既婚男性がカフェの美人店員に一目惚れしたら

第五話 勝手な考察

その日の夜、ベッドで一人横になったまま、俺はなかなか寝付けずに考えを巡らせていた。

俺はバイセクシャルだ。春奈と結婚する前は男と関係を持ったこともある。

春奈とは、付き合っているうちに子供ができて、自然の成り行きで結婚に至った。誰もが認める美女で、スタイルもよくて、性格も悪くない。もちろん娘の夏日は文句なく可愛い。

だが、夏日が生まれてからは、なんとなく彼女を女として見ることができなくなった。
セックスの対象と言うよりは、頼りになる母親だ。

俺と春奈が夜を共に過ごさなくなって二年経っている。セックスレスってやつだ。

俺は、父親になってからは男に興味が惹かれることはなくて、自然にヘテロセクシャルに変化したのだと思っていた。

進哉さんに会うまでは。

そんな俺の経験上…あくまで俺が会ったことがある人間だけだが、男には五種類いる。

一番目は、絶対に女しか好きになれない、ノーマルな男。ヘテロセクシャル。

二番目は、男しか好きになれない男。性転換や女装をして外見上女になっている場合も、見た目は普通の男の場合もいろいろあるが、ひとまとめにしてゲイという部類。

三番目はどっちもいける人。バイセクシャル。俺はこれだ。男も女も、どちらの身体にも性的に興奮できる。

四番目は、気持ちよければ何でもいいという人。バイセクシャルと似ていて少し違う。セックスそのものに執着があり、男でも女でもとにかくやれればいいタイプ。

そして五番目。押しに弱くて誘われれば断れない人。相手が男でも女でも。性格は優しくて人当たりが良く悪く言えば優柔不断で、まさに進哉さんのような人だ。

彼ならきっと、強気にいけば口説けるのではないか。俺は進哉さんを思いながら、そんな下種なことを考えていた。

手首にあのボディミストを付けて。

よい香りに包まれながら、俺はいつの間にか眠りに落ちていた。夢の中に彼と、店にあったピンク色の瓶が出てきた。