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シリーズ003
008 今日、初めて『勇者』を見た
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「ミーシャさん、来てくれて嬉しいです!」
「ハァイ、勇者様。思ったより元気そうね」
宿についた私は、豪華な外見にちょっとビビりつつもどうにか受付を済ませ、ディル君のいる部屋に通された。元々話は通っていたらしく、特に揉め事もなかったので、リナとはその時点で別れている。
しかし……無駄に豪華な部屋に住みやがって。
「にしても、いい部屋に住んでいるのね。勇者様」
娼館のベッド数台分の大きさがある寝床の上で、ディル君は横になっていた。しかも部屋の広さはそれ以上で、ベッドの他に応接用のテーブルセットにフカフカソファ、執務机すら出版社の備品よりも明らかに高級品だと分かってしまう。
一泊いくらするのか、ハッキリ言って聞いてみたい気もするけど、聞きたくもない。
だって、旦那が新婚旅行代わりに奮発して借りてくれた宿の部屋(そこで処女切った)よりも豪華だとしたら、経済格差に思わず暴れかねない。いろんな意味で。
「どうせ寝泊まりするだけだから、僕はギルドの個室でいいって言ったんですけど……」
要するに見栄えとかの為に、勇者特権でこの宿取らされた、ってわけか。
旦那の時は私と住む為に借家に住んでたけど、もしかしたらこの手の宿屋に泊まれてたのかな?
「その分、勇者としての仕事はきっちりこなさないといけないから毎日大変で……」
「そう……それなら、いつもお疲れ様」
まだ着替えてないが、私はベッドの上に身を乗り出し、ディル君の額に唇を落とした。そのままおでこを重ねて、簡単に熱を測る。
「うん、大丈夫そう。でも今日はゆっくりめで、ね」
「はい、ミーシャさん……」
さて、と……まずは着替えますかね。
すっごい今更だけど、それでも恥ずかしいから、と着替え用の衝立に隠れる。しかしサービス精神は忘れない。ブラウスを脱いでも畳まず、衝立の上にかけた。
「ミーシャさぁ~ん」
「はいはい、ちょっと待っててね勇者様」
洗濯物が増えるからブラ代わりに巻いていたサラシを解き、その上からナイトドレスに頭を通す。下着は替えてないので、後はスカートを落とすだけで完成だ。
「さて、と……」
パンツはそのままなので、着替える必要はない。
衝立の陰から出てきた私に、ディル君の視線が突き刺さるがいつものことなので無視。というかこちとら娼婦だ、見られるのが仕事だっての。
「じゃあ勇者様……」
だから見られながらベッドへ向かうのも、いつものことだった。
「今日はベッドの中で」
それなのに、
シーツの中からいきなり飛び出してきたディル君に、私は押し倒されていた。
「えっ、勇者さ」
「ミーシャさんそのまま伏せててっ!」
返事をする間もなかった。
身を翻したディル君は私に背を向けて庇いながら、いつの間にか手にしていた短剣を不意の侵入者に対して振るっていた。
「気づいてんじゃねえよ!」
「あんな殺気ダダ漏れで無茶言わないでよっ!」
ディル君の蹴りが侵入者の腹部に飛ぶ。しかし攻撃は空を切り、足を戻して膝立ちになった。身を低くしているのは多分、伏せている私を庇うと同時に、相手の攻撃に対して狙われる面積を少しでも減らそうという狙いからだろう。
似たようなことを前に、リナから聞いたことがある。
『飛び道具相手にするなら、身体隠すか小さく丸まって的を小さくしないと危ないんだよね~、要するに、逃げる時は隠れながらの方がかえって安全』
だからディル君は、私の前から離れられないんだ。
……私を守る為に。
「ったく……おい、その女渡せ。そうすりゃ見逃してやる」
「……え、僕じゃないの?」
私も思った。
しかし相手は意外にも、肩をガクッと落としていた。ここにいるのはペリの勇者と一介の娼婦だってのに。前回みたいに勇者狙え勇者。
「ミーシャさん、相手に覚えは?」
「ううん、ない」
今回ばかりは流石に覚えがない。いや、前回も似たようなものだが。
そもそも、そりゃあ人に恨まれるようなことは……やってないとは言えないけども、相手は完全に初対面、覚えがないっての!
「ペリの勇者を差し置いて、ミーシャさんを狙う理由は何だ!?」
ディル君が侵入者に問いかける。
その侵入者は見たこともない服装をしていた。近いのは私が娼館とは別に務めている出版社の編集長様ことイレーネ・シーゲルの格好だ。スーツ仕立てだが明らかに私が着るような着古しとは生地が違う。この辺りの人間が着ているようなものじゃない。
そして侵入者はディル君の問いかけに、悠々と答えた。
「なるほど、てめえが跡取りか……だったら知っているだろう。先代勇者のジョセフ・ロッカのことは」
また旦那か!? 死に際に何やらかした!?
「ハァイ、勇者様。思ったより元気そうね」
宿についた私は、豪華な外見にちょっとビビりつつもどうにか受付を済ませ、ディル君のいる部屋に通された。元々話は通っていたらしく、特に揉め事もなかったので、リナとはその時点で別れている。
しかし……無駄に豪華な部屋に住みやがって。
「にしても、いい部屋に住んでいるのね。勇者様」
娼館のベッド数台分の大きさがある寝床の上で、ディル君は横になっていた。しかも部屋の広さはそれ以上で、ベッドの他に応接用のテーブルセットにフカフカソファ、執務机すら出版社の備品よりも明らかに高級品だと分かってしまう。
一泊いくらするのか、ハッキリ言って聞いてみたい気もするけど、聞きたくもない。
だって、旦那が新婚旅行代わりに奮発して借りてくれた宿の部屋(そこで処女切った)よりも豪華だとしたら、経済格差に思わず暴れかねない。いろんな意味で。
「どうせ寝泊まりするだけだから、僕はギルドの個室でいいって言ったんですけど……」
要するに見栄えとかの為に、勇者特権でこの宿取らされた、ってわけか。
旦那の時は私と住む為に借家に住んでたけど、もしかしたらこの手の宿屋に泊まれてたのかな?
「その分、勇者としての仕事はきっちりこなさないといけないから毎日大変で……」
「そう……それなら、いつもお疲れ様」
まだ着替えてないが、私はベッドの上に身を乗り出し、ディル君の額に唇を落とした。そのままおでこを重ねて、簡単に熱を測る。
「うん、大丈夫そう。でも今日はゆっくりめで、ね」
「はい、ミーシャさん……」
さて、と……まずは着替えますかね。
すっごい今更だけど、それでも恥ずかしいから、と着替え用の衝立に隠れる。しかしサービス精神は忘れない。ブラウスを脱いでも畳まず、衝立の上にかけた。
「ミーシャさぁ~ん」
「はいはい、ちょっと待っててね勇者様」
洗濯物が増えるからブラ代わりに巻いていたサラシを解き、その上からナイトドレスに頭を通す。下着は替えてないので、後はスカートを落とすだけで完成だ。
「さて、と……」
パンツはそのままなので、着替える必要はない。
衝立の陰から出てきた私に、ディル君の視線が突き刺さるがいつものことなので無視。というかこちとら娼婦だ、見られるのが仕事だっての。
「じゃあ勇者様……」
だから見られながらベッドへ向かうのも、いつものことだった。
「今日はベッドの中で」
それなのに、
シーツの中からいきなり飛び出してきたディル君に、私は押し倒されていた。
「えっ、勇者さ」
「ミーシャさんそのまま伏せててっ!」
返事をする間もなかった。
身を翻したディル君は私に背を向けて庇いながら、いつの間にか手にしていた短剣を不意の侵入者に対して振るっていた。
「気づいてんじゃねえよ!」
「あんな殺気ダダ漏れで無茶言わないでよっ!」
ディル君の蹴りが侵入者の腹部に飛ぶ。しかし攻撃は空を切り、足を戻して膝立ちになった。身を低くしているのは多分、伏せている私を庇うと同時に、相手の攻撃に対して狙われる面積を少しでも減らそうという狙いからだろう。
似たようなことを前に、リナから聞いたことがある。
『飛び道具相手にするなら、身体隠すか小さく丸まって的を小さくしないと危ないんだよね~、要するに、逃げる時は隠れながらの方がかえって安全』
だからディル君は、私の前から離れられないんだ。
……私を守る為に。
「ったく……おい、その女渡せ。そうすりゃ見逃してやる」
「……え、僕じゃないの?」
私も思った。
しかし相手は意外にも、肩をガクッと落としていた。ここにいるのはペリの勇者と一介の娼婦だってのに。前回みたいに勇者狙え勇者。
「ミーシャさん、相手に覚えは?」
「ううん、ない」
今回ばかりは流石に覚えがない。いや、前回も似たようなものだが。
そもそも、そりゃあ人に恨まれるようなことは……やってないとは言えないけども、相手は完全に初対面、覚えがないっての!
「ペリの勇者を差し置いて、ミーシャさんを狙う理由は何だ!?」
ディル君が侵入者に問いかける。
その侵入者は見たこともない服装をしていた。近いのは私が娼館とは別に務めている出版社の編集長様ことイレーネ・シーゲルの格好だ。スーツ仕立てだが明らかに私が着るような着古しとは生地が違う。この辺りの人間が着ているようなものじゃない。
そして侵入者はディル君の問いかけに、悠々と答えた。
「なるほど、てめえが跡取りか……だったら知っているだろう。先代勇者のジョセフ・ロッカのことは」
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