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19.ええ、本当に良かったわ
しおりを挟むおばあちゃんが母を産んだのは23歳の時。
お母さんが私を産んだのは25歳の時。
私は今年で30歳だけど、子供はいない。
結婚して6年。セックスレスになって4年。デートなんてもういつからしていないのか覚えていない。
会話は朝食と夕食のときのみ。連絡は「今から帰ります」「今日は遅くなります」のみ。
夫婦というよりは、もはや、ルームシェアをしている男女。いや、それよりも酷いのかもしれない。
離婚は何度も考えた。でも、離婚届に名前を書こうとすると手が震える。
ちゃんと話し合ったら、わかり合えるかもしれない。あの頃みたいに戻って、子供も授かるかもしれない。
“もしかしたら”の小さな希望が、離婚届を書くことを拒否している。
今日もダメだった。でも、今日は言おう。
離婚届にサインをするのがダメでも、彼に話を持ちかけることはできるかもしれない。自分の気持ちをちゃんと伝えられるかもしれない。
「ねえ、あなた。」
食事中に話しかけた。私はチラッと夫のことを見るが、夫は「なに?」や「どうしたの?」の返事もしなければ、私を見ることもない。
「私ね、子供がほしいの。だから、今日とかどうかな…急だったなら、明日とかでも全然いいよ!」
自信なさげに誘いをかけるも、夫の機嫌が掴めなくて焦り、早口になってしまう。
「忙しいから無理。俺、仕事で疲れてるんだよね、毎日。」
夫は私の顔を見ず答える。静かな空間に、夫の咀嚼音と箸が皿にカツカツと当たる音がする。
「ずっと忙しいんだね…」
「当たり前だろ。忙しくない会社なんかあるかよ。」
夫は私の顔を見ない。でも、口調でわかる。ちょっと不機嫌になってるわ。
「それにさ、俺は子供とかいらないと思うんだよね。お前と2人で暮らしていけたらそれで十分幸せなんだよね。今のままでいいよずっと。」
「ね?」と夫は私に同調を求めた。やっと私の顔を見た夫は、まるで悪魔に見えた。
この状態が幸せってどういうことなんだろう。今のままをずっと…拷問かな。
私は、子供と夫というのが理想の家庭だった。それが当たり前な家族の形だと思っていたから。
なのに、彼はそれを望んでない。むしろ、今の最悪の夫婦が彼にとっては理想らしい。
私はついクスッと笑ってしまった。
「なになに?どうしたの、急に笑うなんて。」
「最近どうしても手が進まない書類があってね。でも、今ならそれも書ける気がするの。」
「そーなんだ。よかったね。」
「ええ、本当に良かったわ。」
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