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第四章
掃討作戦 2
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「どういう事だ!?」
邸内をざっと見た所、赤いローブの人間は見当たらない。
と言うより人一人として見つからない。
「うーん、空間転移の痕跡があるわねぇ。ほんの半刻前ってところねぇ」
「はぁ?まさかの入れ違い?」
空間転移で馬ごと転移してきたのとほぼ同時刻にこの邸から去ったらしい。まさに行き違いかと思われたその時、エレオノーラが眉をひそめて静かに口を開いた。
「囲まれている」
その言葉に近衛隊の一人が窓から外の様子を伺う。
「30~40はいると思われます。恐らく傭兵かと、邸の出入口を塞ぐように邸を囲っていますが、どうされますか?」
「30~40か…。魔力のある者がどれくらいいるかにもよるが…ギリギリか」
エミリオは落ち着いた様子で外を囲む敵と今いる戦力から頭の中で戦局を展開させる。
「あらあら、エミル。大丈夫よぉ。安心しなさいな」
ベアトリーチェの声にエミリオが弾かれたように顔を上げると、三人の心強い魔女が微笑みを浮かべていた。
「あたしたちがいるって忘れてんの?このスカタン王子」
「残念ながらお前たちの出番はないかもしれないな」
そう言うと三人は極上の笑みを浮かべながら白銀の杖を各々構えた。
「来るぞ!」
次の瞬間、外から爆発音が響いた。邸の扉や窓が破壊され一気に攻め込んできたのだ。
「火炎球!なかなか魔力があるやつがいるみたいじゃない!やったー!」
「何喜んでるんすか!」
「あらぁ、だってその方が楽しめそうじゃないのぉ~。すぐに終わったらつまらないわぁ」
「もうイヤ!この人たち!」
次々に轟く爆発音に結界を張りながら、なぜか目を輝かせる魔女たちに、普段あまり接触がなく慣れないディーノはドン引きしている。
「あんたらに恨みはねーけどくたばりな!!」
キィィーン!と剣のぶつかる音があちこちで響き渡る。傭兵達は先日の赤いローブの集団とは違い、それぞれに腕が立つ様だった。
「お前たち、誰に頼まれた!?」
レオナルドが剣を交えながら問うと、男はニヤリと笑う。
「そのような事、答える訳がないだろう!バカめ!」
男は叫びながらレオナルドに向かって剣を振り上げる。瞬間、レオナルドはひらりと後方に向かって飛び、それを避けるとすぐに身を低くして足払いをし、態勢が崩れたところに畳み掛けるように鳩尾に拳を入れて意識を奪う。
「まあ、後でヴァレリア様に覗いていただけば済む話だ」
「お前のその剣は飾りか!」
得物を手に持ちながら拳で伸していくレオナルドにエミリオはツッコまずにはいられない。
祖父も父も騎士団長を務めていただけあって、物心つく前から鍛えられたレオナルドはなかなかの剣の腕をしている。
第一王子付きの側近でなければ騎士団が入団を熱望していたほどだ。
それに加え、側近として時に護衛も兼ねるレオナルドは剣技だけでなく、体術にも長けている。故に両者を織り交ぜた“何でもあり”の戦闘スタイルなのだ。
「剣を使うと手加減が難しい。息を止めない程度に痛めつけなければならないんだろう?」
しれっとそんな事を言ってのける美貌の側近にエミリオは苦笑をうかべた。
「うぁぁぁあ!もう止めてくれ!ゆ、許してぇぇ!」
「ヒィィ!止めろ止めろ止めろぉぉ!」
複数の傭兵たちの悲鳴が響き渡り、何事かと声のする方向に視線を向けると、何人もの男達が何かに怯えながらのたうち回っていた。
しかし、一様にその視線の先には何もない。
そして、そんな男たちを傍らで微笑みながら眺めるベアトリーチェ。異様な光景だった。
「ベアトリーチェ様!これは?」
「幻術よぉ。一番恐ろしいと思っているモノにずーっと攻められているのよぉ。繰り返し繰り返しねぇ。うふふふ!」
ヴァレリアは自ら雷を纒い、雷鳴と共に閃光の如き速さで飛び交い敵を薙ぎ倒し、エレオノーラが手を振り翳すと無数の氷の矢が敵を貫く。
そして、それを見たベアトリーチェは何やら困った様に考え込む。
「もしかして、私の術って見た目が地味かしらぁ。イマイチ華やかさに欠けるかしらねぇ。もっとこう、光が飛び出たりしたほうがいいかしらぁ?」
何やら斜め上に悩み始めたベアトリーチェに「この人達を敵に回すのはやめよう」とエミリオとレオナルドは頷き合った。
あらかた片付いた所でベアトリーチェが拘束の魔法陣を展開させ、敵を生け捕りにする。話を聞き出す為だ。
「誰に頼まれたか素直に話すのと、無理やり記憶を覗かれるのとどちらが良いか選べ」
エミリオの言葉に傭兵のリーダーと思しき男が「クックックッ」と笑いを噛み締める。
「何がおかしい?」
すると、他の男達も嗤い出す。
「つくづくお目出度い王子様だ!俺達は時間稼ぎさ!今頃あんたの大事な大事な婚約者殿はどうなってるかな!」
「なんだと!?」
男の言葉に一同は青褪める。
「どういうことだ!!まさか、最初から!?」
「とにかく一度戻るわよ!」
三人の魔女は巨大な魔法陣を頭上に創り上げると、捕えた傭兵もろとも一気に王城へと空間転移した。
邸内をざっと見た所、赤いローブの人間は見当たらない。
と言うより人一人として見つからない。
「うーん、空間転移の痕跡があるわねぇ。ほんの半刻前ってところねぇ」
「はぁ?まさかの入れ違い?」
空間転移で馬ごと転移してきたのとほぼ同時刻にこの邸から去ったらしい。まさに行き違いかと思われたその時、エレオノーラが眉をひそめて静かに口を開いた。
「囲まれている」
その言葉に近衛隊の一人が窓から外の様子を伺う。
「30~40はいると思われます。恐らく傭兵かと、邸の出入口を塞ぐように邸を囲っていますが、どうされますか?」
「30~40か…。魔力のある者がどれくらいいるかにもよるが…ギリギリか」
エミリオは落ち着いた様子で外を囲む敵と今いる戦力から頭の中で戦局を展開させる。
「あらあら、エミル。大丈夫よぉ。安心しなさいな」
ベアトリーチェの声にエミリオが弾かれたように顔を上げると、三人の心強い魔女が微笑みを浮かべていた。
「あたしたちがいるって忘れてんの?このスカタン王子」
「残念ながらお前たちの出番はないかもしれないな」
そう言うと三人は極上の笑みを浮かべながら白銀の杖を各々構えた。
「来るぞ!」
次の瞬間、外から爆発音が響いた。邸の扉や窓が破壊され一気に攻め込んできたのだ。
「火炎球!なかなか魔力があるやつがいるみたいじゃない!やったー!」
「何喜んでるんすか!」
「あらぁ、だってその方が楽しめそうじゃないのぉ~。すぐに終わったらつまらないわぁ」
「もうイヤ!この人たち!」
次々に轟く爆発音に結界を張りながら、なぜか目を輝かせる魔女たちに、普段あまり接触がなく慣れないディーノはドン引きしている。
「あんたらに恨みはねーけどくたばりな!!」
キィィーン!と剣のぶつかる音があちこちで響き渡る。傭兵達は先日の赤いローブの集団とは違い、それぞれに腕が立つ様だった。
「お前たち、誰に頼まれた!?」
レオナルドが剣を交えながら問うと、男はニヤリと笑う。
「そのような事、答える訳がないだろう!バカめ!」
男は叫びながらレオナルドに向かって剣を振り上げる。瞬間、レオナルドはひらりと後方に向かって飛び、それを避けるとすぐに身を低くして足払いをし、態勢が崩れたところに畳み掛けるように鳩尾に拳を入れて意識を奪う。
「まあ、後でヴァレリア様に覗いていただけば済む話だ」
「お前のその剣は飾りか!」
得物を手に持ちながら拳で伸していくレオナルドにエミリオはツッコまずにはいられない。
祖父も父も騎士団長を務めていただけあって、物心つく前から鍛えられたレオナルドはなかなかの剣の腕をしている。
第一王子付きの側近でなければ騎士団が入団を熱望していたほどだ。
それに加え、側近として時に護衛も兼ねるレオナルドは剣技だけでなく、体術にも長けている。故に両者を織り交ぜた“何でもあり”の戦闘スタイルなのだ。
「剣を使うと手加減が難しい。息を止めない程度に痛めつけなければならないんだろう?」
しれっとそんな事を言ってのける美貌の側近にエミリオは苦笑をうかべた。
「うぁぁぁあ!もう止めてくれ!ゆ、許してぇぇ!」
「ヒィィ!止めろ止めろ止めろぉぉ!」
複数の傭兵たちの悲鳴が響き渡り、何事かと声のする方向に視線を向けると、何人もの男達が何かに怯えながらのたうち回っていた。
しかし、一様にその視線の先には何もない。
そして、そんな男たちを傍らで微笑みながら眺めるベアトリーチェ。異様な光景だった。
「ベアトリーチェ様!これは?」
「幻術よぉ。一番恐ろしいと思っているモノにずーっと攻められているのよぉ。繰り返し繰り返しねぇ。うふふふ!」
ヴァレリアは自ら雷を纒い、雷鳴と共に閃光の如き速さで飛び交い敵を薙ぎ倒し、エレオノーラが手を振り翳すと無数の氷の矢が敵を貫く。
そして、それを見たベアトリーチェは何やら困った様に考え込む。
「もしかして、私の術って見た目が地味かしらぁ。イマイチ華やかさに欠けるかしらねぇ。もっとこう、光が飛び出たりしたほうがいいかしらぁ?」
何やら斜め上に悩み始めたベアトリーチェに「この人達を敵に回すのはやめよう」とエミリオとレオナルドは頷き合った。
あらかた片付いた所でベアトリーチェが拘束の魔法陣を展開させ、敵を生け捕りにする。話を聞き出す為だ。
「誰に頼まれたか素直に話すのと、無理やり記憶を覗かれるのとどちらが良いか選べ」
エミリオの言葉に傭兵のリーダーと思しき男が「クックックッ」と笑いを噛み締める。
「何がおかしい?」
すると、他の男達も嗤い出す。
「つくづくお目出度い王子様だ!俺達は時間稼ぎさ!今頃あんたの大事な大事な婚約者殿はどうなってるかな!」
「なんだと!?」
男の言葉に一同は青褪める。
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