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第五章 ラダの物語 ブラッド・カレー

対抗戦の華、棒拾い

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 その鈴姫が籠目(かごめ)高等女学校の一号生徒……
 ラダは対抗心をむき出しにして、アドレナリンを全開、クラスメートが、
「ラダ、どうしたの?顔色が真っ赤よ、熱でもある?」
 と、聞いてきました。
「いえ、大丈夫!何としても勝とうと思っているの!」

 『棒拾い』というのは、ラクビーのボールの代わりに、バトンという丸い棒を取り合う競技で、一番判りやすくいえば、日本の備前の西大寺観音院の『裸祭り』の女性版といえばいいでしょう。
 しかしこれをヴァンパイアとモンスターがやる以上、激しいことになります。

 一号生徒は、『指令』という役目を引き受けます。
 つまり全体の指揮官ですが、大体は陣頭指揮を執ることになります。

 八回生は控室で着替えをしています。
 まず下着が大事、革製のボディスーツをつけています。

 これは補正下着の機能もありますが、『棒拾い』はまず、上着はボロボロになります。
 その為、恥ずかしくないように、『棒倒し』と『棒拾い』に出る女専課程の生徒は、身につけることになっているのです。

 次に戦闘服を着こみます。
 この戦闘服は、内側に薄いながら衝撃吸収材が張り付けられています、一切のボタン、チャックなどはついていません。
 全て紐で止めることになっており、ヴィーンゴールヴの八年制高女の体操服となっています。
 長そで長ズボン、手首と足首をしっかりと留めます。

 長い髪は後ろに束ね、頭にはヘッドギア、靴は履きません、素足と決まっています。
 さらに爪は必ず切る事、相手校の教師がチェックすることになっています。

「皆さん!いきますよ!今年は勝ちましょう!籠目(かごめ)の女をどうしたいの!」
 ラダが檄を飛ばしています。

「叩きのめしてやりましょう!」
「ヴァンパイアの女は強い!」

 ここでラダが、
「殴って殴って、もう一つ、蹴り上げましょう!勝ちますよ!」

「おぉぉぉ!」
 いよいよ『棒拾い』が始まりました。

 長方形のフィールドの中央に盛られた白砂に『棒』が突き刺さっています。

 そして互いに短いほうのラインの外に並びます。
 そのライン中央に小さいバケツが置かれており、白砂が詰められています。
 これがゴール、中央に突き刺さっていた『棒』を、相手のゴールに突き刺せばいいのです。

 時間は無制限、休憩などはありません。
 また首から上の攻撃は反則、すぐにフィールドの外に出ることになります。
 『指令』はその作戦を立てる、多くの級友を率い、勝つために知恵を絞る……

「いい、相手は強敵、特に鈴姫を潰さなければ、勝ちは難しい」
「鈴姫は私が相手をすると読んでいるはず、最初はエヴァとイリナに相手をしてもらいます」
「潰さなくてもいいわ、とにかく邪魔をしておいてね」

「『棒』は私が、何が何でも最初に取って見せる」
「私がとったら、すぐに近くの方に渡すわ」
「そしたらすぐに守備要員を含めて、全員『棒』を持つ者を取り巻いて」
「私はすぐにエヴァと代わって鈴姫の相手をする」

「『棒』を護って、全員一丸となって敵ゴールに向かって」
「敵は外側、私たちは内側、多分私たちの外の者を、引きずりだしてくるでしょうが、出来るだけ抵抗して、時間と距離を稼いでね」
「消耗するけど、敵のゴールに『棒』を突き刺すことは出来ると思うの」

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