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第三章 エッダの物語 招待状

ヘディの溺愛 其の二

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 ……たしかにとんでもない美人集団だわ……ディアヌ・ロッシチルドだって、そのお淑やかさは有名よね。
 誰もが妻にしたがったはず、求婚を片っ端からけっていたので有名よね……

 でもこの女たちは次元が違う、しかもエッダの話を聞けば多士済々、これはいけないわ……
 このメンバーの中では、ミコ様の寵愛という意味では心もとないわ……せめてもう少し、大人の女の魅力をつけさせなければ……
 
 !

 そうだわ、明後日、夏の舞踏会フェット・アンペリアルがあったわね、招待状などなかったけど、何とでもなるわ。
 エッダに社交界デビューをさせて、人との付き合い、あしらいを覚えさせなくては……

「ねぇ、あなたダンスはできたかしら?」
「たぶん踊れると思うわ、チョーカーをつけているので、そのあたりは困らないと、エール様が云っていたから」

「エール様?」
「名前のとおりの方らしいわよ」

 ……エールって、たしかユダヤの女優が云っていたわね……神の名前って……
 とにかくダンスはできるようね……ハスプブルク・ロートリンゲンの名前で、フェット・アンペリアルの招待状を取り寄せて見せるわ!

「ねえ、せっかくだから、お休みの間に夏の舞踏会に出ない?」
「明後日フェット・アンペリアルがあるから、私もお父様も、あなたのドレス姿を見たいの」

「でも……私はミコ様の女、お許しが……」

「聞いてみてくれる、お母様のお願い」
 で、電話をかけてみると、ディアヌさんがでて、
「舞踏会?ミコ様に聞いてみます、あっ、よいそうですよ、私に任せるってね、お母様に代わってくださる」
 どうやらミコさんが、近くにいたようです。

「ご無沙汰しています、ディアヌです、ミコ様に置かれましては、舞踏会の件は了承されました」
「殿方と踊るのも、かまわないとの事です」

 ヘディはここで、何かしらヒヤッとするものを感じました。
「ディアヌさん、忠告をいただけないかしら、恋愛はご法度でしたわね」
「いまさらですが、『殿方と踊るのもかまわない』とのお言葉の裏は、何かしら?」

「ミコ様のお言葉は額面どおりです、ただ私が思うには、ミコ様は私たちをお抱きになり、少なくとも私とアリシアは、ミコ様に最後まで付き従う覚悟を固めております、どんなご命令でも従うつもりです」

「私たちはそれなりに人生経験があり、その上の覚悟なので、ミコ様も致し方ないと、思われておられるようですが、お嬢様の場合は若い」
「処女をささげさせたとはいえ、まだ引き返すことも可能、女性の普通の幸せ、恋愛、青春を謳歌させたいと、一度もらされていました」

「病気の治療の代価は、ヴァージンをささげさせたので、相殺してもよいと、ミコ様はどこか男のような考えをなされます」
「女の本当の気持ちは、女なのに理解されておられないようです」

「……女は床をともにして、心底恋をするというのに……エッダも女になった以上は、例外ではないのですけどね……」
「分かりました、ダンスの相手は私が決めましょう、恋する対象ではない殿方をね、人のあしらい方を学ぶにはもってこいかもしれないわね」

「そうされることをお勧めします」

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