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第五十七章 ささやかな夏休みの旅行

道中

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 五人でドライフルーツをかじりながら、トランプなどしましたね……
 ポーカーですが、この手の遊びは、圧倒的に私は強いのですよ。
 博打系のカードゲームで、私に勝てるものなんていないのよ!

「お嬢様、ポーカーは卑怯です、駆け引きでお嬢様に勝てるほど、悪辣な女はいませんから!」
 サリーさんの申し出で『ババ抜き』をすることに……古いルールで行いました、クィーンを一枚外します。

「これならマスターの心理戦はあまり関係ありませから、それにいかず後家は、マスターに決まっていますから!」

 目にもの見せてあげるわ!
「ミコ様、またお嫁に行けないのですね!」
「あれ、お嬢様、お弱いですね」
「またいかず後家ですかぁぁぁ」

 連戦連敗……何で……四人にコケにされて……
 うぅぅぅ……悔しい……

「もう絶対、ババ抜きなんてしない!」
「私はまたやりたいですね、ねぇ皆さん」
 サリーさん、勝ち誇った顔で云ってくれました。
 なぜかスピンクスが同じようにうなずきます。

 スピンクス!あなた、サリーさんのところの子になりなさい!

 トランプのお陰で、あっという間に惑星アールヴヘイムンのステーションに着いてしまいました。
 テラ時間では深夜ですが、ここでは早朝です。
 スジャータさんが待っていました。
「お忍びとのことで、お出迎えは私一人です、惑星アールヴヘイムンへ、ようこそミコ様」

「今回は一切の公的行事はなしです、報告も不要ですよ」
「でも間違い無しに目立ちますよ、王女を従えているのですから」
「ウルヴァシーさん、里帰りを許可します」
「嫌です」
 間髪入れず答えました。

 スジャータさんが、
「サリーさま、すこしお話が……」
 耳元で何か囁いています。
 サリーさんは頷いて、
「それがいいですね」なんて云っています。

「ウルヴァシーさん、里帰りしてきなさい、私たちはカウラパパのコテージにいきますので後で来なさい」
「サリー様がそうおっしゃるなら……カウラパパですか……あそこは新婚旅行の聖地ですね」

 スジャータさんが、
「カウラパパというのは、ウルヴァシーの国にある、最高峰の山の東面にある崖の名前です」
「だいたいテラでいえば、三千メートルはありますか、そこに執政官の別荘があります、温泉付きですよ、景色も絶景です」

「警備の問題で選んだの?」
「それもありますが、あの場所はアールヴヘイムンでも最高の絶景地、朝は眼の下に雲海がながめられますし、夜は首都の夜景が見えますよ。

「すぐ近くには町があります、フロッグという町ですが、カウラパパ観光の町として有名です」
「おもちゃのような蒸気機関車を使用する登山鉄道が、首都から町まで伸びていますので、ミコ様はそれにお乗りになれば、人々とのふれあいも可能でしょう」

「ただ容姿がアールヴヘイムンの者とは違いますので、執政官の世界の人間ということにするしかありません、ならば執政官の別荘にいるのは、理屈ではあります」

 各国の首都にある、執政官の連絡事務所は、相互に転移できるようになっています、ウルヴァシーさんの国にはそれを使いました。

 その首都とは、スジャータさんによって破壊された元の首都ではなく、王国第二の都市で臨時首都だそうです。
 その登山鉄道の始発駅に五人で立っていました。

「王女様だ!」、ざわざわと周りの人々が噂します。
 すぐに警備兵が三人ほど走って来ました。
「そこの警備兵、私が誰かわかりますか?」
「王女様であられます」

「ではこの方たちを警備して下さい、見て分かるでしょうが執政官の世界の方です、事は重大ですよ」
「わかりました!万全を尽くします!」
 その男は、
「すぐに警備司令部に連絡をとれ、増援を要請せよ」

「では私は登山鉄道の切符を買ってきます」
 ウルヴァシーさんが切符を買いに行き、そして戻ってくる頃には、二十人ほどの警備兵が走って来ました。

「父に会ってきます、後でカウラパパのコテージにいきます、登山鉄道、楽しんでくださいね」
「警備主任、後は頼みましたよ、それと物々しい事は遠慮しなさい」

「それは警備を最優先した次の話と、理解させて頂きます」
 これは頭の硬い者にぶち当たったみたいですね……

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