虹のふもとを探しにキミと。

れい

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虹のふもとを探しにキミと。

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「虹のふもとには宝物が埋まってるんだって」

ほら見て、とキミは綺麗な絵本の挿絵を指さして笑った。まだ小学生だったから、外国語で書かれた文字は読めなかったけど、キミと並んでその綺麗な絵を一枚一枚、捲っていくのは楽しかった。

梅雨だったから、雨続きなのは当たり前。私たちは湿度の高い窓際で、雨音を聞きながら二人で遊んでいた。

私たちは毎日一緒にいた。当たり前のその日々は、なんとなく、このままずーっと、大人になっても続くんだろうなぁと、私は思った。

窓の向こうのラジオノイズみたいな雨音は少しずつ遠ざかっていく。
不意に、キミは顔を上げて、あれ、と嬉しそうに声を大きくした。

「雨、止んでるね。見て、あそこ。虹が出てる」

私がそうだね、という間もなく、キミは私の手を引いて、外に連れ出した。

「気をつけて」

道の端に出来た、彼が飛び越えた水たまりを、私も飛び越える。なんだか障害物競走みたい。振り返った水たまりは、黒いアスファルトの上で、白く反射して、きらきら。
淡い桃色から紫に、そして青に水色に流れる、紫陽花の横を通り抜けて。
人のいない商店街の屋根から落ちてくる攻撃を、軽よかに避けて。
橋の柵の合間に並んだ、垂れそうな硝子玉に触れて。
途中で出会ったカエルの親子から、叫びながら逃げ惑って。
去年の夏、二人で砂のお城を作って遊んだ、浜辺に来ていた。
いつもより強めのさざ波を聴きながら灰色に固まった砂浜の上を進んで、登ってはいけないと言われていた、堤防のテトラポットに手を引かれながらよじ登る。

見上げた虹は、海の途中で消えていた。
虹のふもとはなかった。

「宝物、なかったね」

「そうだね」

キミは虹のほうを見たまま、言った。
でも、と私を振り返って続ける。

「たのしいね」

「うん、たのしい」

キミの隣はいつだって楽しい。
その言葉を飲み込んだ私の隣で、キミは立ち上がって、虹を指さした。

「大人になって、海賊になったら、あのふもとまで連れてってやるよ!」

あの時私は、なんて返したんだろう。
幼稚な夢だなぁと、今なら返してしまいそうだ。

でもね、そんな幼稚なキミがさ、たぶん私は好きだったんだろうな。

大人になった今でも、虹を見ると、振り返って笑ったキミの顔を思い出すよ。
あれがたぶん、私の初恋。
今もあの雨上がりの虹のふもとに埋まってる。
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