神と人間 長編バージョン

2章 第十話

「ヘルスも誰もいねぇじゃねぇか!!あの野郎、嘘つきやがったな。」

花井達はヘルスに言われたとおりに、学校に来ていた。
しかし、まだ、ヘルスはおらず、逃げられたと思っていた頃だった。上空から複数の火の玉が飛んできたのは。飛んできた火の玉を相馬の錬金術で作り出した壁で防御する。

「おぉー。上出来上出来。」

そう言いながら、ゆっくりと上空から降りてくるヘルス。日野は脇に挟まれていた。

「じゃあ、始めようか。」

ヘルスのその一言で一気に四人が動いた。
花井は、先ほどのヘルスの火の玉とは比べものにならないほど巨大な火の塊を作り出した。
そして、ヘルスに向けて一気に飛ばす。

「そんな荒い力任せの魔法なんて脅威でも何でもないよ。」

ヘルスは飛んできた火の塊の横から小さめの水の玉を当てる。
軌道が変わった火の塊は軽々と躱される。
そして躱された火の塊はヘルスが操っているのか、稲森のところに飛んでくる。

「……っ!?」

稲森は驚き、息をもらしながらも、水の精霊を呼び出し、精密にコントロールする。ヘルス程ではないが、稲森の魔力操作も高校生とは思えないぐらいに魔力操作が上手い。

「へぇ。君、魔力操作上手だねぇ。君が一番の脅威かもね。」

しかし、ヘルスは一瞬で約三十メートルを移動してきた。おそらく、風魔法で加速しながら移動してきたのだろう。

そして、次の瞬間には、稲森の体は吹き飛ばされていた。

ヘルスは相馬を倒すために足に力を込める。

「やめろ！やめてくれ……やめてくれよ……」

花井の叫びを無視して、ヘルスは相馬の元に移動する。
相馬は、自分の体を錬金術で硬くするが、炎で覆われたヘルスの足を止めることは出来なかった。
相馬も稲森と同じように、吹き飛ばされていく。

残っているのは、花井のみとなった。

「やめてくれ……頼むから……やめてくれって言ってるだろ!!」

花井から、無数の火の塊と水の塊が飛ばされる。

「だから、そんな荒い力任せの攻撃なんて当たらないって言ってるじゃないか。…………っ!?これは!?ホーミング弾!?」

花井は、神から貰った指輪を外し、自分で潰した。

そして花井は、暴走状態になった。
しかし、前のような怒りだけの暴走状態ではなく、悲しみもあるようだった。花井の顔を一筋の涙が伝う。

「今度こそ、決着をつけようぜ。」