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第四章 糸女の物語 金長騒動
金長の四代目
しおりを挟む「あの事件の真相を、四代目は知らないのでしょうね……」
「多分……知っていたら、こんな要望書は出さないだろう……」
「真相を、表に出すわけにはいかないわね……」
「当然でしょう……ただでさえ仲が悪いヴァンパイア族との関係が、さらに悪くなるわ……へたをすればルシファー様への非難が出るかもしれない……」
「執政に相談しましょうか?」
「無用ね、どちらの執政が知っても、金長はそれこそ消されるわよ……」
「クロウ・ジャンヌ様……ですか……」
「熊鷹さんは知っているのかしら?」
「どうでしょうか……でも……知らないかと思いますね」
「でしょうね……」
「内々で会ってみましょう」
熊鷹は引退して、タナトス・シティ郊外に住んでいた。
アポイトメントをとり、糸女は会いに、熊鷹は待ってくれていた。
「今を時めく保険教育局長が、このしがない老人に何の用かな?」
「お元気そうですね、でも今回の用事は内々で、事を急ぎます、これをご覧ください」
金長神社設立要望書を差し出した糸女、それを受け取った熊鷹……
「これはまずい……折角ないことにしたのに……例の一件が表に出るぞ……」
「表に出なくても、執政に提出されれば……金長一族には、大変な災難が降りかかりますよ……」
「じゃな……へたをすれば……」
「今の若い方々は、ヴァンパイア族の力を知らない、ルシファー様に服属しているから大人しいだけで、もしルシファー様にたいして、不遜な行動がおこれば……」
「瞬殺じゃ……白鷹の愚か者め……すまなんだ、あ奴は知らないのだ……」
「ここは知らせないほうがよろしいかと……この惑星ヴィーンゴールヴには『人』はいない……祭る者がいない……このあたりで説得したほうが、良いかと考えますが?」
「そう云ってくれるのか……助かる……あんたには、迷惑ばかりかけるな……若鷹のおかげで……」
「いいのですよ……それにもう亡くなった方ですから……あのような最後を遂げられたら、恨みも消えます」
「とにかく白鷹は近所に住んでいる……ここに呼ぶので、先ほどの方向で説得してみてくれぬか……いまでは儂の話など、奴は聞く耳を持っておらんのじゃ」
「叔父上、お話とか……」
白鷹がやって来ました。
若い狸で人型となっています。
「お前、金長神社設立要望書なるものを、保険教育局に提出したとか、ここに局長が来られている」
「保険教育局長の三好糸女です、貴方が白鷹さん?」
「そうです、で、どうなのですか!」
「結論からいいますと、難しいということです」
「この惑星ヴィーンゴールヴには『人』はいない、正一位金長大明神を祭る者がいないのです」
「そんな……初代金長は歴史上の人物、それなりに狸に貢献したはず、これでは狸族が黙っていませんよ!」
「保険教育局長は、金長一族をないがしろにされるのですか!」
「ないがしろにはしませんが、特別な扱いもできません、このモンスター地区には、いろいろな種族が肩を寄せて生活しているのです、理解して下さい」
「叔父上!こんな糸引き娘の言い分を聞かせる為に、私を呼んだのですか!不愉快です、私は帰る」
「金長神社設立要望書は執政に提出する、認められねば抗議運動を起こす!金長一族を侮辱するな!」
白鷹は激高して、帰っていきました。
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