を取り出す。二本の腕に、一本づつ。
「今度の取っておきは、この“金剛糸”よ。これにも毒が塗ってあってね。猛毒よ。だけど、安心して、死なないの。激痛だけが襲うの。高圧電流が流れてるみたいに、とっても痺れちゃうの。こんなふうにね」
M字に開脚したナナの、柔らかな太股の内側に、金色の針が突き刺さる。
悦楽の怒涛が、瞬時に消え去る、最極の激痛!!
「ギャアアアアアアアアッッッッッ―――――ッッッッッ!!!!!」
獣の悲鳴が処刑場に響き渡る。
ファントムガールでのダメージが軽減されることなど、意に介さないレベルの激痛に、戦士としてのプライドをかなぐり捨てて泣き喚くナナ。素顔の七菜江は、痛みに屈して号泣していた。
針が抜かれる。安堵するのもつかの間、恐ろしい光景がナナの青い視界に飛びこむ。
シヴァが金色の針の先を、胸の先端、固い蕾に置いたのだ。
「やめてえええェェェッッ~~ッッ!!! もう、許してええェェェッッッ~~~ッッ!!!」
たまらず、怨敵に懇願するナナ。少女の中で、なにかが音をたてて崩れていく。
ゾッとする戦慄と共に哄笑うシヴァ。右手がナナの左の乳房を形が崩れるまでに強く鷲掴む。固定された蕾のくぼみに、金色の針がセットされる。触れるだけで、微かな電流が、豊かな膨らみ全体を包む。
「いい気味ね、ナナ。ようやく力の差が理解できたようね。媚毒と金剛糸の二重奏じゃあ、さすがに堪えるでしょう?」
「お願いッッッ!! もうやめてええェェッッ!! 私、もう、闘えないのッッ!!」
「そんなこと、わかってるわ。最近の若者は、ヒトにものを頼む態度ができてないわね」
金色の針の切っ先が、乳首の先端、わずかなくぼみにズブズブと埋まっていく!
「ウギャアアアアアアアアッッッ―――――ッッッッ!!!!!」
「アッハッハッハッハッ! いい鳴き声だわ、ナナ! さあ、もう一回、きちんとした言葉で懇願しなさい」
「私、ダメエエエエェェェッッッ~~ッッ!! 狂うぅぅッッ!!! 狂ってしまううぅぅッッッ!!!!」
「聞こえないの?! さっさと言い直しなさい!」
さらに全体の5分の一程度が、ズブズブと、針が体内に消えていく。
「ギアアアアアアアアッッッッ―――――ッッッ!!!!! ・・・がッッ・・・アアッッ・・・い、言います・・・・・・も、もう・・・許して・・・・・・・・くだ・・・さい・・・・・・・・お願い・・・・・・・しま・・・・・・・す・・・・・・・」
「そうよ、最初からそう言えばいいの。でも、なんだか物足りないわね」
また、5分の一ほど、針が美乳の中に入っていく。
「フゲエエエエエエエエェェェッッッ―――――ッッッ!!!!! ゲエエッッッ・・・ぐええええええッッッッ!!!!」
血を吐くナナ。クリスタルの光は線香花火のように消えかけ、瞳のブルーは点滅する。
「もっと、誠意を込めたセリフが欲しいわ。さあ、心の底から一生懸命お願いしてごらんなさい。そしたら、金剛糸を抜いてあげてもいいわ」
「ううぅ・・・・・・・ぐぶう・・・・・・・がふうう・・・・・・」
「言うの、言わないの、どっち?!!」
ズブズブズブ・・・・・・・
ついに針が半分以上埋まってしまう。
「ギイヤアアアアアアアアアアッッッ―――――ッッッ!!!!!」
「さあ、どっちなのよ。喚いてないで答えなさい!」
「い、言いま・・すぅぅ・・・・・・・わ、私の・・・負けですぅぅ・・・・・・も、もう・・・・・許しでぐだざいィィ~~ッッ・・・・・・あ、あなたには・・・・か、敵いまぜん~~ッッ・・・・・・・お、お願い・・・・ですがら・・・・・・だ、だずげで・・・・・だずげでぐだざいィィッッ~~~ッッッ・・・・・・・」
憎き悪魔に、泣きながら哀願する少女戦士。完全なる屈服の瞬間に、シヴァのエクスタシーは最高潮を迎える。
「いいコよ、ナナ。あなたのような虫けらが、選ばれた者である私に歯向かうことが無謀だと、やっと悟ったようね」
腕の一本が、青いショートカットをナデナデする。七菜江史上、最低最悪のナデナデ。涙こそ流れてないが、クシャクシャの泣き顔が揺れる。
「じゃあ、ご褒美♪」
ズブズブズブズブ・・・・・
残りの針が、一気に埋めこまれる!!
「イヤアアアアアアアアアアアッッッ―――――ッッッッ!!!!!」
魂切る大絶叫!!
ナナの全身が硬直し・・・・・・一瞬後には、弛緩して、縛糸に吊り下がる少女の無残な姿があった。
「あと、もう一本あるのよね。今度は右胸がいいかしら? それともクリトリス?」
想像するだに恐ろしい台詞を吐いて、悠然と金色の針を出すシヴァ。どうみても、ナナにそれを耐える体力・精神力はない。待つのは、ショック死か、精神崩壊か・・・・
「や、やめて・・・・・お願いだから、もうやめて・・・・・」
ファントムガールの声が再度、シヴァに懇願する。彼女の声も震えていた。
「また、あなたなの? しつこいわねェ。ナナを堕とすって言ってるでしょ」
「も、もう、ナナちゃんは、あなたに負けを認めたわ・・・・・・あなたの勝ちよ・・・・・・これ以上は、もう・・・・・」
「・・・・・・あなたも、負けを認めるかしら?」
「・・・わ、私も・・・・・・認めるわ・・・・・・・・」
「そう。じゃあ、私の足の汚れをキレイに拭き取ってちょうだい。あなたの舌で、ね。そうすれば、この金剛糸は使わないであげましょう」
茶色の体毛の覆われた蜘蛛の足を、這いつくばるファントムガールの鼻先に突き出すシヴァ。よく見ると、足首から先は細く尖り、ハイヒールのような足型になっている。ファントムガールがブーツを履いていることを考えれば、さほど不思議なことではない。ハイヒールは、当然ながら、アスファルトの泥と埃で汚れていた。
数瞬の沈黙。そして。
ファントムガールの赤い、子犬のような舌が、ペロリとハイヒールを舐める――
「オホホホホ! お利口さんよ、さすが生徒会長さんは何をすべきか、ちゃんとわかってるわ!」
燃えるような恥辱の炎が、里美の心を焼いているはずだった。
しかし、そんな気持ちをおくびにも出さず、彼女は丹念に、魔女の足の汚れを舐め取る。
「足の裏も、よ」
一瞬のためらい。だが、黒く汚れたその場所をも、ファントムガールはペロペロと舐めていく。
正義の使者が、悪魔に敗れ、這いつくばって、その足を舐める。かつてない、衝撃的なシーンが、繁華街を背景に繰り広がる。見つめる人々の胸に、苦い想いが込み上がる。
「いいわ。金剛糸は使わないであげる」
金色の針をしまう蜘蛛女。ホッとしたファントムガールの茶色の髪が、顔を隠すように流れていく。
「そろそろ時間がないわ。最期のとどめといこうかしら」
ファントムガールの髪が跳ね上がる。切れ長の青い瞳が、動揺を示して吊りあがる。
「や、約束が違うわ!!」
「金剛糸は使わないって言ったでしょ。安心しなさい、殺しはしないわ。もっとも、勝手に死んじゃったら知らないけど」
水色の身体に変化が起こる。金色の産毛が生えた股間から、何かが突き出てくる。もしや、ディルドゥ・・・違う、緩やかにカーブし、先端が尖った黒い物体は・・・・・・針。
スズメバチのような毒針が、禍禍しい曲線を顕示して、シヴァの股間から飛び出している。
針の先からは、黄色の液体が、点滴からこぼれるように落ちている。
蜘蛛の巣に絡み取られた青い獲物に、魔女が飛びかかる。六本の腕で、動けない守護天使を、さらに固定する。
気絶したままのナナの股間、秘密の洞穴に、蜘蛛の毒針が突き刺さる!!
「ぐああああぁぁ??!!」
突如襲った、のっぴきならない悲劇に蘇生するナナ。下腹部に走る鈍重な圧迫感と痛み。正常位の態勢でのしかかってくるシヴァの陰惨な笑みが、少女の運命を教える。
「ああ・・・・・あうああ・・・・・・ああ・・・・・」
「今時の女子高生にしては、操を守りつづけてるなんて、見た目よりもお堅いのね、ナナ。あなたの処女は、私が奪ってあげるわ」
毒針が激しくピストン運動を始める。それとともに黄色の毒液が、ナナの膣を、子宮を、汚していく!!
「うわああああああああッッッ―――――ッッッッ!!!!!」
「オーホッホッホッホッ!! ホーッホッホッホッホッホッ!!」
毒液が、ナナの秘所を溶岩のように溶かしていく。内臓が焼け爛れていく激痛に、止むことのない少女戦士の哀れな悲鳴が、絶望の街にこだまする。勝ち誇る、魔女の嘲笑とともに・・・・・・・・
ミュータントが現れてから、約1時間後、水色の魔女の姿は闇に溶けこんでいった。
同じように、様々な太さの糸が消失し、光の使者を捕えていた戒めが解かれる。自由を取り戻した瞬間、ふたりのファントムガールは、光の粒子となって、四方に砕け散って消えた。
後には、崩壊したビル群と、瓦礫の山、土煙と火柱が残った。
池となったふたりのファントムガールの血溜まり、そしてナナの愛液の海が、ここで起こった陵辱の宴の跡だった。
執事・安藤が指揮する特殊部隊は、立ち入り禁止の瓦礫の山で、ふたりの少女の回収に成功する。
五十嵐里美は腹部をズタズタに引き裂かれた、無残な姿で発見された。黒い軽合金で編まれた忍びかたびらを装着した彼女が寝ていた場所は、滴る血で真っ赤に染まっていた。
藤木七菜江はビリビリに破れたセーラー服姿で発見された。激闘の跡が、衣服にまで影響した結果だった。破れたプリーツスカートから覗く、ピンクの縞のショーツからは、黄色の毒液と、透明な愛液がとめどなく溢れ出ていた。左足の怪我が一番目立つが、内部には相当レベルのダメージを被っていた。
かくして、天才学者と蜘蛛のキメラ・ミュータント=シヴァの前に、ふたりのファントムガールは圧倒的な惨敗を喫したのだった。
完膚なきまでに叩きのめされた光の戦士に、人類の未来に、希望はあるのだろうか。
そして、次なる侵攻を防ぐことはできるのか。
銀色の守護天使は、復活できるのか。
ドス暗い澱が、世界に沈殿し、誰の心にも重い翳りが宿るのだった。
1週間後―――
藤木七菜江は、見覚えのある天井を視線の先に見る。
そこは五十嵐家のベッドの上だった。柔らかすぎず、硬すぎないスプリングの感覚が、小さな少女の身体に心地よい。暖かな羽毛の掛け布団が、死の淵を彷徨った肉体を、優しく包み込む。
どこがどう、という話ではなかった。
あらゆる部分が痛く、苦しい。吐く息が、炎のように熱い。目蓋を開けるのも、だるい。
「ナナちゃん・・・・・・気が付いた?」
五十嵐里美の声は隣のベッドから聞こえてきた。眼だけを動かしてそちらを見る。
里美はベッドの上に上半身を起こしていた。淡いブルーのパジャマから覗く包帯が痛々しい。点滴の管が襟の裾から出入りしているが、よく見ると、それは自分も同じだった。幾分、青白い表情だが、声には力があった。
「良かった・・・本当に。良かった・・・」
みるみるうちに、切れ長の、星を宿した瞳に雫が溢れる。これほどに美しい涙を、七菜江は見たことがなかった。
「里美さん、泣かないで。・・・私、生きて会えて、嬉しいよ・・・」
苦しい割には声はよく通った。少しでも里美が安心してくれることを思うと、有り難い。
「散々な目に遭ったけど、また、ふたりでガンバロ。・・・こうやって生き延びれたんだから、私達、ツイてるんだよ」
部屋の様子を見回していた七菜江の視線が、壁に掛けられたセーラー服の上で止まる。七菜江お気に入りの制服は、ビリビリに引き裂かれており、ところどころに穴が開いていた。
「私の制服・・・」
「・・・衣服もトランスの際に身体と同化するから・・・・・・ダメージでああなっちゃったみたい・・・」
「あは・・・ボロボロだぁ・・・新しいの、買わなきゃ・・・・・」
鈍い重みが、突然七菜江の下腹部を襲う。それはいまだ抜け切らない毒の影響だった。女のコにとって、最も大事なものを奪われた、忌まわしい記憶が蘇る。
「あ、あたし・・・・・・負けたんだね・・・・・」
「ナナちゃん・・・・・・・・・・」
「あたし、あの女に負けたんだね・・・・・・・・」
天井を見たままの七菜江の頬を、綺麗な聖水が伝う。ショートカットを支えた枕に、染みが広がっていく。
「里美さん・・・・・ひとつ、お願いしても、いい?」
「・・・・・・・・・なに?」
「・・・ちょっとだけ、泣いてもいいですか?」
それは、ふたりだけの秘密。
苛烈な使命を背負った、ふたりの少女だけの時間が、ゆるやかに流れていった―――
《ファントムガール 第二話 -完ー 》
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