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第五章 フィオナの物語 神の花嫁

皆様に迎え入れられて

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「東京へ着いたわよ」
 茜の声に我に返ったフィオナ、あまりの刺激に興奮しているのです。

「勉強、どうだった?」
「はい……良かったです……」
「あのようなことが神の花嫁の奉仕なのよ、出来る?」
 うなずくフィオナ。

「キムさんはどう?」
「やって……みます……」
 もじもじしながら、キム・バルヒェットが答えていました。

 二人は茜と一緒に東京ハウスへと、たどり着いてすぐに、美子さんが会ってくれます。

 二人は言葉もありません、美しい……茜さんよりもさらに威厳があり、そしてすがりつきたくなるような優しい雰囲気、威厳と慈愛が美の上に両立している……女神さま……

「二人とも、とりあえずは夜の仕事はいいわ、これを差し上げましょう、まぁマリッジリングと思ってね」

 二人は恭しく指輪を受け取ると、素直に指につけました。
 
 その後、東京ハウスのパーティーに招待された二人、大都市東京を流れる、墨田川に浮かぶ川舟、メンバーの中にはロシアの大公女やイギリスのプリンセス、日本の公爵令嬢などが、庶民の中に混じっています。

 生まれて初めて、アメリカ以外の土地でのパーティーへの出席、二人のために、特別のアップルサイダーも用意されていました。
 周りの雰囲気に飲み込まれるように、二人は歌を歌います。

 TURKEY IN THE STRAW……

 ミコさんにリードされながら、一緒に歌った二人、フィオナは歌などというものは、賛美歌しか知らなかったのです。

 ミコさんのリードで何とか歌い始めると、多くの皆さんが、歌に合わせて踊ってくれました……
 それがなぜか嬉しくて、自分が迎え入れられた感じがしたのです。

 マリッジリングといわれた指輪をつけると、いろいろな情報が頭の中に入ってきます。

 この指輪が采女の指輪と呼ばれ、フィオナはその采女といわれる階級にあること、自分の身体が活性化して美しくなっていること、アイスランド語が難なく話せること、そして神の加護が、フィオナを守ってることなど……

 二人はしばらく、東京ハウスに住まうことになりました。
 ミコさんがしばらく東京に滞在すると聞き、お願いした結果です。

 東京ハウスでの、大宴会の翌日の日曜日、二人にとってはこれまた驚きの連続、朝食ですが和食は……特にフィオナは卵かけご飯にはカルチャーショックを受けました。

「ねぇ、キムさん、生卵って大丈夫なのかしら、私、どうにも食べられそうにないわ……」
「私はそれより、この豆の腐ったものはどうにも……NAATOOていうものなのだけど……」

 二人が固まっていると鈴木聡子さんが、
「大丈夫、二人には別メニューよ、アーミッシュの朝食ってどんなのか分からないけど、アメリカのモーニングを用意したわ、焼き方などの好みは今日は我慢してね」

 で、ライ麦パンのトースト、ソーセージとベーコン、目玉焼きはエッグスオーバーミディアム――卵をフライパンで裏表を焼きし、黄身は半熟とする――とサラダ、そしてオレンジジュース……

 食事は景山京子さんという方が、作っているそうですが、とてもおいしいものでした。

「おいしそうね♪私も食べたいわ♪」
「ミコさま!どれだけ食べているのですか?たしか三杯食べていませんか?」
「いいじゃないの!私目玉焼き好きなのよ!」
「もう、お腹壊しますよ」 

 この後、目玉焼きをゲットして、さらにご飯を二杯食べていました。
 まずは半熟部分をご飯にのせ、醤油をかけて食べ、白身だけでさらに一杯、卵一個でご飯は二杯食べなくてはいけない、これがモットーのようです。

「まったく恥ずかしい……」
 茜さんに、相当にいじられていましたが、朝食の場はミコさんの振る舞いで、明るく楽しい場になったのです。
 
 ワイワイとした雰囲気に引きずり込まれ、フィオナもキムも出されたものを完食、トースト一枚、余分に食べてしまいました。
 
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