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第五十五章 黄泉比良坂(よもつひらさか)

分かっていても踊ってしまうでしょう

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 ふ・ふ・ふ……笑えてきました。
 全く、造化三神のどなたか知りませんが、よくもここまでシナリオを書かれること……
 分かっていても踊ってしまうでしょうが……

「六号機械、私がイザナミを直してあげましょう」
「そしてヨミの全軍団を復活させてあげましょう」
「イザナミはその代価として、私の女になってもらいましょうか、そして私に忠誠を誓ってもらいましょう」

「それが……ルシファーの本音……」
「そう、本来の汝らの主である私に使えるのは当然、バアル・ゼブルはそれを値踏みするために、命を賭けたのですから」

「……やはり……バアル・ゼブル様は正しかった……慧眼だった」
「ふん、女好きなだけですよ」

 今度は六号機械が笑いました。
「イザナミ様は美女ですよ、そして心底お優しい」
「今まで無理して、強い女を演じてられましたが、本当は手弱女(たおやめ)なのですよ」

「きっと内心は、誰かに頼りたかったと私は思います」
「それにほとんどのヨミの住人は、主たちに仕えるために作られた者たち、仕えるということは、昼も夜もですから」

 この者共は、主である女性体に奉仕するために作られた。
 つまり男に抱かれるようには作られていない。
 よってそれを強要されるのは、彼女たちには苦痛そのもの、だからイレギュラーが発生した……
 でもそれなら……ヨミは巨大なビアンのハレム???

 この上、このハレムを引き取るの?……エエトコどりではダメなのでしょうか……
 これでもか、と好物を並べられると……ため息がでます。

「さて、本音のうちの本音を言わせてもらいましょうか、六号機械、貴女は信じられるのですか?」
 そう、死を覚悟している敵を、どう信じればいいのか、それが問題です。

 しばらく六号機械は考えていましたが、
「貴女は私のデーターをサーチできるでしょうから、心を見ていただくのがベストでしょうね、貴女の本音を私は信じるしかありません……どうぞ、心を覗いて下さい」

 そういって六号機械はナイフを取り出し、自らの胸を突き刺しました。
 たしかに稼働中のアンドロイドの心は、その者の主観に影響されますからね、真実は難しいのですが、しかし、こうまでされると。

 やれやれ……サーチは不要でしょうね……この女、信じましょうか。

 私は私の専用のナノマシンを増殖させます。
 その昔、薫さんが私のために作ってくれたナノマシン……
 いまでは改良に改良を重ね、局所防御空間を作る優れもです。

 私は修復のイメージを発動します。
 六号機械って貧乳ですね……しかもお尻も薄い……良くいえばスレンダー

 機械体アンドロイドを治すというか、修理するというか、とりあえずは簡単です、かなり単純な回路です。
 あっという間に六号機械の修理が終わりました。
「心は覗いていません、自らの行動で、私の信頼を勝ち得たのです」
「さて六号機械、誰から直しましょうか、貴女の考えを云いなさい」

「まずは一号機械から五号機械までを修理するのがベストかと、それからイザナミ様の修理を……」
「その前にこの爆睡中の美女二人、なんとか起こしていただけますか?」

 小雪さんと深雪さんが目を開きます。
「おはよう?朝ですよ……」
「マスター……私、寝ていましたか?」
「すっきりしたでしょう」

「そちらは?」
「イザナミの使い、今からヨミを占領しに行きます」

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