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シリーズ003
010 隠し事はバレるもの
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「ミーシャさんっ!」
慌てて入ってくるディル君を眺めながら、私の思考は別のことに割かれていた。
「良かった無事でっ! 今護衛の人が戦ってくれているので、今のうちに近くの宿にいるカリスさんに連絡を……」
そこから先の言葉はなかった。私が持っている一枚の絵を、ディル君も見てしまったからだ。
よくよく考えてみれば、おかしな話だった。
勇者の仲間は、勇者が選ばれた後から集められているけど、その中に、次の勇者候補が混ざっていてもおかしくない。ましてや、全滅もあり得る冒険者業で、勇者達だけが無事だという保証はどこにもないのだ。
だが逆に言えば、勇者が死んでもその仲間が無事だった、なんて状況もあり得てしまう。
「ねぇ、勇者様……」
私は、手に持っていた絵を、ディル君に向けた。
「……これ、どういうこと?」
なにより……私が『ジョセフ・ロッカの嫁』だって言われても、ディル君が疑問を持った様子は一切なかった。つまり、知っていたのだ。
だから、こんな絵が、
私の旦那とディル君が一緒に写っている絵が、存在しているのだ。
「知ってたの……?」
「っ!?」
ディル君は、答えなかった。
今はリナが侵入者の相手をしてくれているが、相手が強い可能性だってある。他に敵が来て、私を襲う可能性だってある。
それでも、私は口を止めなかった。
「私が前の勇者の嫁で、今は旦那が死んだから生きる為に娼婦やってるって、ずっと知ってたの……?」
今は身を起こしている。床の上にべたりと腰掛けている私は、ディル君の方を向いていた。いや、我が事ながら本当に見ているのかも怪しい。
今も私は、何を考えているのかが分からないのだ。そもそも、この考えは本当に正しいのか。でも、証拠が一つ出てくると、次々と考えてしまう。
たとえば、私のことを旦那から聞いていたのかもしれない。
たとえば、旦那の墓参りにニアミスしていたかもしれない。
たとえば、私を心配してみていたのをフィンさんに連れられて娼館に来たのかもしれない。
たとえば、たとえば、たとえば……
「ミっ、ミーシャさ」
「――」
言葉はなかった。
何を言ったのかは分からない。何をしていたのかも分からない。
ただひたすら、ごちゃ混ぜになった感情を相手にぶつけて、部屋を飛び出して……
「ああ、疲れた……ってミーシャ?」
……気がつけば、リナの胸元で泣いていた。
後から考えれば、別に旦那の知り合いだって隠していたことを、私に責める資格はない。私だって面倒だから旦那とのことを隠していたのだし。そもそも国だって、私のことは知っているだろうから、そこから知っていてもおかしくなかったのだ。
だけど、けれども、いや、それでも、今の私は、どうすればいいのか分からずに、娼館のベッドで寝ていた。
お願いだから、死んだ後も面倒起こさないでよ。
恨んでやるからね……ジョー。
慌てて入ってくるディル君を眺めながら、私の思考は別のことに割かれていた。
「良かった無事でっ! 今護衛の人が戦ってくれているので、今のうちに近くの宿にいるカリスさんに連絡を……」
そこから先の言葉はなかった。私が持っている一枚の絵を、ディル君も見てしまったからだ。
よくよく考えてみれば、おかしな話だった。
勇者の仲間は、勇者が選ばれた後から集められているけど、その中に、次の勇者候補が混ざっていてもおかしくない。ましてや、全滅もあり得る冒険者業で、勇者達だけが無事だという保証はどこにもないのだ。
だが逆に言えば、勇者が死んでもその仲間が無事だった、なんて状況もあり得てしまう。
「ねぇ、勇者様……」
私は、手に持っていた絵を、ディル君に向けた。
「……これ、どういうこと?」
なにより……私が『ジョセフ・ロッカの嫁』だって言われても、ディル君が疑問を持った様子は一切なかった。つまり、知っていたのだ。
だから、こんな絵が、
私の旦那とディル君が一緒に写っている絵が、存在しているのだ。
「知ってたの……?」
「っ!?」
ディル君は、答えなかった。
今はリナが侵入者の相手をしてくれているが、相手が強い可能性だってある。他に敵が来て、私を襲う可能性だってある。
それでも、私は口を止めなかった。
「私が前の勇者の嫁で、今は旦那が死んだから生きる為に娼婦やってるって、ずっと知ってたの……?」
今は身を起こしている。床の上にべたりと腰掛けている私は、ディル君の方を向いていた。いや、我が事ながら本当に見ているのかも怪しい。
今も私は、何を考えているのかが分からないのだ。そもそも、この考えは本当に正しいのか。でも、証拠が一つ出てくると、次々と考えてしまう。
たとえば、私のことを旦那から聞いていたのかもしれない。
たとえば、旦那の墓参りにニアミスしていたかもしれない。
たとえば、私を心配してみていたのをフィンさんに連れられて娼館に来たのかもしれない。
たとえば、たとえば、たとえば……
「ミっ、ミーシャさ」
「――」
言葉はなかった。
何を言ったのかは分からない。何をしていたのかも分からない。
ただひたすら、ごちゃ混ぜになった感情を相手にぶつけて、部屋を飛び出して……
「ああ、疲れた……ってミーシャ?」
……気がつけば、リナの胸元で泣いていた。
後から考えれば、別に旦那の知り合いだって隠していたことを、私に責める資格はない。私だって面倒だから旦那とのことを隠していたのだし。そもそも国だって、私のことは知っているだろうから、そこから知っていてもおかしくなかったのだ。
だけど、けれども、いや、それでも、今の私は、どうすればいいのか分からずに、娼館のベッドで寝ていた。
お願いだから、死んだ後も面倒起こさないでよ。
恨んでやるからね……ジョー。
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