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第二十五章 黒の巫女の降臨

11 真に守護するのは我らである

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「源兵衛さん!」
「私の頭の中で何を呟いているのですか?」

「マスター、お願いがあります、私は性別がありませんが、できましたら、女性として扱っていただきたい。」
「べたな関西弁で喋るからですよ、でも何故です。」

「私も小雪みたいに、官能を体験してみたいと考えるからです。」
「くだらない戯言は、聞きたくありませんね。」
「極めて真摯なお願いですが?」

「いま私自身のアンドロイドを計画しています、マスターはどのような美女をお望みですか?」
「抱かれて愛される身体にしたいと考えています。」

「頭が痛くなりました。」

「ところでマスター、黒の巫女になられたことをお祝いします。」
「お目出度いといいたいのですか、それは違うでしょう?」
「なぜですか?」

「白々しいですね、これから茨の道が待っていることぐらい、十分承知ではないのですか、源兵衛さん。」
「貴方達が私に、このことを強要したともいえるのですよ。」

「そのことに対しては、確かに原因は当方にありますが、しかし女の色香に迷って選択したのはマスターでしょう、女性は得ですね?」
「皮肉屋さんだったのですか。」

「まぁ、言葉遊びは、この辺でお終いとしてマスター、真面目な話として、先程マスターの宣言を聞きましたが、大変な危険が伴うのは承知ですね。」

「マスターにお教えした魔法は、私にとっても掟破りなもの、局所的ではありますが、マスターの世界の物を作り出すことができます。」
「主席と呼ばれる者は、マスターの世界を知りません、いよいよの時は仕方ありません、盛大にお使いください。」

「源兵衛さん、私は覚悟を固めています、貴方たちの望みではなく、私の望みとしてエラムを救いたいのです。」
「このままいったら、たしかに人の滅亡の予感がします、貴方達の危惧が、間近に迫っているようです。」

「穏やかな死と呼べばいいのでしょうか、活力が無くなって行くでしょう。」
「エラムの人は、たしかに考えるということが不得意なのです。」

「これから、貴方の力を借りる時が多くなるでしょう、貴方は私にとっては、とっておきの手です、頼りにしています。」

「マスター、頼りにしてくれて結構です、私は全力でマスターの力になりましょう。」
「ありがとう、源兵衛さん。」

 マスターの思考が去っていく、一抹の寂しさを感じる。
 頼りにしています……か。
 とにかくマスターの望みに貢献して、新たな身体に御褒美をもらうとしよう、その日が楽しみだ。

 さぁ、私の分身たる小さき者たち、魔法の糧よ、主の覚悟を聞いたであろう。
 主の周りは鍵の守護者が守るだろうが、真に守護するのは我らである。
 遥かな昔、この惑星を主の御手に差し出したように、今また、我らの力を欲しておられるのだ。

 第二部 黒の巫女編 FIN
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