2 / 14
シリーズ001
002
しおりを挟む
酒場の裏で、ライは壁にもたれながらフランソワーズが暴れているのを何ともなしに聞いていた。
「おや、ライ君。珍しいところで会いますね」
するとそこに、声を掛けてくるものが一人。出所は何故か井戸だが。
「……井戸から出てきといて何言ってんだあんた」
今出てきたのはこの町で情報屋を営んでいる現在男のセッタだった。現在というのは、彼自身の変装技術が高く、会うたびに男や女が入れ替わっているのだ。今は今朝に依頼を頼んできた時と同じ、黒の燕尾服を身に纏っているが、そいつが井戸から出てくるのが不思議でならない。
「そうでもないですよ。この町の地下水道を把握するために潜っているのですから」
「心を読むな。後魔王軍が水攻めしてきたら一発で終わるから、調べる意味ないだろうが」
一応、上流と下流に関所を設けているため、水辺からの侵入は今のところないだろう。それにもしあった場合、上流の関所を落としてすぐに無味無臭の猛毒を流すだけでこの町は全滅する。少なくともライはそう考えていた。
「そういえば、あんた今酒場にいる女のこと知っているか? 確か名前は……」
「フランソワーズ・ハイヒールですね。よく知っていますよ」
適当な硬貨をセッタに投げるライ。受け取るや、簡単に情報提供を始めてくれた。
「第何代かまでは把握していませんが、彼女も勇者パーティに参加していた実力者ですよ。通称『蒼薔薇の剣姫』、元騎士団のエリートです」
「どうりでお固い印象だと思った……」
ハア、と軽くため息をついてから、ライは壁から離れてセッタに背を向けた。
「俺が強いってわけでもないんだがな……」
「『能力』も実力の内ですよ、ライ君」
「……どうだか」
軽く肩を竦めてから、ライは酒場から離れて行く。
セッタもライの背中に軽く手を振ってから、この場を後にした。
「くそ、もうこれで三件目だぞ!」
思わず路地裏で毒づくライだが、服を着ながらなので情けないことこの上なかった。
酒場を後にしてから行きつけの娼館に入り、泡姫のソアラとソーププレイを楽しもうと服を脱ぎ始めた途端にどうやってかぎつけたのか、フランソワーズが娼館の中に突撃して来たのだ。しかし相手は生娘らしく、最初は情事の現場を見て顔を赤らめて逸らしてくれたので、服を持って即座に逃げられたのだ。
これで大人しく帰ればいいものの、ライ自身消化しきれない性欲には逆らえずに、最近通っているバーの店員ビクトリアを口説こうと高いボトルを注文。そしてボトルが届いた途端にまたあの女騎士が現れた。今回は脱いでいないので突撃してくるフランソワーズを回避するために仕方なく、また『能力』を使って逃亡。一滴も飲むことなく高いボトル代を消費する羽目になってしまった。
それでもめげずに、三件目と最近見つけた裏通りのマッサージ屋に入るライ。嬢のリーズと本番までの金銭交渉をしている間にもまたもや突撃を受けたので、再び『能力』を使って逃亡。今回はマッサージのみだったので前払いした分でいいとばかりに、そのまま姿を消したのだ。
流石におかしいと気付いたライは、服を着ながら身体中を調べてみたが、異常はどこにもない。
「魔法の形跡はない。異能持ち、って感じでもなかったんだがな……」
この世界において、誰かが何かの力に目覚めるというのは珍しくない。
とはいえ、能力自体は千差万別な上に、『本当に使える』という意味ではむしろ少ない位だ。なにせ、同じ『火を起こす』能力に目覚めていたとしても、マッチ棒の火から人間大の豪火球まで、人によって個人差がある。地域によっては『魔法』とも呼んでいるらしいが、実際の魔法は形態化された技術のことを指す。
そのため、大抵は『異能持ち』と、『本来ならば持ちえない異常な能力の持ち主』を指してそう呼んでいる。
余談だが、ライも異能持ちではある。能力自体を知っている者はごく僅かだが。
「となると一体誰が……って、あいつしかいないか」
ライは先程井戸から出てきた、燕尾服の男を頭の中に浮かべた。
「やろう、また面白がって俺の情報を売っているな」
「いえ、今回ばかりは冤罪ですよ」
ライはバックナックルの要領で、後ろに突如現れた燕尾服の男に殴り掛かった。しかし相手もさるもの、スウェーでかわした後に、バク転の要領で距離を置いてから、軽く服をはたいている。
「いきなり現れるなって何度言えばわかる!? あと冤罪ってどういうことだ?」
「もうしませんよ。全然驚いてくれませんしね。……私も最初は様子見も兼ねて売ろうと考えていたんですがね」
と、セッタは腕を組みつつ、話を続けた。
「どちらかというと彼女の情報収集能力の高さですよ。事前にあなたの趣味が女遊びだと調べていたんでしょうね。だからこの町のそういう場所全てを調べ上げてから、ライ君の通いつけを中心に探していたんですよ。おまけに勘もいいのか、すぐに当たりを引いているみたいでしたしね」
「勘弁してくれ……」
こうなってくると、他の店もマークされていると考えた方がいいだろう。
ライは服を着終えてから、顎に手を当ててどうしたものかと考え始めた。
「おや、ライ君。珍しいところで会いますね」
するとそこに、声を掛けてくるものが一人。出所は何故か井戸だが。
「……井戸から出てきといて何言ってんだあんた」
今出てきたのはこの町で情報屋を営んでいる現在男のセッタだった。現在というのは、彼自身の変装技術が高く、会うたびに男や女が入れ替わっているのだ。今は今朝に依頼を頼んできた時と同じ、黒の燕尾服を身に纏っているが、そいつが井戸から出てくるのが不思議でならない。
「そうでもないですよ。この町の地下水道を把握するために潜っているのですから」
「心を読むな。後魔王軍が水攻めしてきたら一発で終わるから、調べる意味ないだろうが」
一応、上流と下流に関所を設けているため、水辺からの侵入は今のところないだろう。それにもしあった場合、上流の関所を落としてすぐに無味無臭の猛毒を流すだけでこの町は全滅する。少なくともライはそう考えていた。
「そういえば、あんた今酒場にいる女のこと知っているか? 確か名前は……」
「フランソワーズ・ハイヒールですね。よく知っていますよ」
適当な硬貨をセッタに投げるライ。受け取るや、簡単に情報提供を始めてくれた。
「第何代かまでは把握していませんが、彼女も勇者パーティに参加していた実力者ですよ。通称『蒼薔薇の剣姫』、元騎士団のエリートです」
「どうりでお固い印象だと思った……」
ハア、と軽くため息をついてから、ライは壁から離れてセッタに背を向けた。
「俺が強いってわけでもないんだがな……」
「『能力』も実力の内ですよ、ライ君」
「……どうだか」
軽く肩を竦めてから、ライは酒場から離れて行く。
セッタもライの背中に軽く手を振ってから、この場を後にした。
「くそ、もうこれで三件目だぞ!」
思わず路地裏で毒づくライだが、服を着ながらなので情けないことこの上なかった。
酒場を後にしてから行きつけの娼館に入り、泡姫のソアラとソーププレイを楽しもうと服を脱ぎ始めた途端にどうやってかぎつけたのか、フランソワーズが娼館の中に突撃して来たのだ。しかし相手は生娘らしく、最初は情事の現場を見て顔を赤らめて逸らしてくれたので、服を持って即座に逃げられたのだ。
これで大人しく帰ればいいものの、ライ自身消化しきれない性欲には逆らえずに、最近通っているバーの店員ビクトリアを口説こうと高いボトルを注文。そしてボトルが届いた途端にまたあの女騎士が現れた。今回は脱いでいないので突撃してくるフランソワーズを回避するために仕方なく、また『能力』を使って逃亡。一滴も飲むことなく高いボトル代を消費する羽目になってしまった。
それでもめげずに、三件目と最近見つけた裏通りのマッサージ屋に入るライ。嬢のリーズと本番までの金銭交渉をしている間にもまたもや突撃を受けたので、再び『能力』を使って逃亡。今回はマッサージのみだったので前払いした分でいいとばかりに、そのまま姿を消したのだ。
流石におかしいと気付いたライは、服を着ながら身体中を調べてみたが、異常はどこにもない。
「魔法の形跡はない。異能持ち、って感じでもなかったんだがな……」
この世界において、誰かが何かの力に目覚めるというのは珍しくない。
とはいえ、能力自体は千差万別な上に、『本当に使える』という意味ではむしろ少ない位だ。なにせ、同じ『火を起こす』能力に目覚めていたとしても、マッチ棒の火から人間大の豪火球まで、人によって個人差がある。地域によっては『魔法』とも呼んでいるらしいが、実際の魔法は形態化された技術のことを指す。
そのため、大抵は『異能持ち』と、『本来ならば持ちえない異常な能力の持ち主』を指してそう呼んでいる。
余談だが、ライも異能持ちではある。能力自体を知っている者はごく僅かだが。
「となると一体誰が……って、あいつしかいないか」
ライは先程井戸から出てきた、燕尾服の男を頭の中に浮かべた。
「やろう、また面白がって俺の情報を売っているな」
「いえ、今回ばかりは冤罪ですよ」
ライはバックナックルの要領で、後ろに突如現れた燕尾服の男に殴り掛かった。しかし相手もさるもの、スウェーでかわした後に、バク転の要領で距離を置いてから、軽く服をはたいている。
「いきなり現れるなって何度言えばわかる!? あと冤罪ってどういうことだ?」
「もうしませんよ。全然驚いてくれませんしね。……私も最初は様子見も兼ねて売ろうと考えていたんですがね」
と、セッタは腕を組みつつ、話を続けた。
「どちらかというと彼女の情報収集能力の高さですよ。事前にあなたの趣味が女遊びだと調べていたんでしょうね。だからこの町のそういう場所全てを調べ上げてから、ライ君の通いつけを中心に探していたんですよ。おまけに勘もいいのか、すぐに当たりを引いているみたいでしたしね」
「勘弁してくれ……」
こうなってくると、他の店もマークされていると考えた方がいいだろう。
ライは服を着終えてから、顎に手を当ててどうしたものかと考え始めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
無属性魔法しか使えない少年冒険者!!
藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。
不定期投稿作品です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる