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第四章
その時の人々
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◇
王城にあるベアトリーチェの邸では、ベアトリーチェが白銀の杖を翳して魔法陣を展開させていた。
ベアトリーチェの瞳と同じ暁色の魔法陣はクルクルと廻ると弾けるように霧散する。
「やっぱりだめねぇ。なんだか靄がかかったみたいにミリィとロビンの位置が上手くつかめないわぁ」
「空間転移を封じる結界を逆手に取ったのか。自分たちも空間転移出来なくなるが、外部から召喚も出来なくなる」
「やってくれるじゃないの。ミリィだけに飽き足らず、ロビンまで巻き込むなんて…。雷で一旦気を失わせて、魔獣の巣穴にブチ込んでやるわ…」
魔女たちが何とかミリアムをいつもの様に空間転移で召喚出来ないか試行錯誤していたが、かなり昔に“魔力を持った犯罪者”向けに自分たちが開発した『空間転移を封じる結界』を逆に利用され、手が出せないでいた。
「せめて居場所がわかれば…。くっミリィ!なぜカパローニ侯爵家の人間ばかり拐わられるんだ!」
レオナルドが頭を抱えながらウロウロしていると、――ドンドンドン!っと扉を強く叩く音がした。レオナルドが扉を開けると血相を変えたディーノが飛び込んで来た。
「ハァハァ…さ、拐われた!」
「落ち着けディーノ?どうした!?」
余程急いで来たのか、息を切らしているディーノの背中を擦りながらレオナルドは理由を尋ねる。
「イヴァン殿下が拐われた!軟禁されていた離宮から連れ出された!クソッ!俺が居ない間に…!!」
「なんだと…!」
ミリアムだけでなく、イヴァンまで拐われていた事が発覚し、ベアトリーチェの邸は混乱を極めた。
◇
「アレッシアお嬢様、カパローニ侯爵家の私兵団からミリアムお嬢様の捜索の許可を求める声が出ています。どうなさいますか?」
王城からの使いからミリアム誘拐の一報を受けたカパローニ侯爵家では、タチアナが倒れ、フェルディナンドは飛び出すように登城した為、アレッシアが指揮をとっていた。
ただ、ミリアムはエミリオとの婚約を既に発表している為、誘拐自体は秘匿しなければならず、大々的に私兵を投ずる訳にはいかないので出来る事は限られている。
「私兵を使って表立って探す事は出来ないわ。ミリアムの名誉に関わるもの。密偵を動かすからすぐに呼んでちょうだい!お父様とお兄様はしばらく王城に詰めるでしょうから、着替えや身の回りの物を持って行く様に手配して!」
テキパキと年笠の家令に指示を出しながらタチアナの寝室を訪れる。
「お母様、お加減はいかがですか?」
横になっていたタチアナは侍女長に支えられゆっくりと身体を起こした。
「シア…ごめんなさいね。すぐにわたくしも動きますからね」
「ご無理なさらないで下さいませ。お母様」
立ち上がろうとしたタチアナを侍女長と共に止める。まだ顔色が良くないので横になっていた方がよさそうだと判断し、侍女長に目配せしながら頷き合う。
「お父様やお兄様の様には難しいですが、わたくしが恙無く指示を出しておきます。お母様は今しばらく安静になさって下さいませ」
「あなたも顔色が悪いわ。少し休みなさいね…」
タチアナはアレッシアの頬を擦り、アレッシアはその手にそっと自分の手を添えた。
「ミリアムが、先日のわたくしの様に不安な想いをしているかと思うと、いても立ってもいられないのです…」
「ああ、シア…」
タチアナはアレッシアをそっと抱き寄せると「ごめんなさいね」と言ってまた寝台に横になった。
侍女長と共にタチアナの部屋から出たアレッシアは少し疲れた様にため息をつく。
「ああ、ミリアム。今頃どんなに辛い想いをしているのかしら…」
「アレッシアお嬢様、一通りの指示は出されております。何かありましたらお声をおかけいたしますので、少し自室でお休みになって下さい。お顔色が悪うございます」
そう言えば知らせを聞いてから休みなく動いていて、昼食や夕食どころか水分さえも取っていない。長くなるかもしれない事を考えると、侍女長の言う通り少し休んだ方が良いかとアレッシアは考え、侍女長に告げて自室へ向かった。
自室の寝台に少し横になる。ミリアムの誘拐にあの男は関わっているのだろうか。だとしたら自分はどうしたら良いのか、絶対に赦せない気持ちと先日感じたあの男への慕情がない混ぜとなり、アレッシアの心を締め付けた。
――カタン
小さな物音にアレッシアは弾かれた様に起き上がる。
バルコニーのある窓をの方を見ると、そこには今、自身の頭の中を混乱に陥れている張本人が立っていた。
「…ジル」
男の名前を呟くと、アレッシアは窓を開けた。
「やあ、僕の精霊姫…」
「よくここに来れたわね」
ジルは寂しそうに眉をさげると、「そのままでいいから聞いて欲しい」と話始めた。
王城にあるベアトリーチェの邸では、ベアトリーチェが白銀の杖を翳して魔法陣を展開させていた。
ベアトリーチェの瞳と同じ暁色の魔法陣はクルクルと廻ると弾けるように霧散する。
「やっぱりだめねぇ。なんだか靄がかかったみたいにミリィとロビンの位置が上手くつかめないわぁ」
「空間転移を封じる結界を逆手に取ったのか。自分たちも空間転移出来なくなるが、外部から召喚も出来なくなる」
「やってくれるじゃないの。ミリィだけに飽き足らず、ロビンまで巻き込むなんて…。雷で一旦気を失わせて、魔獣の巣穴にブチ込んでやるわ…」
魔女たちが何とかミリアムをいつもの様に空間転移で召喚出来ないか試行錯誤していたが、かなり昔に“魔力を持った犯罪者”向けに自分たちが開発した『空間転移を封じる結界』を逆に利用され、手が出せないでいた。
「せめて居場所がわかれば…。くっミリィ!なぜカパローニ侯爵家の人間ばかり拐わられるんだ!」
レオナルドが頭を抱えながらウロウロしていると、――ドンドンドン!っと扉を強く叩く音がした。レオナルドが扉を開けると血相を変えたディーノが飛び込んで来た。
「ハァハァ…さ、拐われた!」
「落ち着けディーノ?どうした!?」
余程急いで来たのか、息を切らしているディーノの背中を擦りながらレオナルドは理由を尋ねる。
「イヴァン殿下が拐われた!軟禁されていた離宮から連れ出された!クソッ!俺が居ない間に…!!」
「なんだと…!」
ミリアムだけでなく、イヴァンまで拐われていた事が発覚し、ベアトリーチェの邸は混乱を極めた。
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「アレッシアお嬢様、カパローニ侯爵家の私兵団からミリアムお嬢様の捜索の許可を求める声が出ています。どうなさいますか?」
王城からの使いからミリアム誘拐の一報を受けたカパローニ侯爵家では、タチアナが倒れ、フェルディナンドは飛び出すように登城した為、アレッシアが指揮をとっていた。
ただ、ミリアムはエミリオとの婚約を既に発表している為、誘拐自体は秘匿しなければならず、大々的に私兵を投ずる訳にはいかないので出来る事は限られている。
「私兵を使って表立って探す事は出来ないわ。ミリアムの名誉に関わるもの。密偵を動かすからすぐに呼んでちょうだい!お父様とお兄様はしばらく王城に詰めるでしょうから、着替えや身の回りの物を持って行く様に手配して!」
テキパキと年笠の家令に指示を出しながらタチアナの寝室を訪れる。
「お母様、お加減はいかがですか?」
横になっていたタチアナは侍女長に支えられゆっくりと身体を起こした。
「シア…ごめんなさいね。すぐにわたくしも動きますからね」
「ご無理なさらないで下さいませ。お母様」
立ち上がろうとしたタチアナを侍女長と共に止める。まだ顔色が良くないので横になっていた方がよさそうだと判断し、侍女長に目配せしながら頷き合う。
「お父様やお兄様の様には難しいですが、わたくしが恙無く指示を出しておきます。お母様は今しばらく安静になさって下さいませ」
「あなたも顔色が悪いわ。少し休みなさいね…」
タチアナはアレッシアの頬を擦り、アレッシアはその手にそっと自分の手を添えた。
「ミリアムが、先日のわたくしの様に不安な想いをしているかと思うと、いても立ってもいられないのです…」
「ああ、シア…」
タチアナはアレッシアをそっと抱き寄せると「ごめんなさいね」と言ってまた寝台に横になった。
侍女長と共にタチアナの部屋から出たアレッシアは少し疲れた様にため息をつく。
「ああ、ミリアム。今頃どんなに辛い想いをしているのかしら…」
「アレッシアお嬢様、一通りの指示は出されております。何かありましたらお声をおかけいたしますので、少し自室でお休みになって下さい。お顔色が悪うございます」
そう言えば知らせを聞いてから休みなく動いていて、昼食や夕食どころか水分さえも取っていない。長くなるかもしれない事を考えると、侍女長の言う通り少し休んだ方が良いかとアレッシアは考え、侍女長に告げて自室へ向かった。
自室の寝台に少し横になる。ミリアムの誘拐にあの男は関わっているのだろうか。だとしたら自分はどうしたら良いのか、絶対に赦せない気持ちと先日感じたあの男への慕情がない混ぜとなり、アレッシアの心を締め付けた。
――カタン
小さな物音にアレッシアは弾かれた様に起き上がる。
バルコニーのある窓をの方を見ると、そこには今、自身の頭の中を混乱に陥れている張本人が立っていた。
「…ジル」
男の名前を呟くと、アレッシアは窓を開けた。
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