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第六十四章 情事日程その一

10 三姉妹の代価

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「さて帰りますか、三姉妹の代価、ここに置きますよ。」
「所であと一人ぐらい、おまけにつけてくれますか、隣の死にそうな娘でも、もらいましょうか。」
「その娘は……どうぞ……」

 私は隣に行くと、本当に死相がでている娘が寝ていました。
 こんなところにいるとは、思えないほどの美しいであろう娘さんです。

「貴女、私に買われたのよ、運がいいわね、私の物になった以上、病気は直してあげましょう。」
 私は魔力で治療しました、若いのに、心臓の血管が詰まっているのです。

 見る所、冠動脈が八割ほど詰まっています、しかも角膜が痛んでいます。
 この程度ならすぐに治せます、このごろ私は人でなしですから。

「娘は治しましたよ、あとで連れて来てください。」
「買い戻してはいけませんか?」

「では、このお金でもいただきましょう。」
 そういって、三姉妹の代価を取り戻しました、私はケチなのです。

 あっさり三姉妹を買い戻し、ジャイアールのアフロディーテの宮殿へ戻ると、サリーさんが、
「つまらないわ、もっと面白いことが起こるかと思ったのに。」
 私はサリーさんとアテネさんと小雪さんに、三姉妹をアンリエッタさんへ預けるように頼みました。

 ビクトリアさんが、「私は」というので、
「夕食までぶらぶらしていてください、あの奴隷市場の男が、どう出るか楽しみでしょう?」

 その頃、奴隷市場では、
「支配人、いいのですか、面子丸潰れですよ。」

「丸潰れなものか、ありがたいことに、この奴隷市場を認めるとおっしゃったのだ、お墨付きをいただいたのだ。」
「その、だれなのですか、おそろしく綺麗なのに、震えあがるほど怖かったのですが。」

「黒の巫女様さ、この国の支配者、アフロディーテ女王さ。」
「よく殺されなかったと思う、あの睨まれた時、ちびりそうになった。」

「そうはいっても、早くいわれたことをしなくては、我々は消えてなくなるぞ。」
「ところでロビン、よく教えてくれた。」

「ヨハネだ、巫女様は許すと云われた、クレマン様は、巫女様は厳しいが優しいと云われていたが、いまこそその意味が分かった、私は明日アルジャに向かう、長い付き合いだったが暫し別れだ。」

「一つ聞くがあの時、手を挙げていたら、どうなっていたと思う。」
「巫女様の側にいた、あの赤毛の女、あれはビクトリアだ。」

「そしてその横にいた、小さい無口な女、あの女はアテネといい、神聖守護騎士団副団長を打ち負かし、三つの戦乱では死体の山を作り、ビクトリアより強いといわれている。」

「その横にいた、氷の様な美しい女は小雪といい、一人でジャバの親衛隊を瞬時に壊滅させたといわれている。」
「しかも死神使い、死神の噂は裏社会では鳴り響いているはず。」
「しかも巫女様は、この三人が束になってかかっても、瞬殺したと噂されている。」

「お前が出てこなかったら、その男の首は落ちていた、アテネが刀に手を掛けていた。」
「お前も認めるはずだ、巫女様の厳しさと優しさを、実際にお前の娘の目も見えるはずだ。」
「見て来てみろ、あの時よくぞ娘を買い戻したと感心したぞ、巫女様のお覚えは良いはずだ。」

 支配人はすぐに隣の部屋へ行き、しばらくして戻ってきて、「見えるそうだ」と、いった。
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