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第一章 富田沙織の物語 盆踊り

カナダ美人を手配しましょう

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 鈴木商会総支配人の、鈴木順五郎氏に茜さんから通信が入ったのは午後四時前。

「お珍しいですな、美子様が?それで好きにさせろ?」
「しかしそうなると『例の事』が起こりますが、よろしいのですか?」
「誘惑できるほどの女なら、かなわない?サリー様も了承済み、そうですか」

「お聞きしますが、結果的にナーキッドが女を薦めることになっても?」
「えっ、チャンスを利用しても構わない、わかりました、幹部会に私から連絡しておきます」

 ……チャンスだ!
 もうこうなったら、止められないのは誰でも分かる。
 何も知らない女より、ナーキッドの息がかかっている女の方がベターなのは当然。

 美子様に献上できれば、ナーキッドはネットワーク審議会内での力が向上する。
 その上ここは日本、時間は後一時間、動けるのは鈴木商会しかないが……

 デビッドソンもロッシチルドも、これ以上日本の女が増えるのは望むまい……ならば残るは……とりあえず協議するか……

 鈴木順五郎氏は、ナーキッドの緊急幹部会をテレビ会議で開いたのです。

「ご配慮、痛み入る、とにかく時間が無い、鈴木順五郎氏には、なにかお考えがあるのかな」
 ロッシチルド財閥の、ネイサン・ロッシチルド氏が口を開きました。

「いま、マルスの自治政府の中で、寵妃が一人もいないのはカナダ地域のみ、アイスランドはエール様、バレアレスにも、アマゾネスのベネデッタ・アルクーリを転籍させると、サリー様より聞きました」

「カナダの女が献上されるなら、誰も文句をいえない、そしていまトウキョウには、カナダのインターナショナルスクールが、田園調布の近く自由が丘にある」

「しかもミッション系で最近男子部と女子部に分離した、さらに駐日カナダ大使館の職員に、美女がいる」

 デビッドソン財閥のジョン氏が、
「その大使館員は聞いている、王立カナダ騎馬警察出身だ」
「たしかイギリスのブレンダと顔見知りのはずだ」
「容姿だけなら、美子様の女には、なれる」

「時間がない、それで行こう、カナダ自治政府には知らせておく、参加の命令が出よう」
「美子様と面と向かって出会えば、どんな女も下着がずれる、望まない女などいない」

 午後四時半、トウキョウの駐日大使館に訓電が届き、すぐにクローイ・アルダーソンが呼ばれます。

「私が日本の盆踊りに?なぜ?」
「鈴木商会より、ナーキッドのオーナーが、この盆踊りにお出ましになるとの情報が入った」

「カナダ人のお気に入りの女性が出ないかと、政府は常々考えていたので、このチャンスを逃すわけにはいかない」

「そのため急遽、自由が丘にあるプリンスエドワード・インターナショナルスクール高等女子部の生徒を、参加させることになった」

「鈴木商会がこの盆踊りの後援なので、後出しだが、招待状を受け取り、参加の返事を出した事になる」
「会場までは鈴木商会が手配する、貴女はその生徒を引率して、ナーキッドのオーナーに引き合わせて欲しい」

「オーナーの側には、この顔写真の女性が常にいるとのこと、富田沙織という富田貿易の社長令嬢だ」
「勿論オーナーに『証文』を差し出した我妹子、寵妃の一人だ」
  
 その写真には、優しそうな顔をした、上品な女性が写っていた。

 クローイ・アルダーソンは、顔見知りのブレンダにすぐに電話をしてみました。
 ブレンダが、ナーキッド関係者と知っていたのです。

 幸いに繋がって、
「珍しいわね、一年ぶりね、どうしたの?」
 と、聞いてくれました。

「えっ、オーナーと……それについては助言出来ないわ……でも、会えば女の下着はずり落ちる、そういう事よ」
「もっとも、私も望んで誘惑したけどね、後は言えないわ、恥ずかしいなんて思っていたら無理よ」

 ブレンダは、クローイの大怪我の内容を知らないのです。
 一年前に落馬による外傷性の子宮破裂、子宮全摘による腹部へのかなり酷い手術跡があります。
 落馬のトラウマの為に、王立カナダ騎馬警察を退職、日本地域にある駐日大使館の職員となったのです。

 子供は望めない身体、しかも人工肛門となっています。
 女性ホルモン投与は必須の身体なのです。

 午後五時には、クローイ・アルダーソンは、プリンスエドワード・インターナショナルスクール高等女子部の生徒たちと一緒に、会場に着いたのです。

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