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第五十二章 キンメリアの夜は我が手に

01 海の女

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 キリーの町です、今日は大変です。
 通販カタログから栄養ドリンクを買いましたね、ダースで必要かも……

 源兵衛さんがちゃちゃをいれてきます。
「種がないのに種付けですか?」
 頭にきますね……

「じゃあ私を男に戻してくれれば、いいではありませんか?」
「それは私にはできませんし、多分マスターをここへ呼びし者も、無理だと考えます。」
「ただし、相手に子をなさせることはできますよ。」
「それどういうことです?」

「マスターなら相手の子宮に魔力を及ぼして、卵子を分裂させることができましょう?」
「処女懐妊、単性生殖というやつですか?」

「その通り、でも女性しか生まれませんし、遺伝子の複製となりますがね、ある意味、マスターは人類を増殖させることが可能です。」
「でもその結果はおわかりですね、もっとエラム的に、さらにエラム的に、ということですよ。」

 これ以上、女ばかりの世界を作り出すなんて、ゾッとしますね。
「べつに悪くはないのではありませんか、男は戦いばかりしますから、陰湿でも、女ばかりなら破壊的にはならないでしょう?」

「なるようになるものではありませんか、そもそも何をもって、女ばかりの世界を否定するのですか、進化の正常な過程ではないと、だれが決められるのですか。」
 確かにそうですが……

「マスターが望まれれば、このエラムを、そのように変えることもできるのですよ。」
 ちょっと待ってください、エラムを変えることもできる、ということは前にだれかがしたのですか?
「……」
 だんまりですか?

 どうも源兵衛さんは確信に触れると、だんまりを決め込みます、どうやら本当に覚えていないようです。
 なにかのロックがかかるみたいで、保護プログラムあたりでしょうね、今の私には、解除のすべがありませんが……

 とにかく今はギルベルトさんです。
 サリーさんが云うには、真昼間からベッドタイムということですが、本人はどう思うでしょう。

「待っていた!」
 本人はやる気満々でした。
「ギルベルトさん、海上封鎖は良いのですか?」

「無粋な、仕事は完璧にこなしている、この時を待っていたのだ。」
「私を捧げるのは、イシュタル様ただ一人と、思っているのだ。」

 男らしいギルベルトさんですね、でも誘う姿は妖艶です。
 ちょっと細長の大きな目と、赤い大きめの口が、細面の顔から私を誘っています。
 強引に口づけの嵐をくれました。
 昼食抜きで、お茶の時間まで汗まみれです。

 マリーさんが顔を赤らめながら、もじもじとやってきて、
「お食事がまだなのですが……」
 私は噴きそうになりました。

 マリーさん、可愛いですね、ネメシスでも癒しの姫でしたね。
 子供たちに慕われていました。

 けだるそうなギルベルトさんは、マリーさんがいても一向に気にしません。
「マリーさん、いたのか、のどが渇いた。」
 マリーさん、あわてて水を持ってきました。

 ギルベルトさん、仁王立ちして水を飲んでいます。
「シャワーを浴びて軽い食事にしましょう、昼はとうに過ぎましたし、その後、チョーカーをつけてもらいます。」

 ギルベルトさん、赤石のチョーカーをつけて嬉しそうにしています。
「これで私は支配される者、イシュタル様の奴隷……」と。
 嵐のようにギルベルトさんが来て、帰って行きました。
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