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第五十四章 北の戦い

09 カールおじさん

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 シュヴァルツヴァルト市は私に忠誠を誓いました。
 レムリアはそのまま存続を許されると、市長がそれを宣言しました。

 安堵のため息とともに、町は落ち着きを取り戻し出します。
 他の諸都市も、首都シュヴァルツヴァルトに習います。
 また取りあえず、シュヴァルツヴァルト市長を、都市連合の行政代表に任命しました。

 私は自らピエールさんの司令部へ転移して、シュヴァルツヴァルトの全面開城を伝えました。
「終わりました、エラムの戦いは終わりました。」
「しかし私たちが軍事占領するのは、控えようと思います。」

「遠征軍の司令官としては異議はありませんか。」
「私は異議はありません、我らは黒の巫女様に忠誠を誓う軍人、異議など論外です。」

 私は捕虜としていた、敵の司令官、元第四軍団長を呼びました。
 捕虜の最高位の軍人として、この司令部で丁重に席を温めてもらっています。
「戦は終わりました、もう十分でしょう。」
「レムリアのために、力を貸してくれませんか?」

 第四軍団長が口を開きました。
「敗残の将に何用か。」
「レムリアの治安をお任せしたい、シュヴァルツヴァルト市は私に忠誠を誓いました。」
「レムリアのあるじに、私を推戴するそうです。」
「……」

「私の部下はどうなるのか?」
「そのままレムリアの兵士です、退役したいものは退役すればいいし、兵役を続ける者は続けてください。」
「これからのレムリアは、主席がいないだけです。」

「巫女様がとってかわるというわけか?」
「そうです。」

「……」

 第四軍団長が、
「戦いに負けたとはいえ、キンメリアには膝を屈したくはない。」
「しかし巫女様ならば忠誠も誓える、たしかにレムリアのあるじになられるのか?」

「皆が推戴するというのが条件ですが。」
「この国のいく末はどうされるのか?」
「できればこのレムリアの人々の手で、国のかじ取りをお願いしたい。」

「しかしもう戦だけはしたくない、人々が息をひそめての生活はさせたくない。」
「それがこの国の人々で難しいなら、直接に統治するつもりです。」

「なるほど、巫女様は嘘はつかれないだろう、恥を忍んで協力しよう。」
「では、神聖守護騎士団以下の全軍は撤兵させます。」
「またこちらの内海艦隊も解散させましょう。」

「捕虜解放、艦艇の引き渡しなどの交渉に入ってください、失礼ですがお名前は?」
「カールだ。」

「カールさん、私の護衛も兼ねて付き合ってもらいましょう。」
「ピエールさん、武器を返してあげてください。」
 ピエールさんの感心すること、
「さすがは我らがあるじ、豪胆な……」

「ところでロキさんは大丈夫ですか?」
「命は取り留めましたが……」

「カールさん、待っていてください。」

 私はピエールさんと二人で、ロキさんを見に行きました。
 重傷ですが、今の成長した私なら、すぐに治療出来そうです。
「ロキさん、ご苦労さん、まだまだ働いてもらいますよ。」
 私は治療のイメージを集中します、荒いですが早く治るように……

 ロキさん、かなりわめきましたが、さすがに騎士、耐えました。
 あと二三日で動けるようになりましょう、これでレイラさんにも顔向けできるでしょう。
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