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第六章 ヒルダの物語 シュードラ島奇譚
09 シュードラ島
しおりを挟むジョンソンとアグネスが、艦隊に分散している海兵隊を、巡視船に乗せる手はずを打ち合わせしていた。
「最後の巡視船に、この旗艦の海兵隊員を乗せます、この旗艦からの巡視船に、残りの巡視船が続行します。」
「打ち合わせはどうするのか?」
「奉仕の魔女団の女のブレスレットは、相互に通信可能です、多少煩雑でしょうが、彼女らを通せば、意志の疎通はできるでしょう。」
ヒルダに気付くとアグネスが、「準備はできました、ご命令を。」と、いった。
そしてヒルダは命令した。
圧縮空気魔法動力エンジンを全開にした、巡視船二十隻は、まず目的の島の手前にある、諸島制圧を目指して、泊地予定の湾へ突入した。
ヴァカリネの海図によれば、その小さな島の名は、シュードラと記載されていた。
通常、エラムにおいて揚陸戦は必ず強襲になる。
魔弾装備のバリスタで、砂浜を一斉に射撃し、まずは厄介なウミサソリキングを、片づけなければならないのだが、今回は違う、時間がないので、電気と呼ばれるのを使う。
アグネスが、
「黒の巫女様のご指示です、この発電機という機械で、電気と呼ばれる力を呼び出すそうです。」
奉仕の魔女団の女たちが、見たことのない機械を、圧縮空気魔法動力エンジンにくっつけている。
その機械から、コードと呼ばれる紐みたいなものが海面に伸びている。
さらに、コードを砂浜に埋め込むためか、バリスタでコードを括り付けた、銛のようなものもとばすようである。
「用意できた?私の合図とともにエンジンを回すように、海に手足をつけていてはだめだと、男たちに注意しておいてね。」
「ではヒルダ様、始めます、危ないですから、船の真ん中に移動してください。」
「発電機始動!」
バチッと音がすると、海面に魚が浮き上がってきた。
砂浜では巨大なウミサソリキングが、幾匹に転がっている。
アグネスが、再び号令をかけた。
砂浜では巨大なウミサソリキングが転がり、海面には魚などが無数に浮かんでいる。
「ジョンソン隊長!今です!」
「心得た!」
海兵隊は手慣れたもののようで、あっという間に資材とともに上陸した。
そしてあっという間に、シュードラ島を制圧した……
が、歴戦の海兵隊員も、ひるむほどの光景がそこにはあった……
上陸した海兵隊員が見たものとは、カンバリズム……人食いだった……
この島の本島であるマグ・メルの王、フォモール族の王に逆らったものは、身一つで運ばれ、この湾の砂浜近くに投げ込まれる……
半数の者はそのままウミサソリキングのごちそうとなり、半数は命からがら地獄の浜を乗り切ったが、しかしこの島は食糧がない……
魚を捕りに行こうとしても、砂浜からは不可能、磯に立とうとしても、海洋のど真ん中、波が荒くさらわれるのである。
生き残った者は、飢えの為に人を放棄した……
男たちは争い、ついにそれなりの社会を作り上げた……
シュードラ家家長を頂点に執事、食糧庫番人、料理長、食客とつづくヒエラルキー……
食客までは支配者階級で男である……
女は生産婦と家畜……
ただ一つの集落を制圧した海兵隊員は身震いした、そして激怒した。
出くわしたのだ……
わが子を産んだ母親が……である……
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