最強宇宙人ゼルネラ ~巨大変身ヒロインはボクの獲物です~

草宗

文字の大きさ
27 / 32

27、漆黒のリベンジャー

しおりを挟む
 死んだ。炎乃華が死んだ。
 マイティ・フレアになっている間、彼女の動力源は炎のマナゲージに委ねられている。結晶体の炎が消えれば、その命は尽きる。
 マイティ・フレアが死ねば、当然炎乃華も生きてはいられない――。そんなことは、ゼルネラ星人であるオレは、百も承知のことだった。
「……ふははは……ハーッハッハッハッ!」
 高らかにオレは笑い声をあげた。
 楽しいわけがない。愉快なわけがない。オレがどれほど苦しいか、誰にも理解などできるものかッ!
 しかしオレは、笑わねばならなかった。だってオレは、地球を侵略にきたゼルネラ星人なのだから。マイティ・フレアの敵である、ラスボスなのだから。
「いいザマだな、マイティ・フレア! 貴様の悪運もこれまでというわけだ!」
 遥か先で地面に横たわる炎乃華を見詰めながら、オレは悪役らしい台詞を放った。シアンが不思議そうに顔をしかめているのが視界の隅に映る。
 炎乃華はキレイな死に顔をしていた。
 壮絶な苦痛に襲われていたはずなのに、満足して旅立ったのかもしれなかった。あれほど焦がれた『正義のヒロイン』を彼女は全うできたのだから。
 こんなにも美しい少女だったのかと、オレは改めて思い知った。
「よくやったな、シアンよ! よくぞここまでマイティ・フレアを『追い詰めた』! トドメはオレに任せるがいい!」
 両目を大きくみはったシアンは、この時になってオレの真意に気付いたのかもしれなかった。
 なあおい、シアンよ。お前の言う通りだぜ。オレたちは長い付き合いなんだ。
 お前がやろうとすることくらい、想定済みさ。
 万が一、炎乃華が殺されることも覚悟していた。マイティ・フレアの炎のマナゲージが消える可能性も考えて、オレはここにやってきた。
「やれッ、ゼネット! マイティ・フレアにトドメを刺せッ!」
 ゼネットの二つ名は〝漆黒のリベンジャー〟。攻撃してきた者に、必ずカウンターを撃ち返す習性からその名が与えられている。
 前回炎乃華とゼネットが闘った時のこと、知っているか、シアン?
 最後、ゼネットはたっぷりとフレアブラスターを浴び……カウンターを撃ち返す前に、オレに眠らされたんだ。
つまりその体内には、フレアブラスターのエネルギーがまだ大量に残っている。
 灼熱の、炎のエネルギーが。
 ゴオオオウウッ‼
 ゼネットの顔、丸い鏡のような器官から真っ赤な火球が射出された。
 超高熱の業火の塊。
 山ひとつくらい一瞬で蒸発させそうな炎の砲弾が、一直線に横たわる炎乃華へ飛んでいく。
「さらにッ!」
 火焔弾の軌道上に、オレは素早く移動した。
「このオレ様のパワーも、プラスさせてやるぞッ!」
 大声で叫ぶ。このバトルの生中継を視聴する人類に、よく聞こえるように。
 真っ直ぐ飛ぶ火球を、オレは両手で捕まえた。
「グヌウッ!」
 奥歯を噛み締めたのに、声が漏れて出ちまった。
 掌の皮が焼け爛れる。もえたぎる炎の塊は、ズブズブに溶けた肉を根こそぎ持っていく。
 ズリュウウッ、とオレの両手の間をすり抜けた火球は、少し勢いを弱めながらも炎乃華に向かう。その胸の中央、真っ黒になった結晶体へ。
 炎の塊は、マイティ・フレアのマナゲージに直撃した。
「……バ……カなぁッ‼」
 …………ピ…………
 シアンが叫ぶのと、炎のマナゲージに赤色が戻るのは、ほぼ同時であった。
 さあ、炎乃華よ。マイティ・フレアよ。立ち上がってくれなきゃ、ウソだぜ。
 苦労してお前を、生き返らせたんだ。
 オレとお前の闘いは、まだ終わらない。そうだよなぁ?
「そうはッ! いかせるものかッ!」
 パカリとシアンが大きく口を開いた。
 これだから女のカンってやつは侮れない。今ここでマイティ・フレアの復活を許してはならない……倒すなら今だと、本能で察知しやがった。
 最高威力を誇る水流のレーザーを、シアンは躊躇なく発射した。
 一直線の放水が、まだ眠ったままの炎のヒロインに襲い掛かる。
 ピピピピピッ! ピィ――ッ!
 長く尾を引くマナゲージの音に、水流が大地を抉る轟音が重なる。
 つい一瞬前まで炎乃華がいた場所を、弩流のレーザーは直撃していた。
 ツーサイドアップの髪を舞わせて、白銀と深紅の巨大ヒロインは跳んでいた。
 胸に輝く炎のマナゲージは、赤々と輝いている。打撃でボロボロにされた肢体にもエネルギーが満ちているのは、遠目から見てもよくわかった。
「……私の……炎はっ! 再び灯ったわッ!」
 マイティ・フレア、復活。
 2本の脚からキレイに着地した炎乃華は、大きく肩で息をしている。
 なにせさっきまで呼吸してなかったんだからな。炎のエネルギーを大幅にチャージしたとはいえ、深刻なダメージを受けたのは否定できない。
「……ノワル……その手は?」
 荒々しく息を吐く炎乃華の視線は、焼け爛れたオレの両手に注がれていた。
 掌の皮が全部ベローンとめくれちまって、血がボトボトと垂れ落ちてやがる。仕方ねえ。フレアブラスターを濃縮した灼熱の塊を掴んだからな。いくら最強のオレでも、負傷するのもやむを得ない。
「……フン。ゼネットの一撃では頼りないので、オレ様のエネルギーも加えてやったまでのことよ!」
 むろん、あの刹那のタイミングでそんな芸当をする余裕などないが。
「おのれ、マイティ・フレア! 我らのトドメの一撃を喰らってもまだ死なないとは! 貴様の耐久力を侮っていたようだ!」
「……あなたが両手で、火球の威力を抑えたのね?」
 じっと澄んだ瞳で見つめられると、炎乃華には全てを見透かされた気分になってしまう。
「ふは、ふははは。何を言っているのだ、貴様は」
「ゼネットのカウンターの火球は、まともに受けたらマナゲージが壊れるほど危険な一撃よ。前回の闘いで身に沁みているわ」
 ……そうか。気付いていたのか。
「だからあなたが、身を張って調節してくれたのね?」
 ちぇッ。そういうのはお前……ギャラリーの前ではナイショにしておいてくれよ。
「ふ、フンッ! なんのことだかさっぱりわからんな」
「……ありがとう」
 マイティ・フレアではなく、完全に津口炎乃華の顔で巨大ヒロインは微笑んだ。
 ……バカだな。これじゃあ誰もが、オレとお前は仲良しだって勘違いしちまうぞ。
 あくまでゼルネラ星人ノワルとマイティ・フレアは宿敵同士で、いつかは地球の支配を賭けて闘わなきゃいけない運命だっていうのに。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

農民レベル99 天候と大地を操り世界最強

九頭七尾
ファンタジー
【農民】という天職を授かり、憧れていた戦士の夢を断念した少年ルイス。 仕方なく故郷の村で農業に従事し、十二年が経ったある日のこと、新しく就任したばかりの代官が訊ねてきて―― 「何だあの巨大な大根は? 一体どうやって収穫するのだ?」 「片手で抜けますけど? こんな感じで」 「200キロはありそうな大根を片手で……?」 「小麦の方も収穫しますね。えい」 「一帯の小麦が一瞬で刈り取られた!? 何をしたのだ!?」 「手刀で真空波を起こしただけですけど?」 その代官の勧めで、ルイスは冒険者になることに。 日々の農作業(?)を通し、最強の戦士に成長していた彼は、最年長ルーキーとして次々と規格外の戦果を挙げていくのだった。 「これは投擲用大根だ」 「「「投擲用大根???」」」

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...