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第二章 ゾーイの物語 造血装置
扁桃体(へんとうたい)にウィルスが
しおりを挟むその策とは、ほんの少量のお薬……
ルシファー・ステーションにあった、フルーツガール産ホモ・サピエンス母乳、その液体の中が、マイクロワープでごく少量入れ替わった……
興奮剤と催淫剤、それにとっておきのお薬……男性体が開発したウィルス……
そして……その効果は絶大だった。
ルシファー・ステーションにいた、多くのヴァンパイア族が……異常な行動を起こしたのだ……
「いったいどうしたのです!」
報告を受けたルシファーは、自らやって来てすぐに原因が分かった……
「薬物中毒……どこかで麻薬が……混入されたようです……これは大変なことになる……」
どのようにして、ナノマシンをごまかしたかは、後日判明したのではあるが、すぐにルシファーは自分の名のついたステーションの、一時閉鎖を命じた。
ルシファー・ステーションにいた、数百人のヴァンパイア族は、ある者は興奮して駅舎を壊しだし、ある者は淫靡な事を恥ずかしげもなく……
テラの生命体の最終進化と自負していた、ヴァンパイア族のあまりの行動であるが、感情を制御できなくなったようだ。
「おかしい……この薬物は、通常の物以外に何かが混入している……」
ルシファーは、狂乱のヴァンパイア族を拘束、その全身をサーチした……そして脳に異常を発見した。
「扁桃体(へんとうたい)にウィルスがいる……感情をコントロールできなくしている……薬物に紛れ込ませていたのね……」
ルシファーはナノマシンに直接命じた。
ウィルスを食い殺せと……
ルシファー・ステーションに存在した、すべてのウィルスは消去されたのだが……狂乱のヴァンパイア族の内、二割ほどは扁桃体に損傷を受けていた……
残りは薬物治療で事なきを得た。
キュベレー総裁と円卓の五長老には、すぐにこの情報が伝わった。
「まぁ少しはかき回せたようだな……」
というと、彼らは『最後の審判戦争』についての、打ち合わせを始めた。
もうこの話は忘れたように……
「さすがに、これだけのヴァンパイア族の、脳内損傷を治すのは手間だわね」
ルシファーはここでミスを犯した……
治療に気を取られて、ルシファー・ステーションの閉鎖だけで、大丈夫と思ってしまったのだ……
そう、閉鎖前に購入して、持ち帰った者が幾人かいたのである。
ゾーイは簡易造血装置を、部屋に忘れてしまうという、失態をしでかしていた。
「引越しに忙しくて、気が回らなかったとは……たしかテーブルにおいていた……仕方ない、帰って作るしかないわね……」
フルーツガール産ホモ・サピエンス母乳は、結構足が速い。
急いでゾーイは、アルデアルの自分のアパートメントに戻ったのである。
そして直後に、ルシファー・ステーションは閉鎖された。
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