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第五十三章 黒の巫女は戦い続ける
09 明日をつくる黒の巫女さん
しおりを挟む「まだ続きがあります、通販カタログ以外にも、マスター個人が物品を取り出せるのを、不思議と思われていますね、この際ご説明しておきます。」
「このカタログ類は、マスターの知識よりカタログ化されているのです。」
「私はマスターの世界を詳しくは知りません、『しもべ』が転移のおり、マスターに詰め込んだ、マスターの世界の知識より作成されています。」
「マスターの知識は、非常識なほど膨大なのです。」
「マスターご自身が、認識されてなくてもです。」
「通販カタログ以外で、マスター個人がカタログより取り出せるのは、ご自身の精神エネルギー成長の結果、可能になったのです。」
「精神エネルギーは、物質の素粒子を操作できますが、しかし気をつけてください。」
「大きい物や複雑な物を取り出すと、精神エネルギーの消耗は激しいですよ。」
「死にはしませんが、それでも非常にお疲れになるし、今回のように足腰立たなくて、いわゆるマスターがおっしゃる、羞恥地獄が再現されることになります。」
「それからここが肝心ですが、マスターに仕える者は命をかけています。」
「今回のようなことが起これば、それこそ必死に看護するのです。」
「主として、マスターはその者にたいして責任があります。」
「この責任も、どんどん成長しているのです、このことを常に心にとめ置かれてください。」
「一つ教えてください、私の近頃の『成長』というものは、なにが原因なのですか?」
「マスターの思われている通りです、闘争です。」
「たとえれば、マスターが命をかけて、何事かを成し遂げられると、古い器は壊れ、新しく大きな器となると、考えられればよいでしょう。」
「先の動乱と内乱で、マスターは文字通り死闘を演じました、結果は巨大な物です。」
「このエラムの名実ともに、主となられました。」
「このあたりで十分でしたが、いままたさらに死闘を演じられ、マスターの成長は、私の計算を凌駕しています。」
「したがって、今後はご自身で自らを、コントロールしていただかなければなりません。」
「よくよく身を慎みください。」
一日外出するのは控えましょう。
極小肝っ玉しか、持ち合わせていない私は、落ち込んでしまいました。
だってそうでしょう、これは恐ろしいことです。
闘争の果てに成長する私、それと共にエラムを支配する私、この全世界を私が背負う重荷、投げ出したくなってきましたが、でも私がなにもしなかったら……
このエラムに、明日はないかもしれません、たとえ主席がいなくても、活力のないこのエラム……
ただ与えられることを、待つしかできない人々……
なにも見下しているわけではなく、客観的にみてもこのままではじり貧です。
安らかな安楽死へ向かって、歩んでいるのです。
私をここへ呼んだ存在は、この状況の打破を望んでいたと思えるのです。
たしかにエラムは動きだしています、でも私というエンジンがなければ、どうなるのでしょう……
待ちのエラムは再び待ちつづけ、じり貧、安楽死……
たとえは悪いですが、エラムはワン君なのです、このワン君は主人を待ち望んでいたのでしょう。
待望のご主人は理想的な主人……
ちぎれるほどに尻尾を振って、お腹をみせて、忠誠を示してくれるのです。
主席が正しいのかも……
いけません、この考えには、もっと根本的なことが落ちています。
『人として生まれたなら、人として生きれる』ということです。
このエラムが、たとえ進歩がなく、このままでは、じり貧安楽死だとしても、逆らう自由はあるのです。
私はそのために頑張っているのでしょう?ヴィーナスさん。
貴女の愛する人々の、明日のためにがんばっているのでしょう?
ガルダで死んだ万余の兵士は、貴女のその心意気に殉じたのでしょう?
ここで『けつ』を割ってどうするのですか?
貴女が化け物でも独裁者でも、何でもいいではありませんか、明日をつくりましょう、黒の巫女さん。
応援ありがとうございます!
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