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第五十三章 黒の巫女は戦い続ける
04 生き残りたいのです
しおりを挟む源兵衛さん、魔法の封印を解いてくださいな……
もう脳内麻薬が効かないのですが……
手の指が粉砕骨折しているようで、だんだん激痛がきます。
それに多分、足の腱が切れてかけているような感じもします。
全身から血が流れているようです。
魔法が効き出して、身体の治療が始まっても、命が削られてしまったような感じがして、完治するのか自分でも分かりません。
どうも肉体以外に、精神というのか、魂が怪我をしたような不思議な気分がします。
だめですね、これは……
……いや、戻らなければ……約束したのですから……サリーさんや皆さんの顔が……
源兵衛さんが実体化します。
「マスター、すぐに……」
相変わらずですね、機械がうろたえてどうするのですか?
「大丈夫です、アテネさんが戻るまで、ここで待ちましょう。」
「私はあまり歩けそうにありませんし、実体化したといえど、貴女には戦闘力がないでしょう。」
「でも、そうもいかないようですね、ほら、主席の親衛隊が来たようです。」
私は立ち上がりました。
もうすぐ腱が切れるのではないでしょうか、体重をかけると激痛が走ります。
魔法も枯渇しているような気がしますが、電撃杖を取り出すことができました。
彼らは主席の遺体を認めると、
「黒の巫女様、主席の仇を取らせていただきます、お覚悟を!」
そう簡単には死にませんよ。
「あの世への供を命じます、露払いしなさい。」
そう言うと、私はあらん限りのイメージを集めて、『サンダーイン』ととなえ、雷撃を放つことができました。
かなり弱っていますが、それでも三十人ほどは倒したでしょう。
第二撃、第三撃と徐々に威力が弱まっています。
敵は近づいてきます。
もはや白兵戦となりますが、この身体では長く持たないでしょうね。
しかしベストを尽くしましょう。
「この首、簡単には差し上げませんよ、心してかかってきなさい。」
私は死力を振り絞って、杖で戦います。
身体に叩き込んだ杖道が、こんなに威力を発揮するとは……
頭を割られた者などが、累々と横たわっています。
ついに足の腱が切れました。
それでも片足で立ちながら、電撃杖で戦っています。
その後、十人ほど倒したのでしょうか、もう本当にこれが最後です。
死力を振り絞って雷撃を放ちます。
それは私の命を籠めたような物、青白い光が杖の上に輝くと雷鳴が轟きました。
そして杖の先から、光の束が渦巻き状にほとぼり出ました。
それは生き物のように、敵を貫き始めました、光の蛇がのたくっています。
そして敵は沈黙しました。
私はもう動けません、息をするのも傷が疼きます。
そこへさらに敵がやってきました。
通りかかった警備の兵士のようですが、私を見つけました。
片手はまだ動きます、何とか自分でけりをつけますか……
この身を穢されるのは本意ではありませんし……
私は隠し持っていたコルト・ベスト・ポケットという、25口径の女性用の小型護身用拳銃を取り出しました。
たしか六発でしたか、五人ほど一緒に死んでもらいましょうか。
私は、近づいてきた兵士に向けて発砲しました。
一人また一人、三人倒したところで、急に兵士たちがバタバタ倒れ始めました。
「イシュタル様!」
アテネさん、間に合ってくれたのですか。
ここからアテネさんの奮戦が始まりました。
一人で孤軍奮闘、数十人を一人で相手にして、全身、血に染まりながらも斬り伏せました。
「イシュタル様、もう大丈夫です、敵は蹴散らしました。」
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