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第一章 シェリルの物語 母娘の絆

デヴォン島直轄領

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 クイーンエリザベス諸島デヴォン島……
 カナダの北極圏に浮かぶ面積約55,000キロ平米の世界第27位の島です。
 九州より五割ほど、四国の三倍ぐらい……
 冬はマイナス50度になる島です。

 オルメカの軍用兵舎を流用し、半地下都市として、ひと月で作られたクイーンエリザベスシティを中心に、いくつかの半地下の町が点在しています。

 食糧製造工場と、エネルギー供給の受電施設があり、あったかな公共施設もあり、町々には道路と小さな鉄道が走っています。

 それにここには、トウモロコシからのバイオ燃料の製造施設が三か所、小笠原からのマグマ発電の電力を受ける施設もあります。

 小笠原と違い、バイオ燃料によるマイカー所有が認められており、夏には人々がピクニックなどに繰り出していきます。

 冬は長いですが、各地の町はドーム都市でもありますから、普通の冬服で十分です。

 ここは庭付き一戸建ての自宅も多々ありますし、農家も多数散在しています……
 基本的には半地下住宅で、環境ドームと呼ばれるもので覆われています。

 環境ドームとは、透明で北極圏の淡い光と熱を蓄積して、エネルギーなど使わずに、冬でも内部環境をニューヨークやボストンあたりの、氷点下四度から五度程度まで緩和します。

 この環境ドームの外皮は、極めて滑りよいもので、鳥さえも滑ってしまうので、とまろうとはしません。

 各地を結ぶハイウェーも、環境ドームに覆われており、時々雨が降ると、天井が開き路面を洗ったりします。
 でも外気温が氷点下になると、路面凍結しないようにドームは開きません。

 郊外の庭付き一戸建ての環境ドームハウスは、基本的には、このハイウェーにどこかでつながっています。
 厳寒期でも、孤立はしないようになっています。

 デヴォン島は、小笠原に比べれば田舎が漂いますね。

 冬はデヴォン島にとって、ちょっとした観光季節でもあります。
 去年、小笠原から、オーロラを見に大量の観光客が来たそうです……

 もっともカムチャッカ直轄領の方が、観光地としてはベストなのでしょうが……

 しかし避暑地としての、夏の方がよいでしょうね。
 島の中央にある、ホートン・インパクト・クレーターは直径23Kmの湖で、何もない荒涼とした湖ですが、夏季には湖畔でキャンプなどができます。

 グローリアの家は、デヴォン島の中心都市、クイーンエリザベスシティにあります。
 グローリアはミコの側女であり、それゆえにナーキッドのデヴォン島管理官の立場にあります。
 側女は金貨8枚、年収1200万円で、それほどお金持ちとはいいませんが、ハイクラスの生活はできます。

 クイーンエリザベスシティの住居地域は、高層マンションで三十階建……その八階から上がマンションになっていますが、八階から上は環境ドームを突き抜けています、なので窓などは夏しか開けられません。

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