愛？愛！愛。

22.目の前にある炭酸は元カレ

　目の前にある炭酸は元カレ。

　大好きだったはずのソレを今まで触れずに放置していた。面と向き合うことが怖くて逃げていた。

　本当は無理に開ける必要はない。どこかに閉まって、まるで最初からなかったようにすることもできた。

　人並み以下の二人だったかもしれない。それでも、たしかに側に互いがいることを望んでいた。
　恋愛漫画のような彩りはなく透明なのに、ソレにはシュワシュワとたくさんの思い出が詰まっていた。
　ラブソングのような甘さもなく無味なのに、ソレにはタップリと感情が詰まっていた。


　キャップをゆるめてみた。すると、プシューという音とともに二人の思い出が勢いよく逃げていった。残った思い出もシュワシュワという音とともにゆっくり消えていった。

　一口飲んでみた。すると、シュワっと強烈な感情が喉を通った。嫌い憎い殺してやりたい。そんな感情が私の喉をチクチクと刺激した。
　そして、好きだった幸せになりたかった。そんな悲しい本音が私の身体に静かに染みていった。


　最後に、ラベルを剥がした。何もなくなったソレはもう私とは関係を持たないナニカになったのだ。

　「さよなら。」

　私は手を離した。