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第九章 軍事組織

日本の少女達

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 各国大使の夫人など、大量の叔母様がたが、お茶を飲んでいます。
 その中には、とても幼い少女もいます。
 どう見ても日本人に見えます。

 日本人らしき少女は三名いました。
 私にはこの三名が誰だかわかります。
 多分、明治四年の、北海道開拓使の女子留学生でしょう。

「ロックフェラー夫人、日本の少女が見受けられますが?」
「主人が呼んだようです、幼いのに家を離れて不憫と、主人は思ったようで、気晴らしになるようにと……」

「そうですか……私は別の意味があるのかと……」

 ?

 まあ、ロックフェラーさんの、男気を評価しましょう。

 アフタヌーンティーが終わり、いわゆる『ご歓談』の時、日本の少女をつれて、ロックフェラー夫人がやってきました。
「アリアンロッド様、健気な少女を紹介したいのですが」

「アリアンロッド様、お目にかかれて幸いです」
 日本の少女たちは、喪服の私にこわごわと、挨拶をしてくれました。

 仕方ないですか、私の周りには、軍服姿の女が三名もいますしね。

「綺麗な英語ですね、でも、お国の言葉は大事にしてね」
 と、日本語で言いました。

 すごく驚いた顔をしましたが、
「アリアンロッド様はどこで日本語を?」
 と、最年長の娘さんが聞きました。
「習ったわけではないですよ、私は日本人でもありますから、でも日本国の人間ではないのですけど」

 ここから再び英語でしゃべりました。
「留学は大変でしょう、よろしければブラックウィドゥ・スチーム・モービルが後見いたしますよ」
「ロックフェラーさんに、お願いしておきますから」

「ブラックウィドゥ・スチーム・モービル?あの大会社ですか?」
 と、先ほどの娘さんが聞きます。

 ロックフェラー夫人が、
「アリアンロッド様はブラックウィドゥ・スチーム・モービルの社主ですよ、イギリス王族のおひとりで、バロネスであられますよ」

「イギリスに遊びに来なさい、歓迎いたしましょう、世界を見ることはいいことですよ」
「ロックフェラー夫人、手配してくださらない」

「それから貴女たちには、ブラックウィドゥ・スチーム・モービルから、奨学金を出してあげましょう」
「これからも勉強を頑張ってくださいね、なにか私に望みでもありますか?」

「いいなさい、アリアンロッド様にお願いできるなんて、滅多にないのですよ」
 と、ロックフェラー夫人が勧めます。

「では、空飛ぶ船に乗ってみたい」
 明日から西部に飛ぶのですが……その前に乗せてあげますか……ワシントン上空の遊覧飛行……
「ロックフェラー夫人、ご家族もこのお礼に招待しましょう、明日朝九時に、この三人も引き連れて、飛行場へ来てください」

 この後、長々とリップサービスを続け、八時にホテルへ戻りました。

 翌日、朝から遊覧飛行、少女たちのはしゃぐこと、結局、昼までかかりました。
 そしてネヴァン号は西部へ向かいました。

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