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第二十三章 ロマニア大公国の姫
06 指輪
しおりを挟むアナスタシアさんが、
「儀式は終わりました。アンさん、このアムリア帝国第一皇女たる、このアナスタシアが母親がわり、仲良くいたしましょう。」
そしてレイラさんに、
「引き続きアンの侍女を務めてくれますか?」
レイラさんが、「よろこんで」と答えます。
私はアンさんに、
「アンさん、貴女はまだ幼い、よんどころ無い理由で私の佳人となりましたが、一つ言っておきます。」
「貴女は自由です。もし誰か好きな人ができるとか、佳人が嫌になるとかしたら、躊躇なくいってください。」
「私は拘束などいたしません。」
私はアンさんに渡すものがあります。
「アンさん、こちらへ。」
「アンと呼び捨ててください、姫さま。」
「アン、私からのプレゼントです。私が知っている世界では婚約するとその証として指輪を贈ります。」
「アンは私の佳人、つまり婚約したようなもの、この指輪を受け取ってください。」
「この指輪には一つの力があります。」
「キリーの町を知っていますか?念じればこの指輪がキリーの町にある私の館、通称、亡霊の館と言うのですが、その中のイシュタルの部屋へでます、何かの時に役にたつでしょう。」
「この館にはサリーさんの妹の、マリーさんが管理人としています、貴女の部屋も用意いたしましょう。」
「私の愛人に準じる扱いをしてくれるはずです。」
「また一人、女性だけですが、引き連れることができます。レイラさんをお供につれて、移動できるでしょう。」
「私の愛人の方は七人です、この方たちとは仲良くしてください。」
「アンさん、皆を紹介します。まずは指輪に念じてみてください。」
亡霊の館には、ダフネさんとアポロさんが待っていてくれました。
ビクトリアさんも小雪さんもアリスさんも待っていてくれました。
「皆さん、アンさんです。そしてこちらは侍女のレイラさんです。」
「アンと申します、さきほど佳人の儀式は済ませました、よろしくご指導願います。」
皆さん、良い印象をもったようです。
アポロ執政が、
「アン大公女、イシュタル様は色魔ですから、契約にこだわることは無いですよ。なんならすぐにボーイフレンドを紹介しましょうか?」
「いえ、私はジャバ王国の税金より買われた身、まだ八歳ですが、イシュタル様にお仕えすることの義務ぐらいは承知しています。」
アポロさんが笑って、
「さすがはロマニア大公国のアン大公女、とても八歳とは思えぬお言葉、感心しました。」
「これからは表立っては、ジャバ王国公館がカルシュでの貴女の後ろ立てです。よく指示しておきます。」
「アリスさんより大人に見えますね。」
皆が笑います、一人を除いて。
ダフネさんも、
「何かあれば、教団領公館にも駆け込んでも良いですよ。」
「ありがとうございます、大賢者様。」
あまり長く居られないので、皆が仲良くなったのを確認して、帰ろうとした時、ビクトリアさんが、
「そろそろ私もあるじ殿と一緒にいたい。」
と云い出しました。
小雪さんも、
「同じ思いです。サリーさんだけ抜け駆けしたのですから、私たちも抜け駆けしようと相談していました。」
サリーさんが「申し訳ありません」と、平謝りです。
ダフネさんが、
「その件については、そろそろあの出来事の影響も薄れた気がします。」
「要はこの世界の者だけなら、なんら心配はないのです。で、折角アポロ執政と顔を合わせたので話をしました。」
「まぁ皆さんが、カルシュで巫女様と一緒にいるのには、構わないだろうと、意見が一致しました。」
「ただし半分ずつに分けて、片方は公館に、もう片方は巫女様と一緒に女子寮に、そして入れ替えるという方法です。」
「でなければ私も含めて、我慢できなくなりますので。」
「アンさん、大賢者たる私、ダフネも巫女様の愛人の一人なのです、よろしく。」
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