人妻と付き合っています。(R15版+性描写)

桐生彩音

文字の大きさ
10 / 20

010 屋上で考え事をしています。

しおりを挟む
「いい天気だな……」
 放課後。公彦は学校の屋上にいた。
 危険なので普段は立ち入りを禁止されているが、正当な理由があれば鍵を借りることができる。今は美術部の活動中である萌佳が許可を取り、キャンパスに風景画の下書きを描いている。
 コンクール用の抽象画がしっくりこないらしく、今日の萌佳は気晴らしに別の絵を描いているらしい。公彦はその様子を眺めながら、屋上の落下防止策にもたれかかっていた。
 天気は快晴。しかし、公彦の内情はどこか晴れないでいる。
(未晴さん……)
 未晴とクラブやホテルで過ごした時間を思い出してはみるものの、浮かぶのは今まで見たことのない旦那のことだった。
(でも旦那さん、なんで連絡しないんだろう……)
 ホテルからの帰り道、未晴から聞いた旦那との現状を公彦なりに考えてはみたものの、何かがおかしかった。
 生活費を常に振り込むのは分かる。収入が途切れれば、それを理由に浮気を言及されてしまうからだ。しかし、その上で連絡をしないのはどういうことだろうか。
 連絡をしない、もしくはほどんとなくなるのは他にすることがあるか、興味が逸れているかの二択だ。そのため、連絡が途切れるというのも浮気のサインとなる。
 だから未晴の旦那が浮気を疑われないようにするには、生活費を振り込みつつも、連絡を絶やさないよにしなければならない、はずだ。
 しかし結果はどうだろう、旦那は生活費を振り込むだけで連絡一つ寄越さない。それどころか、メッセージアプリを確認している様子すらない。
 何らかの事件に巻き込まれた、とかではないと思う。それなら会社から連絡があるはずだ。連絡がない以上、少なくとも所在は把握していないとおかしい。
「いや、待てよ……」
 そもそも、未晴の旦那の仕事とは何か。
 公彦が未晴から聞いているのは単身赴任しているということだけ。仕事の詳細は知らないが、それでも一つだけ、疑問に思うことがある。
「……何で単身赴任しているんだ?」
 今、未晴が住んでいるのは公共住宅、低所得者向けの賃貸物件だ。
 そこまでいい仕事ではないだろうが、わざわざ旦那だけ単身赴任する必要があるのか。未晴は仕事をしていると言っても、アルバイトだからいくらでも融通は効くはずだ。
 短期間だけかとも考えたが、それなら未晴が寂しがるのはおかしい。単身赴任が終わるその日まで待てばいいのだから。
「何かあるのか……?」
「公彦君……どうかしたの?」
 気がつけば、萌佳が公彦の前に立っていた。
 一纏めにされた画具を見ると、もう下書きは終わったのだろう。公彦はなんでもない、と手を振って応えてから、立ち上がって軽く身体を伸ばした。
「ん、くぅ……終わったのか?」
「うん、一通り」
 気がつけば、陽光に赤みが差している。日暮れの近い証拠だ。
「私は職員室に鍵を返してから、部室に寄って帰るけど、公彦君はどうする?」
「ちょっと用事を思い出したから、校門のところで待っているよ」
 そう言って、公彦は萌佳と共に屋上から降りて行った。
 職員室へと向かう萌佳と別れた公彦は、そのまま校舎を出て高校の敷地から外へと出た。ただ電話をするだけなら美術部の部室でもいいのだが、内容が内容だけに、人に聞かれるリスクは可能な限り避けたい。
「この辺りでいいか……」
 公彦はスマホを取り出すと、ある人物に電話を掛けた。
「ゴロウさん、今いいですか?」
『……どうした?』
 公彦が電話を掛けたのは、バイトの雇い主であるゴロウだった。
『金が必要なのか? 悪いがバイトの予定はないぞ』
「いえ、違います。ちょっと人を紹介して欲しくて……」
『人?』
 電話越しに不思議そうな声が聞こえてくる。
 公彦は周囲に視線を巡らせてから、聞き耳を立てられていないことを確認してから、ゴロウに本題を話し始めた。
「ゴロウさんの知り合いで、探偵とか人探しが得意な人って、いませんか?」
『人探し? それは何人かいるが……どういう事情だ?』
「ちょっと気になる人がいまして……」
 それを聞いて、ゴロウは少し考えてから、言葉を続けた。
『この後いつもの所に来い。詳しい事情はそこで聞く』
「ありがとうございます。では後で」
 スマホの通話を切った公彦は、片付けを終えて出てくる萌佳を待った。
 少ししてから出てきた萌佳と帰宅した公彦は、そのまま家の中へと入っていく。
「ぼちぼち片付けないとな……」
 家には誰も居ない。
 せっかくの一軒家にも関わらず、人の気配がまったくない空間を歩き、階段を登って自室へと入る。クローゼットの奥から小型だが頑強な造りの手提げ金庫を取り出し、ナンバーを合わせて鍵を外すと、中には分厚い札束が詰められていた。
「これもそろそろ隠さないとな……」
 ほとんど帰宅しないとはいえ、人の出入りのある自宅に多くの現金は置けない。手提げ金庫一つなら『大事な物を仕舞っている』とでも言ってごまかせるが、二つも三つもあると不審がられてしまう。
 だから公彦は手提げ金庫の中身がいっぱいになると、別の場所へと隠すようにしていた。今隠しているのは一個だけだが、二個目ももうすぐ一杯になるので、三個目を購入しなければならない。
 ただ、しばらくはまだ持つだろう。
「相場としては二、三十万か?」
 一先ずは、と三十万円程を金庫から抜き取り、十万円を財布に仕舞うと、残りを鞄の中に入れた。いつもの配達用ではなく、プライベートで使っているボディバッグだ。
「こんなものだな……よし」
 金庫を閉じ、ダイヤルをデタラメに回してから、再びクローゼットの奥へと仕舞い込んだ。
 そして公彦は制服から着替えると、隣家の萌佳達に気づかれないように外へと出た。



「ゴロウさ~ん、いますか~」
「ちょっと待ってろ、すぐ行く」
 そして出てきたゴロウは、一先ず座れ、と玄関口の縁に腰掛けるように指差した。公彦もそれに従い、二人並んで向かい合う。
「人を探すって、何かあったのか?」
「どこから話していいものか……」
「……最初から話せ。事情が分からなければ紹介のしようがない」
 公彦はゆっくりと、未晴とのことを話し始めた。
 ナンパから始まり、その後よく一緒に遊ぶ仲にはなったものの、連絡のない旦那のことで寂しくしていることを伝え終わると、ゴロウは頭を抱えながら、思わず呟いた。
「人の女に手を出すか、普通……」
「今のところ、ただの遊び相手ですよ」
「……それで、旦那を見つけてどうするつもりだ?」
 ゴロウの問いかけに、公彦は居住まいを正してから答えた。
「個人的に気になるんですよ。なんで連絡一つ寄越さないのか。それに……」
「……女が寂しそうにしているのが気に入らない、か。お前、いちいち人に構っている余裕があるのか?」
「それはゴロウさんのおかげで」
 再び漏れ出てくる溜息。ゴロウは少し考えてから、懐からガラケーを一台取り出した。ボタン操作で番号を指定すると、そのまま通話ボタンを押して電話を掛けた。
「俺だ。この前みたいに人探しのバイトをする気はないか? ……そうか、分かった。いや、今回は堅気カタギだ。詳しいことはまた後で連絡する」
 一度通話を切ると、ゴロウはまた別のガラケーを取り出し、それを公彦に手渡した。
「そいつが持っている携帯の番号だけ登録してある。電話させるから依頼内容を正確に伝えろ。全部終わったら返さずに、砕いて捨ててくれればいい。料金は携帯込みで最低でも二十万円、後は向こうとうまく交渉してくれ」
「ありがとうございます」
「これくらいなら別にいいが……ただ、覚悟はした方がいいぞ」
 公彦は一度頷いてから、ゴロウに頭を下げ、そして背を向けて去っていった。



「ただの浮気で済めばいいんだがな……」
 公彦が帰宅した後、ゴロウは再びガラケーを操作しながら、こう呟いていた。
「……どうもきな臭い」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

処理中です...