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第五十七章 碑文騒動
08 望まない真実
しおりを挟む『霧の底の図書館』が出来てからは、この御座所は愛人さん11人と、各地の女官長だけは、出入りができるようにしました。
ここは基本的には、リリータウンと同じ時空間に属しています、皆は『二番街』と呼んでいます。
相変わらず愛人さんたちは賑やかで、そして同数の女官長さんは筋金入りの女傑ぞろい。
エラムが平和になりだすと、宰相さんたちも、この女官長さんたちにはたじたじです。
平和になると、女が強くなるのはどこの世界も同じなのでしょうか。
しかしここはエラムですよ、それがこの有様とは……
どこの世界にも、例外はありますが、なんたって女傑と呼べる方々ですから……
とくにこのごろ、その貫禄はヴィーナスさんを凌駕していますし……
フローラさんにも、女の子が出来ました。
私は名付け親を頼まれ、カローラと名付けました。
ニコルさんの子供も、大きくなりました。
三度目の戦乱から約一年ですが、女官長さんたちは若返ってしまいました。
とんでもない色仕掛けと脅しの結果、三十五歳の上限が三十歳になったのです。
勿論『夫人』さんにも適用されました、その結果、女ざかりの夫人さんたちに、ますます夜に責められます。
凄い数の凄い美人だらけです。
まぁ、愛人さん以外は寿命がありますので……
でも少し寂しいでしょうね。
希望者には子供を作れるようにいたしましょうか、単性生殖、子宮を操作するなど、今の私には簡単な物です……
ここでふと、ため息がでました。
私は命を手球に取っているのです、生と死を司っているようです。
神様じゃあるまいし、冒涜以外の何物でもない……
すこしへこみました。
そんなある日、私は『霧の底の図書館』で文献漁りをしていました。
「巫女様、何をお勉強しているのですか?」
と、ダフネさんがお茶を運んできました。
「実はね、例の碑文の最後に『レムリアの者ども、ここに罪を悔いる』とあったでしょう?これが腑に落ちないのです。」
「なぜです、世界を滅亡の瀬戸際に追い込んだのは、罪を悔いて余りあるのでは?」
「そうなのですが、私はもっとえげつないことが、隠されているような気がするのです。」
「思いませんか、『レムリアの者ども』とあります。」
「もし、世界を瀬戸際に追い込んだのを、悔いるのに、『レムリアの者ども』と、わざわざ記述するものでしょうか?」
「何故でしょう?」
「『レムリアの者ども』以外にも、だれかがいたのではと考えると、その者は、世界が滅亡に追い込まれた時には、何をしていたか。」
「何ら影響されない立場にあったか、影響できない立場にあったか、ではありませんか。」
「すると『レムリアの者ども』は、このだれかに対して罪を悔いるか、来たるべき黒の巫女に対して罪を悔いることになります。」
「この場合、私に対して『レムリアの者ども』は罪を悔いています、その時にいたはずの、だれかは関係ないのです。」
「何故でしょう、つまりどうでもいい相手、奴隷たちだったのではと考えられます。」
「するとわざわざ『レムリアの者ども』と、記述する必要性はないのではありませんか?」
「いわれてみると、そうとも思えますが、でも巫女様の考え過ぎですよ。」
と、一笑されました。
「そうですね、今日一日調べて何もなければ、『無い』ということですね。」
「そうですよ、私は今から『百合の会議』に出ますので、お手伝いできませんが、ヒルダさんにいっておきましょう、アリスさんよりは役に立つでしょう?」
「確かにね。」
私は笑ってしまいました、あまりに的を得ているお言葉ですから。
その日一日、私はヒルダさんと調べて見ましたが、なにも出てきません。
矛盾していますが、なにかホッとしました。
「さあ、夕食ですね、やめましょう、杞憂にすぎないのでしょう。」
「ヒルダさん、先に帰っていてください、私は後始末がありますので。」
と、ヒルダさんを先に帰らせ、後始末をして階段を上がろうとした時、真実は向こうからやってきました。
望まない真実というやつが……
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