25 / 53
第三章 ジャンヌの物語 ヴァラヴォルフ族
ワータイガーはほんと醜い
しおりを挟む「まぁまぁ、アエローさんは今幸せなのですよ、今さら波風など立てないでしょう」
「衣食住が満ちたれば、それで満足しなくてはね……それ以上は身を滅ぼすものですよ」
案外に、見るところを見ているジャンヌです。
こんな会話が交わされたのですが、この後、ちょっとした事件が起こります。
なにか入り口で怒鳴り声がします。
すごい顔で、誰かが店員さんに難癖をつけているのです。
アエローさんが、「少し見てきます、失礼いたします」といってかけていきました。
どうやら、お肉がまずいとか固いとか……ワータイガー、つまり虎憑きが暴れているようです。
「どうしてこれがまずいのかしら?おいしいのにね」
ジャンヌさんのこの一言が聞こえたようで、ワータイガーが激高して走ってきました。
「なんだ!俺は味がわからないというのか!おっっっ、そんなこといわれたら、誰でも頭に来るぞ、お前もいわれれば腹が立つだろうが!」
リュシエンヌさん、内心、そんなことでは誰も頭になど来ないわよ……それにしても醜い顔ね……怒りに狂うと、心が顔に出る物ね……ほんと醜いわ。
でもこの虎憑き、馬鹿じゃないの、相手がだれか知っているのかしら。
「ごめんなさい!許してください、お願いします」
「じゃあ、ここで土下座でもしろ!」
「それはできませんが、許してくださいな」
「お前、どこの者だ!」
「執政官府に勤めていますが……」
「名前は!」
「ドルレアンと申しますが……」
「分かった、後で行くからな!逃げるなよ」
「事を荒立てたくないのですが……」
「お前が悪いのだろうが!おぉ!」
これだけ云うと、ワータイガーは行ってしまいました。
「ジャンヌ様、なんですぐに謝ったのですか?」
「だって怖いじゃないの、私、臆病者だもの」
その割に、ジャンヌはせっせとお肉を食べていました。
ワータイガーは、のこのこ執政官府に怒鳴り込んできました。
「ドルレアンって女をだせ!」
受付の女性の前ですごんでいます。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる