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第二話 誘い
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藁にもすがる思いというのはこういうことを言うのだろう。
かぼちゃはいつの間にか、近くにあったファミレスに、怪しげな男と二人で入っていた。
机の上には手の付けられていない、ドリンクバーで汲んできたメロンソーダが二つ置いてあるだけだった。
「申し遅れました。私、こういうものです」
男が差しだしてきた名刺には、【就活アドバイザー 泡沫ぴいまん】と銘打たれていた。
「しゅ、就活アドバイザーって……」
胡散臭すぎるだろ。かぼちゃは内心そう毒づく。
「正直胡散臭いですよねぇ」
泡沫ぴいまんは、わかりますよと頷きながらこちらに身を乗り出してくる。
かぼちゃはそれに圧されるようにして、身をのけぞらせながら、「い、いや……そ、そんなことはっ」と取り繕うのが精いっぱいだった。
「でも腕は確かですよ、私は。今まで迷える就活生たちを見事内定まで導いてきましたから」
腕ってなんだよ、とかぼちゃは再び内心つっこまざるを得なかった。結局頑張って結果を出しているのは就活生だろ。それをさも自分の手柄みたいに言って。まあ、就活アドバイザーなんて所詮こんな奴しかいないんだ。
ほんとにどうして、こんな奴にのこのこついてきてしまったのだろうか。一瞬でも話を聞こうとしていた自分が恥ずかしい。これ以上話を聞く価値もない。
饒舌なぴいまんとなるべく目を合わさないようにしながら、かぼちゃは鞄に手をかけ立ち上がろうとする。
「いけませんねぇ、人の話は最後まで聞かなくては。そんなんだからこんな時期までNNT、無い内定なんですよぉ」
あからさまに挑発的な発言。そんなことは頭ではわかってはいても、自然とかぼちゃの動きは止まり、怨嗟を含む視線を男に投げつけていた。
「あんたに……あんたに何がわかるんだよ!」
自分でも思ってもないような大声が出る。店内にいる人たちの視線が集まるのがわかる。
「わかりますとも!」
男もかぼちゃに負けないほどの声量でそう返してくる。
「辛いでしょう。必要とされないのは」
いつの間にか男の顔には、薄気味悪い笑みが張り付いている。
「嫌いになったでしょう自分が」
男の目は笑っていない。触れればケガしてしまいそうな鋭さをもって、かぼちゃのことを真っすぐ射抜いていいる。
「大学生活を振り返れば、形のあるモノなんてほとんど手元には残っていない」
やめろ、言うな。
「長所は一個も見つからないくせに、短所だけはいくつも知っている」
うるさいうるさい。
「短所が長所? そんなわけないことくらい、痛いほど自分でわかっていらっしゃるでしょう」
黙れ黙れ黙れ。
「短所なんて、どんなに取り繕っても短所であることに変わりはないんですよ」
手を握りこみすぎて、指が痛い。
「気弱で、意志が弱く、にわか気質で、心配性で、頑固で人見知りで、視野が狭く、優柔不断でプライドが高く、ネガティブ思考で」
いつの間にか、僕が固く握っていたコブシは、ぴいまんの頬を殴りぬいていいた。
しかしぴいまんは動じた様子もなく続ける。
「それでいて短絡的だ」
かぼちゃを見つめる目は氷のように冷たかった。
「そんなあなたのあまりに多すぎる欠点がなくなるなら? こんなにいい話はないでしょう?」
ぴいまんがそう言いながら胸ポケットから取り出したのは、PTP包装シートだった。
かぼちゃはいつの間にか、近くにあったファミレスに、怪しげな男と二人で入っていた。
机の上には手の付けられていない、ドリンクバーで汲んできたメロンソーダが二つ置いてあるだけだった。
「申し遅れました。私、こういうものです」
男が差しだしてきた名刺には、【就活アドバイザー 泡沫ぴいまん】と銘打たれていた。
「しゅ、就活アドバイザーって……」
胡散臭すぎるだろ。かぼちゃは内心そう毒づく。
「正直胡散臭いですよねぇ」
泡沫ぴいまんは、わかりますよと頷きながらこちらに身を乗り出してくる。
かぼちゃはそれに圧されるようにして、身をのけぞらせながら、「い、いや……そ、そんなことはっ」と取り繕うのが精いっぱいだった。
「でも腕は確かですよ、私は。今まで迷える就活生たちを見事内定まで導いてきましたから」
腕ってなんだよ、とかぼちゃは再び内心つっこまざるを得なかった。結局頑張って結果を出しているのは就活生だろ。それをさも自分の手柄みたいに言って。まあ、就活アドバイザーなんて所詮こんな奴しかいないんだ。
ほんとにどうして、こんな奴にのこのこついてきてしまったのだろうか。一瞬でも話を聞こうとしていた自分が恥ずかしい。これ以上話を聞く価値もない。
饒舌なぴいまんとなるべく目を合わさないようにしながら、かぼちゃは鞄に手をかけ立ち上がろうとする。
「いけませんねぇ、人の話は最後まで聞かなくては。そんなんだからこんな時期までNNT、無い内定なんですよぉ」
あからさまに挑発的な発言。そんなことは頭ではわかってはいても、自然とかぼちゃの動きは止まり、怨嗟を含む視線を男に投げつけていた。
「あんたに……あんたに何がわかるんだよ!」
自分でも思ってもないような大声が出る。店内にいる人たちの視線が集まるのがわかる。
「わかりますとも!」
男もかぼちゃに負けないほどの声量でそう返してくる。
「辛いでしょう。必要とされないのは」
いつの間にか男の顔には、薄気味悪い笑みが張り付いている。
「嫌いになったでしょう自分が」
男の目は笑っていない。触れればケガしてしまいそうな鋭さをもって、かぼちゃのことを真っすぐ射抜いていいる。
「大学生活を振り返れば、形のあるモノなんてほとんど手元には残っていない」
やめろ、言うな。
「長所は一個も見つからないくせに、短所だけはいくつも知っている」
うるさいうるさい。
「短所が長所? そんなわけないことくらい、痛いほど自分でわかっていらっしゃるでしょう」
黙れ黙れ黙れ。
「短所なんて、どんなに取り繕っても短所であることに変わりはないんですよ」
手を握りこみすぎて、指が痛い。
「気弱で、意志が弱く、にわか気質で、心配性で、頑固で人見知りで、視野が狭く、優柔不断でプライドが高く、ネガティブ思考で」
いつの間にか、僕が固く握っていたコブシは、ぴいまんの頬を殴りぬいていいた。
しかしぴいまんは動じた様子もなく続ける。
「それでいて短絡的だ」
かぼちゃを見つめる目は氷のように冷たかった。
「そんなあなたのあまりに多すぎる欠点がなくなるなら? こんなにいい話はないでしょう?」
ぴいまんがそう言いながら胸ポケットから取り出したのは、PTP包装シートだった。
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