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第四章 志玲の物語 交渉術

端島中華特別行政区

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 月見の宴は、夜半まで続きました。
 その後、ミコは芙蓉と志玲を連れて、端島の南西、三ツ瀬岩礁にある『三ツ瀬賓館』に……

 今夜は志玲の番に変更されていたのです、このようなことは良くあることで、順番が本来の志玲の番までずれたのです。

 この劉一族に与えられた『端島』とは、端島とその隣の中ノ島、そしてこの三ツ瀬岩礁の三つより成り立っており、それぞれは地下海底坑道を、大拡張した通路でつながっています。
 通路には動く歩道が設置されています。

 三ツ瀬岩礁にある『三ツ瀬賓館』は、『端島』における唯一の宿泊施設、端島住民のお祝い事などで、良く使われており、小笠原からのビジネス客も、ここに泊まります。
 三ツ瀬岩礁にある唯一の建築物です、但し地下は別ですけどね。

 『中ノ島』には、小学校があります。
 グランドもあればプールもあります。
 小さい関帝廟と孔子廟まであります。

 『端島』の中の交通機関は、全て動く歩道、ムービングウォークと呼ばれるものになります。

 地下に縦横に張り巡らされているムービングウォーク網には、全て段差はありません。
 同一レベルになっています。

 ポイントごとに乗り換えとなっており、そこには地上に出るための、エレベーターが接続しています。
 『端島』はほとんど十階以上の、高級高層アパートメントで埋め尽くされていますが、地下は小笠原と同様に公共施設や商店街となっています。

 ここにも独身者用の居住地区があります、この地下都市が、本来の『端島』なのです。
 端島ステーションもここにあります、ここには小さいながら、穀物や野菜の栽培工場もあり、最大で一万名分は、文句をいわなければ、まかなうことが可能です。

 なお、この地に有った端島神社、墓地などは全て硫黄島に移設されています。

 『端島』の直接管理は、そのほかにも、第一海保、第二海保、第六台場、それに大阪の友ヶ島、そして中国大陸の香港の一部。

 それぞれに、シャトルのステーションが作られていますが、すべての外周は海岸より切り離されており、海岸から侵入は出来なくなっています。
 内部からしか、出入りできないようになっているのです。

 香港も同様で、元香港啓徳国際空港跡地を、九龍半島から切り離し、小さい島状態になっており、当然ですが海岸から侵入は出来なくなっています。

 正式には香港啓徳台場、ただここと、第六台場にだけは橋が架かっており、四級市民に対するナーキッドの東アジアの窓口となっているのです。

 東京湾の第一海保は、対岸の富津洲と陸続きになっていましたが、きれいさっぱり切り離されています。
 これらの地域を総称して、テラの一級市民の間では、『端島中華地区』と呼ばれているのです。

 とくに三ツ瀬賓館は、テラの一級市民が本格的な中華料理を食べられる、唯一といってよいホテルです。
 結構な人気なのですよ。

 端島の直接管理地は、島なのですが海には入れません。
 端島管轄の全ての島の海岸線は、高い護岸に囲まれてり、さらにはフェンスも設置されています。

 風は吹き抜けても、人間は侵入できないのです。
 冷たい事ですが、この近くで人が助けを求めても、助けにも行けないのです。
 もっとも、近寄れもできないでしょうが。

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