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最終章
水入らずのズコットケーキ
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◇
「あのコートにはやっぱりこちらの帽子の方が合うかしら?どう思われますか?お母様」
「そうねぇ、いいんじゃないかしら」
コンフィーネ第3地区にある、主に子供用の服飾品を扱っている商店の貴賓室にて、子供用の帽子を手に、ミリアムとタチアナは買い物を楽しんでいた。
常ならば何か物を買う時は仕立て屋や商人を呼び、邸で全て済ませる為、ミリアムはこうして店まで足を運んで買い物をすると言う経験が少ない。そんな事もあって、少し興奮気味にあれこれと商品を選んでいる。
「もう夏も終わりますから、暖かい服や小物も必要ですわね。ふふふ、お店でお買い物するのって楽しいですわね」
「そうね。たまにはこうして足を運ぶのもいいものね」
ニコニコと買い物を楽しむ愛娘に目を細めて、優しく見守る女神の化身に、商店の店員達がまるで美しい絵画を見ているかのように「ほぅ」とため息を零す。
普段着を数点に冬用のコート、帽子は普段使いのものと外出用のものなどを数点、その他ソックスやブーツ、肌着に至るまで、ロビンの生活に必要になりそうな物を注文し、後ほど本邸に届けてもらう。
一通りの買い物が終わると、ミリアムとタチアナは休憩を取るために近くのカフェに移動した。
カフェの中庭に面した特別室に通されると、薫りの良い紅茶と、薄く切られた様々な果物でたっぷりと飾られたズコットケーキが運ばれてきた。
「まぁ!」と目を輝かせるミリアムの目の前で切り分けられたそれの中には、ナッツとドライフルーツが混ぜ込まれたクリームがぎっしり詰められていた。
「エミリオ殿下と焼き菓子店に行くと聞いてから、ずっと私もミリィとお店でお菓子をいただきたいと思っていたのよ」
タチアナがパチンッとミリアムに向かってウィンクすると、切り分けていた給仕が顔を赤く染め上げ、壁際に控えていたメイドや従僕からは「はぁぁ…」と小さなため息が聞こえてきた。
ミリアムはそっとズコットケーキにフォークを入れ、小さく切り分けたそれを口に運ぶ。
フルーツの自然な甘みの後に、ふわふわのスポンジ、ナッツとドライフルーツのザグザグ感、口の中でとろけるクリーム。
思わずミリアムはフォークを持っていない方の手を頬にあてて、「んー」と顔を綻ばせる。
「とっても美味しいですわ」
「うふふ。それは良かった」
しばしお茶とケーキに舌鼓を打つと、タチアナはにっこり微笑みながらミリアムを見つめる。
「いつの間にかこんなに大きくなっていたのねぇ。もう一年後にはお嫁に行ってしまうなんて」
「まだあと一年ありますわ。お母様」
「一年なんてあっという間よ。寂しくなるわ。…ねぇ、ミリィは殿下のどんな所が好きなの?」
「え?」
突然のタチアナの問いかけにミリアムは頬を染めると、慌ててお茶を飲む。
「いいじゃないの、教えてちょうだい?うちの子たちは全然そんな話しないんだもの。つまらないわ」
「その…殿下のお優しいところももちろんお慕いしていますし、真面目で誠実なところもとてもお強いところも素敵です」
ミリアムは恥ずかしがりながらも次々とエミリオの好きなところをあげていく。そんな娘の言葉をタチアナは「まあ、そうなの」と微笑ましく聞いていた。
「いろいろとございますが、一番は人の痛みをきちんとお分かりになっていて、それでも上に立つ者として為すべきことを見失わないところを本当に尊敬しております。あの方こそ、国を背負っていくに相応しい方です。だからわたくしは、そんなあの方を支えていきたいのですわ」
決意を宿したそのヘーゼルの瞳に、タチアナは目頭が熱くなるのを感じていた。
「あのコートにはやっぱりこちらの帽子の方が合うかしら?どう思われますか?お母様」
「そうねぇ、いいんじゃないかしら」
コンフィーネ第3地区にある、主に子供用の服飾品を扱っている商店の貴賓室にて、子供用の帽子を手に、ミリアムとタチアナは買い物を楽しんでいた。
常ならば何か物を買う時は仕立て屋や商人を呼び、邸で全て済ませる為、ミリアムはこうして店まで足を運んで買い物をすると言う経験が少ない。そんな事もあって、少し興奮気味にあれこれと商品を選んでいる。
「もう夏も終わりますから、暖かい服や小物も必要ですわね。ふふふ、お店でお買い物するのって楽しいですわね」
「そうね。たまにはこうして足を運ぶのもいいものね」
ニコニコと買い物を楽しむ愛娘に目を細めて、優しく見守る女神の化身に、商店の店員達がまるで美しい絵画を見ているかのように「ほぅ」とため息を零す。
普段着を数点に冬用のコート、帽子は普段使いのものと外出用のものなどを数点、その他ソックスやブーツ、肌着に至るまで、ロビンの生活に必要になりそうな物を注文し、後ほど本邸に届けてもらう。
一通りの買い物が終わると、ミリアムとタチアナは休憩を取るために近くのカフェに移動した。
カフェの中庭に面した特別室に通されると、薫りの良い紅茶と、薄く切られた様々な果物でたっぷりと飾られたズコットケーキが運ばれてきた。
「まぁ!」と目を輝かせるミリアムの目の前で切り分けられたそれの中には、ナッツとドライフルーツが混ぜ込まれたクリームがぎっしり詰められていた。
「エミリオ殿下と焼き菓子店に行くと聞いてから、ずっと私もミリィとお店でお菓子をいただきたいと思っていたのよ」
タチアナがパチンッとミリアムに向かってウィンクすると、切り分けていた給仕が顔を赤く染め上げ、壁際に控えていたメイドや従僕からは「はぁぁ…」と小さなため息が聞こえてきた。
ミリアムはそっとズコットケーキにフォークを入れ、小さく切り分けたそれを口に運ぶ。
フルーツの自然な甘みの後に、ふわふわのスポンジ、ナッツとドライフルーツのザグザグ感、口の中でとろけるクリーム。
思わずミリアムはフォークを持っていない方の手を頬にあてて、「んー」と顔を綻ばせる。
「とっても美味しいですわ」
「うふふ。それは良かった」
しばしお茶とケーキに舌鼓を打つと、タチアナはにっこり微笑みながらミリアムを見つめる。
「いつの間にかこんなに大きくなっていたのねぇ。もう一年後にはお嫁に行ってしまうなんて」
「まだあと一年ありますわ。お母様」
「一年なんてあっという間よ。寂しくなるわ。…ねぇ、ミリィは殿下のどんな所が好きなの?」
「え?」
突然のタチアナの問いかけにミリアムは頬を染めると、慌ててお茶を飲む。
「いいじゃないの、教えてちょうだい?うちの子たちは全然そんな話しないんだもの。つまらないわ」
「その…殿下のお優しいところももちろんお慕いしていますし、真面目で誠実なところもとてもお強いところも素敵です」
ミリアムは恥ずかしがりながらも次々とエミリオの好きなところをあげていく。そんな娘の言葉をタチアナは「まあ、そうなの」と微笑ましく聞いていた。
「いろいろとございますが、一番は人の痛みをきちんとお分かりになっていて、それでも上に立つ者として為すべきことを見失わないところを本当に尊敬しております。あの方こそ、国を背負っていくに相応しい方です。だからわたくしは、そんなあの方を支えていきたいのですわ」
決意を宿したそのヘーゼルの瞳に、タチアナは目頭が熱くなるのを感じていた。
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