40 / 152
第五十六章 ハレムはどうしてもできる
01 人さらい教会
しおりを挟む国家再建も軌道に乗ってきて、人々も落ち着きを取り戻した頃、シュヴァルツヴァルトの町に、人さらい団が出現しました。
保護者たる男たちが殺され、女がさらわれる。
なぜか奴隷市場には美女が供給される……
「何故も減ったくれもないじゃないですか!」
「この人身売買組織が、売り飛ばしているのでしょう!」
「なぜ捕まえないのですか!」
私は激怒して、フリードリッヒさんに聞きました。
「それが、どうも神聖教が噛んでいるようで……」
「神聖教?私の神聖教ですか?」
瞬間湯沸かし器のように、腹が立ってきました。
「ヴァカリネ陛下、お顔が鬼のようにですが……」
「腹の虫がおさまりません、黒幕はだれか分かっているのですか!」
「見当はついているのですが、なにぶん相手が……」
「だれですか!」
「このレムリアの神聖教団の最高位の神官です。」
ますます腹が立ってきました。
「ふん捕まえて細切れにして、ウミサソリキングの餌にしてくれる!!」
「だから陛下、お顔が恐ろしいですよ、それに確たる証拠がないのです。」
「私が会ってみます、私なら相手の心ぐらい見えます。」
「もしクロなら、それなりに対処します、死の女王をなめてもらっては、困りますから。」
私の笑顔を見て、フリードリッヒさんが震えあがっています。
「だから、その笑顔が恐ろしい……」
まったくしつこい……
海兵隊と宰相さん以下をひきつれて、そのいかがわしい神官、ここでも最高神官は、司教というのだそうですが、その司教にお会いしにいきましょう。
その問題の教会にたどり着き、
「この教会の責任者にお会いしたいのですが。」
と、近くを歩いていた神官さんにいいますと、物凄く怒られました。
気安く、お会いできる方ではないそうです。
彼の云うには、レムリアの神聖教のトップなのが、この教会の司教さんだそうです。
フリードリッヒさんが蒼ざめました。
「ヴァカリネ女王陛下……」
「そんなにあわてないでください、腹立ち紛れに首など刎ねませんよ。」
と、フリードリッヒさんへ小声で言いました。
私はその神官さんに、
「そう云わずに、黒の巫女でもあり、この国の女王でもある、ヴァカリネがお会いしたいのです、伝えてくださいな。」
ありありと馬鹿にした顔が浮かびますが、私の側にいるフリードリッヒ宰相の蒼ざめた顔を見て、事態が理解できたようです。
「しばしお待ちを!」
と、走って司教さんを呼びに行きました。
「ねぇ、フリードリッヒさん、私は『立ちんぼ』になるのですね、ここの司教さんはとても偉いんですね。」
私は微笑みました。
宰相さん以下、随行の方々が非常に怯えています。
このままだと、教会が吹き飛ぶかもしれませんね、死の女王の笑顔は値打ち物ですよ。
教会の司教さんが、転がるようにやってきました。
「足が痛いですね、久しぶりに立ちんぼでした、ぷんぷんです。」
私は笑いながらいいましたが、多分、目は笑っていないと思います。
「黒の巫女様、指導が行き届きませんで、大変失礼しました。」
「夫を亡くした、婦人方の相談に乗っていたものですから。」
でも、この野郎は完全にクロと判明しました。
……でもこのいいわけでは怒れないですね……
何とか煮えくりかえるお腹の虫を、収めなくては……
すこし自分で自分にいい聞かせていると、
「ヴァカリネさま、ヴァカリネさま、少女たちの歓迎に答えてください。」
えっ、どこに……
気が付くと、いつの間にか、十歳ぐらいの少女の一団が並んでいます。
司教さんが、
「この少女たちは親を亡くした子供たちで、この教会の神官見習いです。」
「見習いにならなければ、奴隷市場に並ぶことになります。」
「レムリアの女の定めでもありますが、どうかこの神官見習いに巫女様の祝福を……」
……袖の下?……なめられたものですね……
それにしてもこの少女たち、どうも洗脳されているのでは……
薬?……思考能力をなくす薬……
このレムリアには、そのような薬があるのですか……そして都合の良い記憶を与える……
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる