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第六十章 黒の巫女ってなんでしょう
05 創造の女神の正体
しおりを挟む創造の女神、いまは薄々は理解できます。
多分アスラ族女性体の、最後のヴァルナ評議会議長を指しているのでしょう。
でも、なぜ最後のヴァルナ評議会議長は、このエラムをそのままにして、私に託したのか、つまり創造の女神様は、私に何をさせたいのかを、知る必要があります。
どう考えても、このエラムでの私に強いられたことは、あることのための、入り口と思えてならないのです。
私に永遠の命を与え、単性生殖のアスラ族女性体のヴァルナ評議会議長に私を据えて、先代の創造の女神は何を考えていたのでしょう。
マレーネさんもさすがに知りません。
計算不能の回答しか、返ってきませんでした。
アスラ族女性体が行き来した、この宇宙が所属する高次元世界。
言葉を変えれば三千世界より、別の世界へ旅立ったと推測できるアスラ族女性体。
マレーネさんがいうには、アスラ族の遺物は、私たちが存在するこの世界には、数々存在するという。
その全ては、私の前にひざまずくらしい。
いまはその遺物は、稼働していないという。
そして、エラムにあったこの人工知能『しもべ』が、その科学技術の頂点にあるという。
私はエラムを、より良き方向へするために、努力してきたつもりです。
ある程度目的は達したと、思っていますが……
それでも時々は、良き方向へ向ける努力をする、必要があるのでしょうね。
なにか上から目線の様な気もしますが。
でも単性生殖のアスラ族女性体……私はヴァルナ評議会議長ですね、でも単性生殖などは……
そもそも私は子孫を残せない身、先代のヴァルナ評議会議長、つまり創造の女神は子孫を残せたのでしょうか?
なぜ私はヴァルナ評議会議長なのでしょう、なぜ……
「マレーネさん、前任のヴァルナ評議会議長には子供がありましたか?」
「ありませんでした、イシス様は一人身でした。」
イシス……
ギリシャ語ですね、たしか古代エジプトのアセトといいましたか、オシリスの妹で妻、たしかホルスの母のはず……
イシスが一人身ということは、イシス信仰、つまりイシス教を想像しますね。
なぜ、ヴァルナ評議会議長の名前が、古代エジプトの女神の名前なのかはさておいて、このエラムの創世記の話しは、地球の一部の神話とつながりがあります。
どうやらアスラ族直系子孫の私が、地球人である以上、信ぴょう性があると考えてもよさそうです。
ならイシス教に、何らかの手がかりがあったとしても、おかしくはありません。
イシス信仰では、イシスは永遠の処女であり、処女のまま神を身ごもったとされ、『天上の聖母』、『星の母』などと呼ばれてもいました。
信者が基本的に女性に限られたことや、信者の女性が、一定期間の純潔を守ることを教義としたため、男性からの評判が悪く衰退していったと、ありましたから、なにか意味深です。
キリスト教のマリア信仰と、重なる感もあるこのイシス信仰に、手がかりがあるかもしれません。
イシス神殿の銘文には、
「わが面布を掲ぐる者は、語るべからざるものを見るべし。」
とあり、これは真理の性格をあらわすものといわれています。
考えなさい、思い出しなさい、ヴィーナスさん!
イシス教の女神官たちは、『イシスの結び目』という物を、神通力の源として用いていた。
どこかでこの様な記述を、インターネットで読んだ記憶があります。
イシスの結び目……
カルトゥーシュカードと呼ばれる、エジプト魔術を主題としたオラクルカードの中に、その様なカードがあったはずです。
安産の意味だったか、子孫だけではなく、財産など全ての事柄に幸せと繁栄を与える印、『繁栄には、何かしらの犠牲が必要だ』と、いう教訓も込められているとあったような……
イシスは星の母……イシスの結び目とは出産と繁栄には犠牲が必要……
イシスは千の名を持つと呼ばれた、イシス=ミネルヴァ女神、イシス=アフロディーテ女神など多くの女神と同一視されていたとか……
アフロディーテ?
前任者はイシス、私はアフロディーテ……
イシスは確か魔術の女神……結び目とは出産、つまり子孫繁栄……
その陰で、男性体が居なくなくなる犠牲を払った……そして繁栄するも……
たしかイシス女神は『来世への再生の守護者』と、みなされたこともあった……
来世への再生への守護者……自身は来世への再生……
そしてこの世のために、再生への守護者を残した……
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