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第三シリーズ

002 訪問

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 ドンドンドンドン…………
「クロ~ちょっと出て~」
「うん……ふぁぁ」
 一般人の活動時間である昼日中、布団にくるまって寝ていたリナは、突然の訪問者が鳴らしているノックに嫌気が差し、隣の布団で寝ていた青年に声をかけた。
 元ホームレスの青年、クロは飼い主であるリナの命令に忠実に従い、欠伸を噛み殺しながら布団から起きあがった。寝癖だらけの髪に頓着せず、チェーンがかかってることを確認してからドアノブを握る。
「どちらさ」
「リナ起きろ一大事!!」
 玄関のドアを開けたクロに構わず、赤いメッシュを入れた少女、ミサは隙間から部屋の奥に届くように叫んだ。



「う~ん……あと3時間」
「起きろこの昼夜逆転女!!」



 ミサの声も届かず、リナは布団の奥深くへと潜り込んでいった。それで埒があかないとみるや、今度はクロの方を向く。
「ちょっとあんた、今すぐリナを叩き起こして!!」
「と言われても……」
 流石にクロは悩んだ。
 散々世話になっているご主人様を勝手に起こしていいものかと。下手したら食事えさ抜きになりかねない。
 そこでようやくこの家の人間関係を思い出したのか、ミサは代案を即座に思いつき、実行に移そうとした。
「わかったもういい。……そのかわり下がってて」
 何をする気かは知らないが、いやな予感がした。
 言われたとおりに玄関から離れたクロを確認して、ミサは一歩下がった。そして、一息に身体を捻り、
「……らぁっ!!」
 びゃきゃっ!!!!
 鋭い回し蹴りをドアに叩き込み、蝶番を全て弾き飛ばした。本来開く側はチェーンにより固定され、逆に開いたドアをくぐる。
「えっ、なにちょっ……!!」
 土足のまま乗り込んだミサは、慌てて起きあがるリナの右手首を正確に踏みつけ、身体を屈めて顔だけを近づけた。
「起きろおら一大事だっつってんだろこら」
「分かったから足降ろして、靴脱いでくれないミサ……手が痛い」
 眠い頭を揺らしながら、右手に握っていた小型の自動拳銃を元あった枕元に置いた。
「で、なによもぉふぁぁ……むぁら就寝時間じゃない」
「だぁから一般人の活動時間だっつってんだろこのバカ女」
 伸びをするリナを放置し、ミサは玄関に戻ってようやく靴を脱いだ。その様子を見て、クロは思わず呟いた。
「……銃に関してはスルー?」
「元々知ってたし、武器が違うだけで、修羅場の数はリナの比じゃないのよこちとら」
 立ち上がって腰に手を当てたミサは、クロを見上げながらも、堂々と啖呵を切った。



「元暴走族ヘッドの女、舐めんな!!」
「……………………………………え?」



 珍しく驚いてるな~とリナは遠巻きにクロの顔を見つめながら思った。
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